工作機械工業会受注速報 25年3月11.4%増1511億円、24年度3.9%増1兆5097億円
3月受注1511億円(同月比11.4%増)、6カ月連続同月比増
4/9の15時に日本工作機械工業会の2025年3月受注速報が開示された。3月受注は1511.04億円(同月比11.4%増、前月比27.8%増)と6カ月連続で同月比増加となった。同月比2ケタ増は2024年12月の12.6%以来で、月間1500億円超えは2022年9月の1508億円以来30カ月ぶり、また額として2022年6月の1547億円以来の高い数字となった。なお前月比では年度末でもあり大幅増となり、3月としては2018年の1828億円、2022年の1663億円に次ぐ過去3番目の金額となった。今回は特殊要素もあり増加したとも考えられ、底堅い需要から底入れはしたとみられるも、本格回復かどうかは判断がつきにくいのが現状。なお確報は4/24公表予定。
内訳は外需が1018.38億円(同月比17.9%増、前月比20.6%増)と6カ月連続で同月比増加、2024年12月の1031億円以来の1000億円超え、同月比の伸び率では7月の17.7%増を上回り24年度に入り最大の伸び率に。4月からトランプ政権による追加関税政策実行を控え、駆け込み受注も生じていたともみられる。
一方、内需は492.66億円(同月比0.02%増、前月比45.9%増)と6ヶ月連続同月比プラスも、実質3月はゼロ成長と依然として低い伸びが続いる。24年度中では年度末ということで上期末の9月の415億円を抜いて最も大きい数字となっている。但し3月としては3年連続の500億円割れとなり、依然として盛り上がりに欠ける展開が続いている。
2024年度工作機械受注は3.9%増1兆5097億円と2年ぶり1兆5000億円超えで増加
24年度工作機械受注額は総額1兆5097億円(前年度比3.9%増)となった。2年ぶりの増加とともに、2年ぶりの1兆5000億円超えとなった。
内訳は外需が1兆655.75億円(前年度比7.0%増)と、2年ぶりに増加、しかも2年ぶりに1兆円超に回帰した。確報が開示されないと詳細な数字は不明も、2月までの累計では中国を中心に、アジア向けが40%弱の伸びで全体を牽引、一方、欧州は2割弱の減少とドイツ、イタリアなどを中心に低迷を続けた。また北米は航空・宇宙などの伸びはあったもののワークショップ向けが低迷、5%前後の減となった模様。
内需は4441.64億円(前年度比2.9%減)にとどまり、2年連続の減となった。自動車向けがほぼ10%程度の減となったとみられ、一部の不祥事、またEV向け設備投資の遅延などが影響したとみられる。このほか、一般機械も8%程度の減少と冴えない動きに。また電気精密は後半に半導体製造装置向けなど回復の兆しも横ばい程度にとどまった模様。
25年度については、トランプ関税、EVの動向、様々な紛争リスク、世界的な景気減速懸念など、不透明要素が多い。工業会では2025 年暦年工作機械受注予測を7.9%増の 1 兆 6000 億円としており、人手不足を背景に省人化、自動化ニーズが高く、年後半には受注が高まるとしている。しかし足元ではトランプ関税による問題が浮上、特に工作機械業界の主要需要先である日本の自動車産業が、高率の輸出関税を掛けられ、需要予測を見直す他、日本だけでなく欧州メーカーなども見直しに着手するなど、工作機械受注にマイナスのインパクトを与える懸念が生じている。また世界的なEV普及の思わぬ低迷でEV関連設備等にも暗雲が漂っている。短期的には大手工作機械メーカーで日本と東南アジアからの米国向け輸出を一時停止することを決めたり、追加関税分の負担について受注済みの案件などで顧客との調整が必要となるなど、早くも混乱が生じている。また半導体関連では先端半導体製造についてはAIの進展で活況を呈しているものの、レガシー半導体やEV、再エネに関連してパワー半導体においてはEVに対しての見直し、再エネではトランプ政策の再エネに対する見直しなども影響、パワー半導体設備投資においては一服状況にある。一方、地政学的な緊張の高まりなどで防衛・軍事産業向け、さらには宇宙産業への設備投資は増加が加速する可能性がある。いずれにしても、中国を除き90日間の猶予期間措置が報じられた中で、短期的には米国向けに受注残高分の駆け込み納入などの動きも出るとみられるが、受注については様子見となる可能性が高い。現状、相互関税の行方が分からないなど不確実性が増している環境の中で、本格的な工作機械受注拡大となるシナリオは描きにくく、25年度受注について、暦年予想の7.9%に対し下回り、受注減少に転ずる懸念もある。
鍛圧機械3月受注は同月比1.1%増283.53億円で同月比微増、2024度9.4%減2464億円
金属加工機械である鍛圧機械の3月受注(4/8発表)は283.53億円(同月比1.1%増、前月比93.2%増)に。3カ月ぶりに同月比増に転じ、率としては小さい値にとどまったが、額としては2024年度単月で半期末の280.8億円を抜いて最高額、2023年9月の362億円以来の数字となった。なおサービスを含むでは386.34億円(同月比3.4%増)、サービスだけを取り出すと102.93億円(同月比10.6%増)と単月で過去最高額を更新した。
国内が240.01億円(同月比13.9%減)と3カ月ぶり同月比増に転じ、年度末ということもあり、半期末9月の178億円を抜き2024年度月次最高額、しかも2023年9月の254億円以来の高い数字に。内訳は輸送25.2%増、金属11.5%増、電気48.6%増、鉄鋼22.3%増、一般0.1%増と年度末の予算消化の背景もあるのか主要業種で同月比プラスに。一方、輸出は43.52億円(同月比37.7%減)、逆に2024年度単月では2か月連続で最低額更新、2020年9月の41.69億円以来の低い数字に止まる。中国59.4%増、欧州15.7%増も、北米77.7%減、東南アジア32.5%減、インド59.2%減など月次、地域で月により大きくばらつく。
