SONYがサステイナブル紙を作る?「オリジナルブレンドマテリアル」―CEATEC2022
幕張メッセにおいて「CEATEC2022」(10/18~21)が開催されました。様々な企業群が立ち並ぶ中、筆者はディズニーランド?かと見間違うほどの行列ができているSONYのブースへ立ち寄りました。そこで様々なカーボンニュートラルへの取り組みを垣間見たのですが、今回は同社のエレクトリックな視点とはまた別の環境配慮についてご紹介します。
産地を選定した竹・さとうきび・市場回収リサイクル紙のみを原料にした環境に配慮した素材「オリジナルブレンドマテリアル」を開発し現在SONY製品のパッケージに使用しています。
(100%「オリジナルブレンドマテリアル」でできた台)
そしてなんと今回のブースのテーブル、仕切りカーテン、ソニーのロゴ、など金属以外の全てにこちらの「オリジナルブレンドマテリアル」を使用しているとのことでした。
素材循環をどうするかという課題で発案
紙を作って販売したい。ということではなく「素材循環を起こすにはどうすればいいか?」という視点の下につくられたものだとデザイナーの廣瀬賢一氏は教えてくださいました。
捨てるか、再生に回すかというのは消費者に委ねられてしまうことなので、企業側が達成できない部分であった。そこで、消費者がどうやったら行動変異を起こせるかということに着目し発案がスタートしたとのこと。
(ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンターの廣瀬賢一氏。
後ろに見えているブースを仕切る素材も「オリジナルブレンドマテリアル」です。)
ストーリーを伝えることで当事者意識を持つ
産地を選定して公開しているが、それは消費者が知ることで材料に興味を持ち、当事者意識が芽生えるようにするためです。また、今回の材料構成としてサトウキビと竹を選んだのは私たちの生活にリンクしているからです。サトウキビは普段食べているお砂糖の製造過程の搾りかすを使用しています。また、竹は中国・貴州の3つの山で栽培しているものに限定し、こちらに選定した理由は生物が竹に依存して進化している昔からある場所で、人間が入って竹を伐採しても自然と共生されているためです。
通常サトウキビの成長サイクルは1年、竹は2年から3年。せいぜい1年から3年しかない自然の成長サイクルを、紙やパッケージを作り素材循環させることで、5年、10年使い続けることができる。自然で分解されるよりも長く使えることが環境にやさしいという考えです。
製紙業界のタブー!?紙の色が均一でない。しかし混ざりもの感も演出
3つの原料以外無添加で作られているのですが、そのうちの市場回収リサイクル紙は季節によって色が変わります。たとえば、中国ではお正月では広告がたくさん入るため真っ赤になり、日本では白っぽくなるそうです。パッケージ、色などの添加物がないため、色の均一性が保てないが、混ざりもの感も演出であると廣瀬氏は言います。
「色が安定せず季節によって変わり、人間の生活にリンクした色になる。そのことで消費者が当事者意識を持つきっかけになる。汎用性を重視しあえて色ブレしていい紙を作った。
もともとは商社から紙を買っていたが、今回起案、材料収集から選定、最終デザインを一貫してやっていることは稀有な例かもしれない。通常色のブレが起こることは企業では許されないことだし、実際に製紙会社さんからは非常識だという意見も出た。作る側ではなく、“伝える側”と一歩視点を変えることでオリジナルブレンドマテリアルはできました。」
同じ考えのサプライヤーを探していきたい
同紙は世界中の紙を再生しているインフラでどこでも作れます。商売をするつもりで作られた紙ではないためソニーが囲い込む必要がなく、あくまで社会貢献です。これからは、コンセプトを正しく理解してくださるサプライヤーを増やしていきたい。そのために、ノウハウ、ブレンドレシピの提供、ロゴの使用を認め協業していく人をさがしています。
IRUniverse田中の質問:
ロゴの使用を認めるための加盟金や手数料などはかかるのでしょうか?
廣瀬氏:
現状紙の販売をさせてくださいという会社さんもいらっしゃいます。
ですが商売が発端でできたものではなく、あくまでコンセプトは社会貢献です。ニセモノが出回ることを防ぐことや品質を保つ必要はあるので、そのあたりをどうするかは検討中ですね。
サステナビリティは現在様々な企業で叫ばれているメッセージですが、消費者の行動変容を意識した発案、そして世界的な総合電機メーカーである同社が、エレクトリックな観点ではないアプローチに取り組まれていることが非常にフレッシュに感じました。今後も注目していきたいと思います。
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田中鮎子(Ayuko Tanaka)
将棋と旅行とYoutube動画作成が趣味。ちなみに将棋で好きな戦法は居飛車穴熊です。自動車販売店に勤めていたことのあり、自動車のEV化、電池業界と世界のカーボンニュートラル、ガイア理論に大変興味をもっています。
全く人見知りしないことが取り柄で新しい知識を学ぶことやたくさんの人と出会うことが好きです。
ハーブティーとチョコレートが最高のリラックスアイテム。
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