日本製鉄とJFE HDの今下期業績見通しに対する説明の違い
11月1日に日本製鉄が、11月4日にJFE HDが、それぞれ23/3期の上期の決算を発表し、決算説明会を開催した。今上期の外部環境に大きな違いは無いが、今下期の業績見通しに対して両社で説明の違いがはっきり表れた。
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⇒「JFE HD:23/3上期決算を受けて、ウエブで説明会を開催①」
鋼材の販売方法は、大きく分けて「店売り」と「紐付き」があり、今回ポイントとなるのは「紐付き」になる。紐付き価格とは鉄鋼メーカーとユーザーの間で直接価格交渉をして価格を決める取引のことで、この時の価格は、原料価格や国際価格、需給バランスなどを考慮して決められる。市況相場や在庫状況によって価格が変動する店売りに比べ、紐付きは鋼材の価格変動が抑えられる傾向になるのが特徴。
紐付き価格は、年に数回の価格交渉によって決まるが、従来は鋼材を出荷しなら価格交渉を行い、決まった時点で遡る、いわゆる後決め方式が主流であった。このため、昨今のように原材料価格が急騰した際などは、価格に反映されにくいことが多く、常に鉄鋼メーカーが、こうしたコストアップを一時負担し、後から価格転嫁して取り戻すことを行ってきた経緯があった。
こうした古い取引を変えたのが日本製鉄である。同社は紐付き価格の先決めを導入し、今回の初の決算説明会を開催した。このため、日本製鉄の説明会では、下期の鋼材価格について先決めによって決まっているため、何度も値段が決まっているとの説明が繰り返され、先決めで決まった価格分を加味した下期の業績見通しを発表した。一方の、JFE HDの説明会では価格交渉中であるとして、価格転嫁に注力するとして、充分な価格転嫁を織り込めず、従来同様の歯切れの悪い説明にとどまった。
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日本製鉄は今1Qの決算説明で、コスト構造が変わり、従来の固定費削減によるコスト改善では吸収しきれないとし、変動費削減には、製品価格への転嫁しかないと説明。これを受けて、足元の収益改善および中⻑期的成⻑に向けた取り組みとして、「紐付き価格改善」「紐付き契約商慣⾏⾒直し」などを掲げて遂行してきた。今2Qの決算説明会では、「出荷の過半を占める紐付分野での適正マージンの確保と注⽂構成高度化を着実に実現し2022下期には過去2年間で年率約3,000億円となるマージン改善を目指す」といった力強い説明があった。
●紐付き契約商慣習⾒直し
出所:会社発表資料よりIRU作成
(IRuniverse 井上 康)
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