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量子コンピューティングEXPO(秋)量子コンピュータが注目される理由

 4月に青梅展示会で開催された量子コンピューティングEXPO(春)に続いて、第2回量子コンピューティングEXPO(秋)が、幕張メッセで10月27日(水)~29日(金)まで開催される。開催にあたって、量子コンピュータがなぜ、注目されてきたのか、その理由を考えてみた。

 

 第3回ブロックチェーンEXPO(秋)、第2回AI・人工知能EXPO(秋)も同時開催される。

 

 下記は、東京ビッグサイト、青梅展示棟で4月7日(木)~4月9日(金)まで開催された、第1回 量子コンピューティングEXPO(春)の様子。

 

 

写真

 

 

 量子コンピューティングEXPO(春)では、最近テレビで頻繁にコマーシャルされているTOPPAN(凸版印刷)を始め、エレコム(ELECOM)、東北大学(YouTube配信も実施)、Blueqatなどが出展した。

 

 なぜ、量子コンピュータがこれだけ注目され、騒がれているのでしょうか?それは、ムーアの法則と言われる半導体技術に基づくコンピュータの成長が頭打ちとなり、ポストムーア時代の新しい原理のコンピュータの開発に世界中が乗り出したからです。

 

 

<ムーアの法則:微細化に伴い1つの半導体チップ当たりのトランジスタ数は、18か月で2倍>

 これは、今から40年ぐらい前にインテルをつくったゴードン・ムーアが予言した法則です。

 

 トランジスタの集積度は1年半毎に2倍となる、つまり指数関数的トレンドに従って急激な勢いで成長するという経験則がムーアの法則です。

 

 つい最近まで、一つのメモリーの中のトランジスタの数は、もののみごとに指数関数的に成長してきました(下記グラフの縦軸は対数で表示していますので、直線的に増加していることが、指数関数的に増加していることを表します。)。それに伴い、トランジスタのサイズはどんどん小さくなってきましたが、これ以上小さくできないくらい小さくなって、限界に来てしまいました。

 

 

グラフ

 

 

<新原理コンピュータの模索>

 そのため、従来のシリコンコンピュータを超えた新しいコンピュータの開発が求められた。

 

 代表的なものとしては、人間の脳の情報処理機構を模倣する脳型コンピュータがある。これは、最近話題となっているキーワードとしては、ディープラーニング(深層学習)です。コンピュータが囲碁の世界チャンピオンを破ったという話を聞いたことがあると思いますが、

 

 これが、深層学習と呼ばれる人工知能アルゴニズムです。

 

 

<量子コンピュータ:ハードウェアの開発>

 量子コンピュータは、量子力学の原理に基づくコンピュータです。

 

 量子力学は、ミクロな原子のような世界を記述する力学です。

 

 量子コンピュータは、従来の普通のコンピュータで計算できる問題も解けますし、アニーリングマシンと呼ばれる別のコンピュータでできることもできるコンピュータです。

 

 ただし、この量子コンピュータは、ありとあらゆる問題が“速く”解けるわけではなく、ある限られた量子コンピュータが得意とする一部の問題、例えば金融、量子化学計算、機械学習などの特定の問題のみを劇的に“高速化”することができます。

 

 量子化学計算は、分子に対してシュレディンガー方程式を解いて、分子構造や反応過程、物性を計算機で予測する学問分野です。スパコンをもってしても小さなサイズの分子しか取り扱えません。量子コンピュータでは、“高速処理”が可能で、薬や新素材開発や、触媒や材料設計に役立ちますし、金属・鉄鋼業界にも非常に役立つと考えられています。

 

 もう一つの得意分野は、量子機械学習です。普通の機械学習は、画像処理とか音声認識とか、最近では囲碁、チェス、ゲームで使われたり、自然言語処理とか、翻訳とかに使われたりします。

 

 量子機械学習は、機械学習処理を、量子力学的重ね合わせを使って加速する方式で、量子ディープラーニング、量子強化学習、量子ボルツマンマシンといった方式が提案されている。

 

 つまり、ここでのキーアプリケーションはAIです。AIは、ありとあらゆる産業界に対して影響があります。

 

 また、因数分解はセキュリティに絡む大変重要な問題ですし、金融における例えばポートフォリオ最適化とか、様々な産業分野に大きなインパクトを与えるということできることから大きな注目を集め、多くの業界が参入しています。

 

 つまり、未来のデータセンターは、スパコンがあって、その端っこに量子コンピュータがおかれていて、スパコンと連携しながら、量子コンピュータが得意な問題だけ高速処理するアクセラレーターとして利用されると考えられています。

 

