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資源鉱山トリビアシリーズSeason2#5 レアメタル、レアアースのトリビアその1

2019.10.23 09:08

  「レア・メタル(RM)とは」という定義はありませんが、一般に下表に示す赤ハッチを掛けた30種をRMと称しています。

 

 

表

 

 

 30元素の筆頭にリチウム(Li)があります。Liと言えば現在二次電池として最も注目され有効に使われている希少金属です。ハイブリッド車や電気自動車からスマートフォンまで大活躍です。そして、その有効活用の基礎となったのが、つい先日発表されたノーベル化学賞を受賞された吉野彰氏のリチウム電池に関する研究です。そのLiについては、世界の塩湖について「第3章アンデス山系のトリビア」で縷々述べてきました。

 

(関連記事)

 ・資源鉱山トリビアシリーズ⑦-2 続ボリビア編 ボリビアとリチウム

 ・資源鉱山トリビアシリーズ#10 アルゼンチンとチリのリチウムについて

 

 

 基本的にLiはじめRMは「Rare Metal;希少金属」ですから、次のようなことが言えるでしょう。

 

 ・地球上の存在量(埋蔵量)が稀
 ・技術上、経済上抽出が困難か高コスト
 ・複雑な構造の中に微量元素として含まれ不純物として扱われてきたこと。
 ・発見が遅れ、経済上も注目されていなかった。
 ・流通量、使用量が少ない非鉄金属であること。

など。

 

 また、RMグループの中に31番目のグループとして17種類の元素(*)からなるレア・アースREを加えて47元素からなると説明されることもあります。

*:スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)にランタノイド系列の15元素を加えた17元素

 

 このREは商業的に単独で使われるより、鉄、銅、亜鉛等の基礎金属に微量混入させて、基礎金属の強磁性、高度な光学特性、触媒特性などを飛躍的にと言ってよいほどより高度に発揮させることに使われることが多い。

 

 その代表が、ネオジムを使った磁石にディスプロシウムを混入してネオジム磁石の耐熱性を上げるなどがあります。

 

 白金やパラジウムのように自動車排気ガス触媒として使われてもいます。

 

 これらの金属の大半は、地中に単独ではなく他の金属と化合したり混在して存在します。この金属の化合物を鉱物あるいは鉱石と呼んでいますが、他元素が複雑に絡み合ってできている鉱物も少なくありません。

 

 その代表に、近年注目されている高磁力を発生する磁石に欠かせないネオジム(Nd)やサマリウム(Sm)を含有する鉱物であるバストネサイトやモナザイトです。

 

 ゼノタイムにはYが含まれており、常温超伝導用の元素として研究が行われ、現在のリニア新幹線実現に寄与しています。

 

 

図

出典:「トコトンやさしいレア・アースの本」日刊工業新聞社刊を筆者が加工

 

 

 一方、上図に示しますように、モナザイトにはランタノイドとともに放射性元素であるトリウム(Th)を含んだリン酸塩鉱物です。上図にはその含有率は14%程度で示されています。バストネサイトはLnとフッ素(F)とからなる炭酸塩鉱物でやはりThが含まれていますが、その含有率は上図では2%程度で示されています。

 

 

図

出典:「トコトンやさしいレア・アースの本」日刊工業新聞社刊より

 

 

 これらの組成は、地層の性状、生成過程における圧力や温度や地質構造などの諸条件で微妙に変化するために一概には言えないのですが、ランタノイドを含むRM鉱物にはまずThなどの放射性元素が随伴する可能性がきわめて高いのです。

 

 工業的にはRM鉱物をまとめて使うのではなく、前述のようにネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)のように元素単体にして使うために、モナザイトやバストネサイトに含まれる元素を分離して単体にする必要があります(選鉱学的に「単体分離」と言います)。

 

 しかし、日本では、これらRM鉱物を商業的に産出する鉱山はないので輸入する必要がありますが、原料を輸入して日本国内で分離精製することはできません。必要な元素を分離回収した後に出てくる廃棄物に放射性元素であるウラン(U)やトリウム(Th)が含まれ、日本では処分が厳しく制限されているからです。現地において低コストで分離され精製された金属元素を直接輸入するほうが日本の環境への影響もなく製品化まで低コストで工程短縮が可能な方法を選択して製品加工を行うといういいとこどりの生産を行っていました。

 

 そして、そのRM元素の大半を中国から輸入していました(次図参照)。

 

 2010年9月に尖閣諸島EEZ内で操業中だった中国漁船を捕獲しようとして衝突されたために、船長を逮捕した事件がありました。そのときに中国から、船長を開放しないとレア・メタルの輸出を止めるという脅しが入り、逮捕した船長をむざむざ釈放するという情けない顛末がありました。この事件で、中国のレア・メタル、レア・アースの供給能力の大きさが脚光を浴びる結果となりました。

