LME銅相場が史上最高値圏に接近する中、ここに来て短期的な調整局面入りを示唆する動きが見え始めた。14日、LME銅3カ月物は前日比1.5%安の13,938.50ドルで終了し、8営業日続いた上昇が一服した。
関連記事→
供給不透明とAI需要期待でLME銅は8日続伸、銅建値は40円引き上げの2,310円に
会話で読み解くLME入門46# 在庫水準40万トン水準の中、1万3,000ドル超の水準に――しかし先々の雲行きは怪しさも
グラスバーグ全面再開、さらに1年遅延へ フリーポート、完全復旧を2028年に後ろ倒し――銅供給懸念長期化の可能性
これまで市場では、
• 中東危機に伴う硫黄・硫酸供給逼迫
• インドネシア・グラスバーグ鉱山の復旧遅延
• AI・データセンター向け電力インフラ需要拡大
• ドル安と投機資金流入
を背景に、銅価格の一段高観測が支配的だった。外電によると、今回の調整は、価格上昇が最大消費国中国の実需を抑制し始めたことが背景とみられている。
■ 「高過ぎて買えない」――中国で価格拒否の兆候
Bloombergによると、中国では高値警戒感から買い控えが広がっている。
中国の先物価格(SHFE)は足元で10.6万元(約15,500ドル)近辺まで上昇しているが、現物加工業者の受注が鈍化。大手加工メーカー関係者によれば、電線向け銅ロッド需要は4月から減少し、前年同月比でも弱含んでいるという。
空調機器や冷蔵庫向けの銅管需要も5月は前月比約20%減少見通しとされ、価格高騰が企業採算を圧迫しているようだ。
市場では、
「高値が需要を破壊し始めた」
との見方も出始めている。
実際、銅高騰局面で指標とされる洋山輸入プレミアムの低下や、中国加工業者による「買い待ち」姿勢は、1月急騰局面と似た様相を見せている。
■ SHFE在庫は反転増加
需給面でも、これまでの強気材料に変化が見える。
上海先物取引所(SHFE)の受渡在庫は、過去2カ月大幅に減少していたが、今週に入り3日間で10%増の97,001トンへ反転増加した。
在庫の積み上がりは、
現物需給が高値に追随できていない兆候
として市場で注目されている。
これまで銅相場を支えた「中国需要回復」のストーリーに、やや陰りが見え始めた格好だ。
■ それでも強気材料は消えていない
一方で、相場の強気要因そのものが消えたわけではない。
市場では依然として、
① 中東危機による硫黄・硫酸供給不安
ホルムズ海峡問題を背景に、硫黄・硫酸物流混乱が続いている。Goldman Sachsは、SX-EW工程を抱えるチリやコンゴ民主共和国(DRC)の銅生産が制約されるリスクを警戒している。
② グラスバーグ復旧遅延
世界第2位銅鉱山グラスバーグの全面復旧は2028年へ延期された。供給正常化が後ろ倒しとなったことで、中長期の供給不安は残る。
③ AI・データセンター需要
外電では、
「AI向け電力インフラ需要が銅相場の新たな論理」
との見方がなお支配的だ。
送電網、変圧器、データセンター建設は銅多消費型であり、中国でも新エネルギー関連需要が不動産不振を相殺していると分析されている。
■ ただしICSG需給予測との温度差
もっとも、需給統計との乖離もある。
ICSG(国際銅研究会)は2026年について、約9.6万トンの供給過剰を予測しており、2027年には過剰幅がさらに拡大する見通しを示している。
つまり、
短期の供給不安と長期需要期待が価格を押し上げる一方、統計需給はなお余剰気味
というねじれ構造が続いている。
■ 総括:調整局面入りか、“押し目”か
足元の銅相場は、
「強気材料を織り込み切った後の高値調整」
に入りつつあるようにも見える。
中国の実需後退、在庫反転増加、洋山プレミアム低下などは、少なくとも短期的には過熱感を示唆する。
ただ一方で、
硫酸供給問題、鉱山制約、AI需要という根幹のストーリーは崩れていない
ため、市場では「調整は押し目にとどまる」との見方も根強いようだ。
焦点は、14,000ドル超を実需が受け入れられるかに移りつつある。
(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)
本記事は執筆者個人の分析および見解であり、IRuniverseの公式見解を示すものではありません。内容は情報提供を目的としたもので、投資判断の根拠として用いることを意
図したものではありません。