機械工具工業会の秋季総会が、10月29日 岐阜県高山市の高山グリーンホテルで開かれ、会員企業56社110名が参加し、盛況のうちに無事終了しました。
この会議で議論されたのは(実際には議論ではなく講演でした)、会議の冒頭で佐橋会長が示した3つの課題でした。

米国トランプ大統領が課した、鉄鋼、アルミを基本とした新関税への対応。
関税比率は当初予定した値より低くなりましたが、まだ予断を許さない状況です。
会員企業の中にはこの影響を受けた会社が相当存在すると思われます。
中国のタングステンやレアアースの輸出規制への対応。
中国のタングステン輸出規制は今年の2月から始まり、2月に急減して4月5月はピタリとゼロになり、夏に少し回復するも、10月は再びゼロになり、その状態が続いています。価格も輸入量の減少に伴って上昇し、現在、昨年比で2倍になっています。
これは会員企業の多くに影響を与えています。
1.2.を背景に、機械工具の生産(受注)が伸び悩んでいること。
機械工具生産額観測調査(DI値)によると、全体の業況は足元(2025上)は悪く、下期は多少回復するもののプラスまでは至らない。
2025年通期の生産額見通しは 480,200万円で、対前年同期比で101.7%
(100%を超えるも、当初見通しの102,5%からダウン)。
この他にも、CO2排出量低減の対策や、工具のデータベース構築、海外への展開等、課題は多く存在するも、話題が集中したのは、タングステン問題。
このタングステンの品薄と価格高騰の問題については、佐橋会長だけでなく、大沢副会長、経産省の是安課長補佐、、それに今回『業界功労賞』を受賞されたOSGの石川則男会長も、異口同音に指摘しています。
今回、特に印象的だったのは経産省の是安課長補佐の講演です。

抽象論を展開するのではなく、米国の新しい関税の詳しい内容や、中国の輸出規制の内容と背景について、具体的かつ詳細な説明があり、次に我々が何をなすべきかをかなり正確に理解できる内容でした。中国の輸出規制対象となる「戦略物資」は今年に入って急激に増えています。
2023年 ガリウム、ゲルマニウム、黒鉛
2024年 アンチモン、超硬材料、ドローン関連品目
2025年 タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウム
サマリウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム
残念ながら詳細資料には「参加者限り」の但し書きがあり、ここに掲載できません。
明確なのは、中国の輸出規制措置は、通常の経済安全保障といったレベルのものではなく、もはや外交のかけひきの道具だということです。
ここで、一抹の不安があります。それは官民共同の取り組みが「野球のお見合い」になってはいけないということです。佐橋会長は「政府の協力がなければ・・・」と語り、是安課長補佐は「民間の協力こそが不可欠」と言います。当然と言えば当然ですが、時には両者の役割分担を明確に分けた方がいい場合もあります。
例えば、中国との交渉は外交ですから政府の専権事項であり、一方、国内の備蓄システムや循環型社会の回収システムを確立する法的枠組みの整備は、国内行政の課題です。
そして実際に備蓄や回収のためのハードウェアを作って運用するのは民間企業の役割です。しかしハードウェアの構築には費用がかかります。その予算確保は行政の役割だと思います。以上は素人の思い付きですが、これらの点を明確にしたうえで、このプロジェクトは推進する必要があると筆者は考えます。
戦略物資の禁輸を一種の外交の脅迫手段として使うことは、昔からありました。
古くはハルノート拒否に伴う、石油や屑鉄の輸出禁止、近年ではOPECによる2度の石油危機、近年の中国によるレアアースの輸出禁止等です。
その度毎に日本は困惑し、我々の先輩達は対応に苦慮してきました。先輩諸氏がどのように対応してきたか、今また研究すべき時が来ました。
まさに「殷鑑遠からず」です。
(IRuniverse Akai)