 

 事件が起こる前年の世界のレア・メタルの埋蔵量と生産量を見ると下図のようになります。

 

 

グラフ

左図は埋蔵量、右図は生産量

出典:地球資源論研究室(http://earthresources.sakura.ne.jp/er/)より

 

 

 ともかく、当時の日本の産業界、特にIT産業はRMの大半を中国に負っていたために大慌てで急遽輸入先変更と代替元素の検討を開始した経緯があります。

 

 中国のRM鉱山の代表的なのが、モンゴルとの国境に近い包頭鉱山(Baotou市にあるRM鉱山です。

 

 

写真

包頭鉱山(Baotou RMMine) 廃滓堆積場(左正面図、右平面図)

JOGMEC資料(http://mric.jogmec.go.jp/kouenkai_index/2012/briefing_120208_4.pdf

 

 

 私も、現役時代初期(1981年~1986年)の研究所勤務時に包頭鉱山鉱石の選鉱試験に携わったことがあり懐かしく思い出しました。ただし、当時は高磁力金属としてはサマリウム(Sm)や常温超伝導につながるRMとしてのイットリウム(Y)の分離精製(溶媒抽出)でした。残念ながら、当時は廃棄物中の放射性元素にまでは思いが至っていませんでした。

 

 しかし、現在、日本は中国からネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)金属を輸入する良いとこ取りで、現地での分離精製と放射能汚染の影響には思いが至っていない(あるいは知らんぷり)状態です。日本だけではありません。欧米の大半がRMを中国に依存しており、日本の今回の状況を知った各国が中国以外のRM資源を再調査し、分離精製技術の向上をはかり、供給を断たれた場合に備えた態勢をとれるように検討を開始しました。

 

 一方、江西省には、放射生元素のウラン(U)やトリウム(Th)が少ないイオン吸着鉱の鉱山が多数あり、そこでは、分離精製せずに採掘した鉱石を積み上げて硫酸のシャワーをかける硫酸リーチングが行われているそうです。この方法であれば、硫酸をリサイクルすれば鉱害問題は少なくなります(100%リサイクルはできないので鉱害問題を0にはできません)。しかし、これら中国のRM鉱山では地元の人たちに放射能障害がかなり出ているらしいのですが、うわさで伝わってくる程度の蚊帳の中です。

 

 かって、ボリビアでもポトシ銀山の銀生産の衰退とともに1880年代から勃興してきたオルロ市郊外の錫鉱山が隆盛を誇っていましたが、1929年の世界大恐慌とともに錫建値が暴落しました。しかし、その後、衰退気味であった錫建値が2002年ごろから上昇に転じ2007年にはピークに達しました。

 

 一方、東南アジアでイギリスの統治下にあったマレーシアを中心として1929年の世界大恐慌の影響で大暴落したが、ボリビア同様、その後徐々に回復し1960年代後半から錫の一大ブームとなり、2007年にはピークに達しましたが、現在に至っています。

 

 一方、錫建値大暴落後各地に放置されたアマンと呼ばれる廃石(下表最右欄)にRMが見つかり、一気にアマンからのRE分離回収研究が各国で開始されました。

 

 

表

(※注:パンニングは操業数、作業員数のデータなし、出典:Malaysian Tin Bulletin(Mineral and Geoscience Department/Statistics Department)

 

 

 そのなかで起きたのが、日本のM化学会社がマレーシアで実施していたアマンからのRE回収で、ドラム缶に入れて放置していたRE回収後のアマン廃石に放射能があることが判明し訴訟問題が起こりました。

 

 

写真

 

 

 ことほど左様に、RM、RE開発には放射能を含む環境問題という厄介な問題があり、簡単には進められません。欧米でも同様で、中国が1992年にREで世界をコントロールする戦略を発表して以来、あわてて中国を除く世界中でRE資源調査を開始し、豪州(マウントウエルズ)等で有望な交渉が見つかり始めたのですが、中国がダンピング攻勢をかけ始め、新規開発を断念せざるを得ない状況となり、ますます、中国1強の様相を呈してきました。原料は買えばよいという考えは、つい最近、韓国の電子産業が経験したばかりですね。その後着々と、米国、豪州、南アフリカ、北欧、ロシア(第5章コラ半島、ロボゼロのカーボナタイト鉱床)などでRE鉱床調査と開発が進められており、まんざら悲観することはないでしょうが、分離精製をどこで行うのか、放射性元素をどのように処理するかが大きな課題となっています。

 

 

(OHKI HISAMITSU)

 

 

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