藻類金属回収のガルデリア、新日本電工らから4億円を調達

都内で開かれた報道関係者向けの勉強会に参加した谷本氏
金属吸着能力を持つ藻類の技術開発を進めるガルデリア(東京都中央区、谷本肇CEO)は28日、新日本電工や荒川化学工業から、J-KISS(新株予約権型投資契約)を活用して総額4億円の資金調達を完了したと発表した。
ガルデリアは、温泉に生息する微細藻類「Galdieria(ガルディエリア)」の研究開発を通じて、サーキュラーエコノミーの実現を図るベンチャー企業。他の微細藻類と比べて圧倒的に効率の良い培養能力、極限環境下で身につけた貴金属吸着能力を活用し、都市鉱山での安全かつ高効率な貴金属リサイクルなどの確立を目指している。
新日本電工の青木泰社長は、「(当社の)アクアソリューション事業では、排水の浄化と有価金属の回収で培ったノウハウや知見を有しており、環境にやさしく貴金属吸着能力持つGaldieriaとのシナジーを活かして、貴金属リサイクルにおける新しいプロセスを展開します」とコメントしており、両者の相乗効果が期待される。
「都市鉱山」という言葉が至る所で聞かれるようになったが、現状で有効活用されているのはほんの一部であり、技術的な難しさから多くの有価金属がリサイクルされないまま廃棄されている。ガルディエリア由来の吸着剤は、特に金、パラジウムのリサイクルにおいて、これまで破棄されていた薄い溶液(一般的には10ppm未満)からも対象金属を回収することが可能で、貴金属リサイクル量の増加とCO2排出量削減が見込める。
先日、都内で開かれた報道関係者向けの勉強会に参加した谷本氏は、貴金属リサイクル業者のほか、めっき業者との連携にも言及。「めっき業者で使用する洗浄液の中には薄くはあるが、大量の金属を含んでいるケースがあり、我々の技術をBtoBで提供することで、リサイクル率を高めていきたい」と意気込みを示した。
また、同社は不法労働や健康被害などの課題を抱える金採掘プロセスにおいて、有害物質を全く使わない手法を開発し、日本国内で特許を取得しており、様々な業界・企業が関心を寄せている。「慢性水銀中毒患者は世界で300万から600万人ぐらいいるとされている。しかし、金の採掘・回収現場では今日の食事も得られないような人々を雇用しているケースもあり、なかなか解決できないのが現状。10年単位の時間のかかる試みにはなるが、我々の開発したプロセスを大規模で展開するための準備を進めている」(谷本氏)
なお、同社は三井金属竹原製煉所内で排出されるボイラー排ガスを利用した微細藻類ガルディエリアの光合成培養に成功したと公表したばかり。排ガスには大気濃度の約200倍のCO₂が含まれており、これにより、CO₂濃度、酸性度が高まった溶液での光合成培養を、大気下よりも高効率で達成したという。同社の今後の動向が気になるところだ。
(IRuniverse K.Kuribara)
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