機種別でプレス系が101.3億円(同月比17.7%減)で大型プレス0.3%増、超大型プレス2.2倍も中型プレス71.2%減、油圧プレス46.6%減など。板金系は182.2億円(同月比15.8%増)、パンチング38.3%増、レーザ・プラズマ13.2%増など。
全体として年度末ということもあり回復基調に入ったとは言えない状況に。
2024年度鍛圧機械受注は9.4%減の2464億円と2年連続で減少
2024年度鍛圧機械受注は9.4%減の2464.21億円と、7/31の2600億円予想を12/14に減額した2450億円修正予想並みの着地となり、2年連続で減少した。内訳は国内が1467.68億円(9.7%減)と、4年ぶりに減少、2021年度1480億円水準に逆戻りした。輸出は996.53億円(9.0%減)となり、2年連続で減少、2021年度1161億円以来の1000億円割れにとどまった。機種別ではプレス系が1299.66億円(13.2%減)で2年連続減、板金系も1164.55億円(4.8%減)とこちらも2年連続で減少した。
国内はコロナ影響の後の増加が一巡、国内、海外含めEV投資の設備投資手控え影響がある。なお地域的にはインドなどがインフラ投資で増加している。
2025年度、鍛圧機械工業会予測(12月14日時点)は2520億円(2.3%増)予想。12月時点ではトランプ政権による北米での設備投資期待などがあり、海外向けが底打ちし増加、
国内もEV関連投資などで緩やかな増加、また半導体関連でも高速プレスなどを期待していた向きがあった。但し、現在は工作機械同様に、不透明要素が増し、特に海外向けの不振が続いているなどで、場合によっては工作機械以上に環境が悪化している懸念もある。
2月工作機器生産は4%減と27ヶ月連続減も主力ボールネジ、直動軸受は6カ月連続増
工作機械に関連する工作機器は、日本工作機器工業会4/4発表の25年2月生産額が125.93億円(同月比4%減)と27ヶ月連続同月比マイナスと低迷が続いた。この中で主力ボールネジは25.91億円(26.6%増)、直動軸受も38.61億円(8.1%増)といずれも6カ月連続同月比増となっている。両製品とも工作機械はボトム形成の中で、半導体製造装置向けの受注回復の寄与を受け、同月比プラスが定着、工作機器全体よりも回復が明確に高まっている。但しトランプ関税などもあり、今後の回復継続に不安が残る。
3月工作機械4社受注36.5%増と伸張、2024年度3989億円(11.4%増)と業界伸び凌駕
日刊工業新聞が集計している工作機械主要4社の3月受注が4/10に発表された。4社合計で456.11億円(36.5%増)と伸張、工業会の伸び率を大きく上回った。
オークマは190.88億円(45.9%増)となり、このうち輸出が114.76億円(41.3%増)、国内76.12億円(53.4%増)。総額、輸出が単月として過去最高額更新となった。中国でEV向け、風力発電向けなどで大型機を受注、米国でも航空宇宙やエネルギー関連で受注が拡大した。
ツガミは158.78億円(51.4%増)で、輸出が145.66億円(45.4%増)と7カ月連続増加、12カ月ぶりに100億円大台を超えた。春節明けで大きく伸びた要素もあるとのこと。
牧野フライスも82.00億円(5.8%増)、国内は減少も、輸出が62.81億円(11.7%増)となり8カ月連続増加。中国でEV関連、欧州で航空機関連が伸びる。
芝浦機械は24.45億円(17.4%増)で国内が大型機受注で19.25億円(29.6%増)となった。全体として工業会の伸びを上回っているが、複合機、高機能機、大型機、中国に強みを持つなどで差別化できていることが伸びている要因とみられる。一方、全体では専用機や中小企業向けなどをメインとする工作機械会社では受注減が続いているところもあり、業種内格差が広がっているとみられる。このような中で、業界再編、M&Aなどの動きが続いており、業界として大きな変換点にあるとみられる。
2024年度工作機械受注額は11.4%増の3989億円と工業会伸びを凌駕
工作機械4社(いずれも3月期決算)の2024年度受注額は合計で3989.24億円(前年度比11.4%増)となった。4社とも総額でプラスとなり、いずれの企業も工作機械工業会受注の伸びを上回って着地。各社の年度推移については決算説明会後にまとめて報告予定。
なお、牧野フライスについては4/10にニデックによるTOBへの反対意見表明をアナウンスしている。根拠及び理由として競合提案や25/3期決算内容を踏まえ、株主がニデックによるTOBに応募するか否かを判断するための、合理的に必要な時間が確保されていないこと、TOBの条件が株主を相当程度の強圧性に晒すもので、株主の利益を害するおそれがあることとしている。また牧野フライス側は対抗策を発動することを決めた。仮にTOBが成立しても持ち株比率が大きく減少するような仕組みで、ニデック側は法的措置を含め対応を検討するとした(ニデックは去年12月、事前協議せずに買収提案、会社の同意を得ないまま4月4日から1株当たり1万1000円でTOB=株式の公開買い付けを実施)。なお大株主である工作機械技術振興財団(牧野フライス創業者らの寄付で1979年に設立、2024年9月末時点で発行済み株式数の3.82%を保有)は4/3にTOBに反対すると発表している。
(H.Mirai)
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