リサイクルとリユース2R型の国際資源循環
先頃行われたEM(エコマテリアルフォーラム)主催の「アジアに貢献する国際資源循環の道」では様々な問題提起と提案がなされた。講演会のトーンではこれまでのリサイクル至上主義からリユースも含んだ2R型の国際資源循環を提唱しているようだった。
メインスピーカーの原田幸明氏(NIMS特命研究員)はこの数年間でグローバルなマテリアルフローが変わってきているので、この潮流に合わせた資源循環のあり方を問うている。たとえば「中国はかつては資源を吸収するだけだったが、現在は資源を放出する側に回っている。鉄鋼材は先進国に送ればAD(アンチダンピング)をうたれるため、今は中南米でもパラグアイなどに中国材が出ていっている。また中南米の方々も安い中国製品を歓迎している」という。
レアメタルの循環についても「たとえばタンタルはアフリカなどで採掘されたものは中国に向かい、精錬された五酸化タンタルやタンタルメタルは米国に行き、日本は通過している。中国と米国の2極化構造ができあがっている」。
タングステン系のスクラップ、E-WASTEについては
「概して日本でリサイクルされることは少ない。E-WASTEは別名、良くないけれどイーウエスト(という原田先生18番のギャグ)なんだけれども、日本以外、アジアの国々ではずいぶんもったいないリサイクルのされ方になっている。いいとこどりのリサイクルで価値の低いものは捨てられる。こうした現状を見るにつけ、私は日本国内で都市鉱山の開発をするのもいいが、むしろ海外で日本の都市鉱山技術を広めていくべきではないかと考えている」という。
京都大学の山末博士はベトナムの未熟かつ危険なリサイクルを紹介しつつ、ベトナムにも正しいリサイクルの方法、知識を吹き込む必要があると説く。
「ベトナムの一般大衆レベルでは中古家電を多く使用しており、使用年数も長いのであまり廃棄されない傾向がある。
廃家電などはベトナムのDahaiなど、通称リサイクル村といわれるエリアで集中的に行われているが、かなり危険な労働環境になっており、外傷(切り傷、擦り傷、骨折、指切断)に加えて精神障害や脳障害も発生している」という。それはあたかもE-WASTEの不適切処理で世界的に有名な中国広東省にあるGuiyu(貴嶼鎮)と同じ状況が再現されているようだった。
「ベトナムのリサイクル銅というものは基板や銅屑をいっしょに溶かしているため、貴金属含有量は多いのだが、そういった工場の多くは環境対策設備は施されていない。またもっと細かなリサイクルができれば資源の無限希釈を抑えることもできる」という。
リマンのススメ
東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻の梅田靖教授は国際リユースを提唱。
実践している例として中古家電輸出で有名な(最近はリサイクル業としても)浜屋、自動車リサイクルの会宝産業、長野の部品メーカー信越電装などの事例を紹介。信越電装はリマン(リマニュファクチャリング)を積極的にすすめている企業。
梅田教授は富士ゼロックスの環境リサイクル方針、1、国際資源循環の原則、2、ごみは輸出しない、3、不法投棄はしない、4、処理国で環境負荷をかけない、5、処理国に利益還元する、という5原則を示し、「素材の国際循環に関する統一的なルールと見解が必要だ」と説く。
梅田教授の提案はなかなかに大胆で、たとえば自動車のエンジンを船のエンジンとして使うなど、いままでにない柔軟なリユースの手法を提言。しかしこうした大胆な部材、性能のリユースについては生産者側(メーカー)が許容するかどうか問題は残されている。
(IRUNIV Yuji Tanamachi)
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