 グーグル、IBM、インテル、あるいは中国のアリババといった世界的大企業や多くのベンチャー企業が実際に量子コンピュータ―のハードウェアの開発を進めています。日本で理化学研究所と東京大学を中心にした研究機関が量子コンピュータのハードウェアの開発を進めている。現在圧倒的に技術が進んでいるのが超電導※量子コンピュータです。現段階で65量子ビットの超電導量子コンピュータをIBMが実現している。

※超電導体とは、ある温度以下で電気抵抗が“ゼロ”になる物質です。代表的なものはアルミニウムです。

 

 超電導量子コンピュータの大きな弱点は、動作温度です。動作する温度領域は19ミリケルビンという、ほぼ絶対零度(-273.15℃)の世界です。このような極限環境を実現するためには大型で高価な冷凍機が必要となります。

 

 今後の可能性を秘めた量子コンピュータがあります。それはシリコン量子コンピュータです。現状は、3~4量子ビットのシリコン量子コンピュータが出来たばかりですが、最先端の半導体製造技術を駆使することができるとともに、動作温度10ケルビン(-263℃)であり、これならデスクトップPCサイズの冷凍機で冷やすことができる。インテルや日立が改札している。商用量子コンピュータとして本命ではないかと、期待されている。

 

 コアックス株式会社:量子コンピュータ向けの、特に冷凍機に設置する、ノイズの少ない、熱特性にもすぐれた極低温用同軸ケーブルをつくれるのは、日本のコアックスだけだそうです。世界中の量子コンピュータ企業が、使っている同軸ケーブルは皆、コアックス製とはすごいことですね。

 

 

量子コンピュータ豆知識

 これまで縁の下の力持ちであった、量子力学の不思議な性質を情報処理、計算に利用したもの。古典力学の世界ではニュートン方程式がすべてを支配し、ある位置に粒子が確実に存在することが前提となる。しかし、電子のような微粒子の世界では、成り立たず、シュレディンガー方程式がミクロの世界を記述します。我々は干渉現象から理解している世界では、電子が波として振る舞い、トンネル効果といった量子力学の世界ならではの現象があります。ミクロの世界においては、電子は壁があったとしてもある確率でトンネルして突き抜けることができるのです。もう一つの不思議な現象は、重ね合わせの原理です。量子力学的粒子というのは、異なる状態、二つ以上の状態を同時にとることができる性質を持っている。この量子をつかって計算、計測、セキュリティを実施するのが量子コンピュータである。

 

 従来のコンピュータでもちいる従来ビットでは、0もしくは1(オセロの白もしくは黒のように確実に定まっている。)の異なる状態をスイッチしながら計算を実行している。量子コンピュータにおける最小単位である量子ビットでは、異なる状態が重ね合わさった状態を許容する(確実には定まっていない。)。つまり、0もしくは1のどちらの可能性も残したまま計算するのが量子ビットの特徴となる。量子力学の世界では、ありとあらゆる異なる状態の重ね合わせを取ることができる。量子演算においては、ユニタリー行列により、可能性の重みを持つ複素数で記述した量子ビットを操作する。

 

 量子コンピュータ(動作が確認されている。)は、アメリカIBMの65量子ビットまで開発されているが、アメリカと中国が激しい勢いで競争を繰り広げている。

 

 世界最速スーパーコンピュータで10000年かかるものが量子コンピュータでは200秒でできることが示された。ただしこれは、役に立つ問題ではないが、量子コンピュータが得意な計算においての結果である。2048ビットの素因数分解を行うには、100万、1憶量子ビットが必要と言われている。これは、量子ビットはノイズに弱いため、これを抑えて、誤り訂正をするために、多くの量子ビットが必要となるためである。

 

 

<量子アニーリングマシン>

 量子コンピュータとは対照的に、たった一つの数学的問題「組み合わせ最適化問題」しか解けません。膨大な組み合わせのなかから、最適な解を見つけだす。例えばカーナビが最短経路を表示するなどが、組み合わせ最適化の応用例です。

 

 すでに商用化されており、カナダのベンチャー企業、D-Wave Systemがすでに量子アニーリングマシンを商用化しており、日本の企業では、NECが基盤技術の開発を進めている。すでに5000量子ビット規模のものがD-Wave Systemから、製品として数十億円で売られている。我が国においては、産総研が中心となって研究開発を進めている。

 

 2021年7月6日、産総研は超電導量子アニーリングマシンの成果について、プレス発表をした。日本で初めて量子アニーリングマシンをつくったということで、注目されている。

 

→(産総研)独自のアーキテクチャを用いた超伝導量子アニーリングマシンを実現 (aist.go.jp)

 

 

(IRUNIVERSE tetsukoFY)

 

 

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