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Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.51中国の中古車市場について思う(その1)

2019.09.04 17:06

 忘れた頃に登場するArataAbeのELVReport51は中国の中古車市場について。

 

 筆者は、2019年8月に、本ウェブサイトでもお馴染みの外川健一・熊本大学教授らと中国・北京市を訪問し、同市の中古車交易市場や自動車リサイクル工場を視察した。筆者自身は北京市に訪問するのは3度目である。

 

 中国の自動車リサイクルについては、2005年頃より友人の平岩幸弘氏(桜美林大学)が精力的に進めてきた。そして、数多くの調査、成果を出してきた。それらにより、中国の構造は大まかに理解できる。また、平岩氏の成果を受け、日本で中国人留学生を中心に各種テーマで論文が発表されている。

 

 そのような中、筆者の関心は、静脈市場の発展にある。もちろん時代や地域によって静脈市場の構造は異なるが、静脈市場の発展経路にどの程度の共通項があるのかに関心がある。東南アジアも重要だが、中国もこの研究テーマにおいては避けて通れない国である。そして、中国の現在は、日本やアメリカの静脈市場のいつの段階にあるのか、何が異なるのかを見ておきたいと思っている。

 

 前回の北京の訪問は2019年2月だったが、その際に筆者が関心を持ったのは、中古車の国内移動の範囲とオートオークションの発展だった。前者については、北京から内モンゴルに中古車が流通しているという話を聞いた。大都市から地方に中古車が流出するというものだが、北京と内モンゴルは少々距離があるのではないか、それよりも近隣の地方都市のほうに中古車は流通しないのか、などと思った。

 

 行政区分として北京市に接しているのは、河北省と天津市であり、内モンゴル自治区は河北省の北にある。北京市から内モンゴルの省都のフフホトまでは直線距離で400キロメートル超、最も人口の多い赤峰市までは340キロメートル程度である。340キロメートルから400キロメートルは、日本では東京を起点として直線距離で、琵琶湖から大阪あたりまで、あるいは宮城県北部から岩手県南部までになる。よって、中古車の移動先として遠すぎるわけではない。

 

 とはいえ、日本の感覚で言えば、「もっと近いところに中古車は移動するのではないか」と思ってしまう。つまり、東京都の車が岩手県に行くよりも千葉県や茨城県、福島県に行くほうが多いのではないかということである。近隣の河北省を飛び越えて、内モンゴルが最も多いというのはどういうことか。とても興味深いところではある。

 

 中国では、このような省を越えた中古車の移動について、中国汽車流通協会のホームページで確認できる。2018年の数値を見ると、確かに北京からは内モンゴル向けが最も多く、37.26%となっている。それに続くのが遼寧省であり、14.43%である。さらに、山東省(11.03%)、山西省(8.16%)、吉林省(7.42%)が続いており、近接する河北省の名前はない。

 

 前回の訪問で聞いたのだが、内モンゴルに行くのは、排気ガス規制の差によるものもあるらしい。つまり、排気ガスの厳しい北京から、緩い内モンゴルに移動すると言う構図である。

 

 排気ガス規制による中古車移動は、貿易でよくみられる構造である。筆者はそのような制度の格差によるものは、一時的なものだろうと思った。国家間の制度の差であれば、長らく存在するかもしれないが、同じ国内であれば、時間が経てば規制の水準が揃っていくのではないだろうか。そのようなときに、なおも河北省よりも内モンゴルに中古車は移動するかどうかである。

 

 一方、そのような排気ガス規制以外で中古車が移動する制度的要因はある。北京市の特徴としてナンバープレートの総量規制がある。これは大都市の混雑現象(交通渋滞や大気汚染など)に伴う措置と考えられるが、これにより、ナンバープレートを取得するのが非常に困難になる。そのような困難の中、新たに車を買う際に、中古車を買うかである。ナンバープレートの総量規制により、程度の良い中古車であっても価値が下がり、中古車を北京市外に追いやると言う構図になるのではないか。年式の低い車だったらなおさらだろう。

 

 一般に中古車の広域移動の要因として所得格差があげられる。確かに大都市と地方で所得格差はあるのだが、大都市=高所得、地方=低所得とするのは乱暴である。地方にも高所得者層はおり、新車の需要はある。反対に、大都市にも中古車を買う層はいる。北京の場合は、ナンバープレート規制の影響で中古車を買いたくても買えないのかもしれないが、そのような規制がなければ、市内で中古車は流通しうる。わざわざ広域に移動する必要はない。それを十分に考慮した議論が必要である。

 

 また、地方も中古車の移入を求めているかというとそういうわけではない。特に新車ディーラーは安い中古車が入ってくること対しては消極的であると思われる。この点は十分に整理していないが、過去の日本でも中古車の地方への移動は問題視された。もちろん、古い車の流入は大気汚染や安全性といった住民、ユーザーの問題があるが、新車販売に影響するという地場産業の問題がある。中古車貿易でもしばしば輸入制限政策があるが、筆者は後者と似た地元の経済的な問題を頻繫に見聞きする。

 

 実は、中国では、最近まで各省による中古車の流入規制があった。その背景に何があったのかは今後の課題である。これに対して、調査会社のレポートを見ると、国の要請もあり、2016年よりこの障壁は撤廃される方向になったという。その目的は中古車流通の円滑化である。中古車販売は新車販売と密接に関係しており、中古車流通の円滑化が新車販売の促進に繋がるものと思われる。そのような動きを時代の流れとともにどのように捉えるか。非常に難しいが、日本の経験をもとに比較していきたいと考えている。

 

以上

 

 

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阿部新(Arata Abe)

 山口大学 国際総合科学部・准教授

 2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。

 同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授

 2015年より同大学国際総合科学部・准教授

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