
再生可能エネルギーやプラスチックリサイクル事業を展開するヴェオリア・ジャパンの野田由美子会長は3月11日に開催されたCPs(サーキュラーパートナーズ、通称:シーピーズ)第3回総会のパネルディスカッションにパネラーとして参加した。同氏は「CEにおけるグローバルとローカルの取組のあり方」のテーマの下、EUのCEに関する政策方針に“ブレがない”ことを強調した。
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野田氏はモデレータである武田洋子委員(三菱総合研究所執行役員)に欧州のCE動向について聞かれると、2月に欧州委員会のクルト・ヴァンデンベルケ気候行動総局総局長と懇談したことを明かした。野田氏によるとヴァンデンベルケ氏は「EUにとって気候変動問題は存亡の危機(Existential Crisis)」であり、CEの推進を優先し、2050に向けてブレずに政策を進めていくことを強調したという。
実際、欧州委員会は懇談の後の2月26日に、競争力強化と脱炭素を両立しつつ経済成長を目指す政策文書「クリーン産業ディール(The Clean Industrial Deal)」を発表しており、その中でも「Circularity will be a priority(循環性が優先される)」と明記したほか、循環型材料の使用率を30年までに現在の11.8%から24%に増加するという明確な目標値を提示している。
野田氏は、「EUはアメリカの状態に関わらずまっすぐまっしぐらに進んでいる」と述べたうえで、同政策文書における規制緩和による企業競争力の強化策を高く評価した。欧州委員会は政策文書の公開と合わせて、EU の規則を簡素化し、競争力を高めるための一連の提案を採択しており、それが実現すれば、CE分野において公共と民間あわせて500億ユーロの追加投資が見込めるという。企業や家庭のエネルギー料金を下げるための行動計画も同日に採択したことからも組織としての本気が伺える。
野田氏はディスカッションの最後に、「日本には素晴らしい(技術の)蓄積があり、循環型のモノづくり大国を目指す宣言をしてほしい。オランダは50年までに完全循環型経済を構築するという宣言をしたからこそ、大企業からスタートアップまでもが動き出しソリューションが生まれているため、これを見習ってほしい」と要望した。
同ディスカッションには海洋プラスチックごみ問題の解決を目指すクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンスの澤田道隆会長もパネラーとして参加した。同氏は「環境問題や資源問題を重視するとコスト増につながり、企業競争力が損なわれがち」と見解を述べたうえで、企業負担の軽減を考慮したEUの政策に理解を示した。また、日本のCE戦略についても言及し、CE推進による短期的な揺り戻しに惑わされることなく、中長期を見据え、「ブレずにやってほしい」と政府や企業に協力を求めた。
(IRuniverse K.Kuribara)