レアアース市場近況2025#8 軽希土類と中重希土類で明暗 中国規制でテルビウム上昇
2025年4月中旬~4月下旬のレアアース市況は軽希土類と中重希土類で二極化した。軽希土類が電気自動車(EV)向け電池など最終製品の需要低迷で弱含んだ半面、中国政府が輸出規制の対象とした中重希土類は先行きの供給不足と値上がり観測を織り込み上昇した。レアアース全体では値下がり傾向で、市場には様子見ムードも強い。
■テルビウム1年4カ月ぶり高値、ジスプロシウムも横ばい脱却
中国商務省は4月4日から、サマリウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの一部を輸出制限の対象とした。上海有色網(SMM)は4月17日付のレポートで、「レアアース市場は輸出管理政策の影響を大きく受けた。中重レアアースの調達活動は引き続き活発で、原料価格は堅調に推移し、上昇傾向を示した」と指摘した。
関連記事:中国、中重希土類に輸出規制 4日から テルビウムやジスプロジウムなど、レアメタルに続き | MIRU
規制の対象となった中重希土類のうち、金属テルビウムは4月17日に$1210/kgに上げた。2024年1月以来、およそ1年4か月ぶりの高値水準となる。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ジスプロジウムも値上がり。4月17日に仲値$295/kgを付けた。3月下旬から4月上旬までは横ばいが続いたが、動きが出た。3月25日以来の高値となる。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
■ネオジムはピークアウト、ランタン動きなし
一方、軽希土類はさえない。金属ネオジムは4月17日に$74.75/kgに下げた。2月下旬以来の安値水準となる。4月半ばまで2024年10月以来の高値圏にあったが、ピークアウトした。SMMは「春節(旧正月)後の磁石需要の伸びが予想を下回ったため、取引先が磁石向け軽希土類の調達に慎重になっている」と説明した。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ランタンは3月半ばから横ばい。過去20年間の最安値圏にある。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
中重希土類の上昇を軽希土類が相殺する形で、レアアース全体では価格はさえない。中国の業界団体である中国稀土協会が4月23日に発表したレアアース価格の平均値は173.1と、前日の175.4から下落した。3月半ばに183とピークを付けて以来、下落基調を強めている。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
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●4月24日
トランプ米大統領は、ウクライナとの鉱物資源の共同開発に関する協定について、4月24日に締結できる見通しだと明らかにした。TBSニュースなどが4月18日に伝えた。
●4月21日
ロイター通信は4月21日、 米実業家のジェームズ・キャメロン氏がルクセンブルクの世界的鉱業大手ユーラシアン・リソーシズ・グループ(ERG)に50億ドル規模の買収を提案したことが分かったと伝えた。ロイターがERG取締役会宛の書簡を確認したという。ERGはカザフスタンなどでレアアースを生産する準備を進めている。
●4月15日
米ホワイトハウスは4月15日、ホームページ上で、「トランプ大統領が商務長官に対し、重要鉱物すべての輸入状況に関する調査を求める大統領令を発した」と発表した。
関連記事:米国、重要鉱物すべての輸入状況を調査 トランプ氏が大統領令、関税実施の前触れか | MIRU
●4月14日
中国税関総署が4月14日に発表した中国の2025年3月の貿易統計で、1-3月のレアアース輸入総額は前年同期比31.0%減と、減少率は1-2月の29.4%減から拡大した。輸入量は30.9%減で、減少率は1-2月の24.1%減から悪化した。
1-3月のレアアース輸出総額は10.9%減と、減少率は1-2月の0.4%減から悪化した。一方、輸出量は5.1%増で、1-2月の3.0%減から増加に転じた。
関連記事: 中国のレアアース輸入額、1-3月は31%減 ミャンマー不安で前月から悪化、輸入量は増加 | MIRU
(IR Universe Kure)
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