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マシンガンズ・滝沢秀一氏 講演「ゴミから見える社会と生き方」

 

 2025年4月8日に都内で行われた、お笑い芸人でありながらゴミ清掃員としても活躍するマシンガンズ・滝沢秀一氏の講演を拝聴した。本講演は、単なる環境問題や清掃業の話にとどまらず、社会、人間、そして自身の生き方を深く見つめ直す内容に満ちていた。


 滝沢氏は、芸人として28年のキャリアを持ち、マシンガンズはM-1グランプリにも出場経験を持つ実力派だが、13年前からゴミ清掃員として働き始めた。きっかけは、芸人としての不安定な収入と、当時妊娠中だった奥様を支えるための決断だった。35歳以上の求人が少ない中でようやく見つけた仕事がゴミ清掃員だったという。その当初は「お金さえ入れば」との思いで始めたというが、現場に立つ中で次第に意識が変わっていった。


 清掃員の仕事は過酷だ。炎天下や極寒の中、分別されていないゴミに悩まされる日々。住民の中には無理解なクレーマーも多く、子育てとの両立も困難だった。しかし滝沢氏は「目の前の仕事に一生懸命取り組むしかない」と覚悟を決め、日本一のゴミ清掃員を目指すようになる。そして「ゴミを知ることで社会が見える」ことに気づく。


 彼の語りの中で印象的だったのは、「ゴミには個性がある」「ゴミは嘘をつかない」という言葉だ。缶を丁寧に洗って捨てる人がいれば、未分別のまま出す人もいる。ゴミの中にはその人の性格や生活が表れる。高級住宅街のゴミは量も少なく、無駄が少ない。一方、一般住宅では衝動買いや福袋の余り物、使い捨ての多さが目立ち、スーパーの特売日から6日経った同じ日一斉に発泡酒の缶が大量に出されるなど、習慣化された消費行動も浮かび上がる。

 
 こうした観察を通じて彼は「お金持ちのゴミを真似るべきだ」と説く。無駄な買い物をやめ、価値あるものを長く使う姿勢が、環境にも財布にも優しい。値札付きのまま捨てられる服、賞味期限切れの食品など、「もったいない」を生み出す原因は、知識や関心の欠如、そして“めんどくさい”という気持ちにあるという。

 
 彼はSNSでゴミに関する情報発信もしており、有吉弘行のリツイートをきっかけにフォロワーは5千人から28万人へと急増。テレビやYouTube、イベント登壇など、多方面で啓発活動を展開している。「クレームを減らすには、問題を追う側になることが重要」と語り、すべての人に挨拶するなど自らの行動を変えていったエピソードは、働き方のヒントにもなる。


 また、ゴミ集積場と治安、生活習慣との関係も示唆深い。奈良県生駒市では、集積場にテーブルと椅子を設置したことで分別率が向上。人の目があることでゴミの出し方が変わる という。さらに、「ゴミを見れば町の格が分かる」「ゴミの捨て方が良くない会社は6年以内に潰れる」といった話もあり、清掃活動が社会全体の健全さを測る“バロメーター”であることを痛感させられた。


 講演の締めくくりには「3R(リデュース・リユース・リサイクル)に“リスペクト”を加えることで、ゴミ問題は大きく前進する」と語られた。物に対する敬意、使う人・作る人への思いやりこそが、本当の持続可能な社会への鍵なのだ。


 滝沢氏の語りはユーモアを交えながらも深く、心に残る内容だった。「ゴミ」という一見汚くて避けたいものの中にこそ、人間の本質や社会の課題が詰まっている。彼の姿勢は、「どんな仕事も、自分の心がけ次第で意味あるものに変えられる」ことを示していた。

 

 私自身も、日常生活の中で“ゴミ”とどう向き合うかを改めて考え直す良い機会となったように思う。

 

 

* * *
西田 純(再資源化ビジネスコンサルタント)
国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、コンサルタントとして独立。SDGsやサーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している。武蔵野大学環境大学院非常勤講師。サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会幹事、循環経済協会会員

 

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