第5回「ヤード環境対策検討会」――基本的方向性は「有害性の観点踏まえた規制」報告書取り纏め
環境省のヤード環境対策検討会は17日、第5回検討会を開き、報告書(案)を大筋で了承した。「有害性の観点を踏まえた規制のあり方」などを基本的な方向性として打ち出している。24年12月に設置された中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会に舞台を移して今後検討が進むことになるが、報告書で有害・不正輸出対策として、解体基準などを定めて処理環境を整備しながら、国内解体を優先する制度作りを検討すべきとした、「廃鉛蓄電池」の最終的な取り扱いが大きな焦点になってきそう。
報告書は冒頭で、2017年に廃棄物処理法の改正でその枠組みに取り入れた家電・小型家電リサイクル法対象の32品目(大型家電4品目、小型家電28品目)を規律付けるいまの「有害使用済機器保管等届出制度」に触れながら、一部地域では対象外の金属スクラップの不適正な保管や処理で騒音や悪臭、公共用水域や土壌の汚染、火災の発生などが報告されている現実を指摘。併せて、国家戦略にも位置づけられた循環経済の視点で、国内で資源を循環させ国際的な産業競争力や経済安全保障の強化につなげる大切さも強調、そのために必要となり得る環境対策を取り纏めたとしている。以下の4点がそれである。
1.の「有害性の観点を踏まえた規制のあり方について」は、「生活環境保全上の観点から、廃鉛蓄電池等の有害性の高い物品に限らず、有害使用済機器、金属スクラップや廃プラスチック、これら金属スクラップ等の混合物である雑品スクラップなどのそのもの自体に有害性が低いと考えられる物品も含めて、実効性を担保できる制度を検討すべきである」と指摘している。その上で、ヤード問題は地域によって偏在する特徴を有しており、「一律の規制制度を導入する際には、既に条例で独自の規制制度を導入している自治体の取組にも配慮することが望ましく、一律の規制制度の導入に当たって仮に届出制を採用する場合であっても、例えば、「計画変更命令付き届出制」を検討することや流通フローを把握するため、帳簿の義務付けを含めた搬入・搬出管理の指導が徹底できる制度等、ヤード問題の実情にあった実効性の確保の観点で制度的措置を検討すべきである」ともしている。
2.の「規制対象物品のあり方について」は次の通り言及している。「有価物に該当する金属スクラップや廃プラスチック、これらの混合物を含む雑品スクラップ等は、そのもの自体の有害性は低いものの、保管・分別される過程で環境負荷が生じる可能性がある。このような再生資源物である規制対象物品の個別指定は困難であることから、規制範囲から漏れが生じないように、搬入される個々の機器や物品の種類に限定せず、混在して保管されている様態を含め、包括的に規制できる仕組みを検討すべき」として、「包括的規制」の考え方を打ち出している。また、「地域の実情や特有の課題に応じて柔軟に対応できる規制のあり方を検討すべき」ともした。
3.の「 有害性の高い物品(廃鉛蓄電池等)の解体を行うための規制について」を巡っては、不適正ヤードで廃棄物に該当しないとされた廃鉛蓄電池が集荷、解体処理され、解体処理に伴う鉛、希硫酸等の流出で周辺への環境問題が生じているとされる状況を踏まえて、「廃鉛蓄電池等の有害性の高い物品は、ヤードにおいては解体を行わず選り分けを行うだけにとどめ、生活環境保全上配慮がなされた事業場でのみ解体や処分をさせるような仕組みを検討すべきである」と、踏み込んでいる。
また、廃リチウムイオン電池の失活処理を行った際の環境への悪影響、さらに、廃リチウムイオン電池を含む機器によるヤードでの火災懸念も課題として抽出されたという。
4.の「不適正輸出を防ぐ仕組みについて」を巡っても、事業者団体の意見を引用する形で問題点を詳述している。「廃鉛蓄電池から取り出された巣鉛等を、バーゼル法に基づく輸出手続なしに不適正に輸出しようとした事例が確認されていることから、不適正ヤードが不適正輸出の温床になっている可能性がある」とした。
その上で、「遵法意識の乏しい事業者の手によって不適正に解体され、さらに得られた鉛原料が違法輸出される状況に事業者団体は深刻な懸念を示している。加えて、現在のバーゼル法や外為法では予備罪や未遂罪を問うことができないため、廃鉛蓄電池や巣鉛の違法輸出を防止する上での実効性のある(廃棄物処理法等での)法的措置が必要であるとの意見もあった」と説明。
対策として、「国内で生じた有害性の高い物品(廃鉛蓄電池等)については、環境対策が確実に行われる国内での処理を優先させるとともに、有害性の高い物品の不適正輸出を未然に防止できるように、廃棄物の輸出に関する手続に準じた実効性のある制度を検討すべき」とも提言している。
報告書はその最後で、「不適正なヤードは金属盗や不法就労、脱税、労働安全衛生関係等の多岐に渡る問題をはらんでいるため、関係省庁と情報共有を密に行い、連携を図っていかなければならない」と指摘。併せて「環境保全の観点から国内の不適正なヤード事業者に対して是正を求めていくように規制を強化することは当然のこととして、適切なヤード事業者や廃棄物処理業者、精練事業者が資源循環の推進にも貢献していることに十分配慮し、公平な競争環境のもとで環境保全対策を講じているヤードが資源循環に貢献できるよう時代の変化に即した対策を講じていく必要がある」とも付言している。
報告書のとりまとめに当たって実施されたヤード実態調査(対象期間令和5年10月1日∼令和6年9月30日、対象自治体:47都道府県、82政令市)によると、再生資源物の保管等事業場数は全国に3,260件あり、地域別では、そのうち関東地方に2,019件が集中していたという。生活環境保全上の支障が発生している事例は165事業所で計211件あるという。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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