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マクセル株式会社:次世代の製品を手掛ける企業努力の成果

 11月25日、東京都港区のマクセル株式会社本社にて現在開発中の技術についてのインタビューを行えた。

今回の記事では同社が今後の事業の一つとする全固体電池について紹介する。

 

 

 当日は、品川本社へ記者が訪問、さらに京都とオンラインでつなぎ、2023年のBatterySummitでもご講演いただく新事業統括本部 電池イノベーション部 副技師長である工学博士 片山秀昭氏にインタビューにお答えいただいた。

 

 関連サイト→お申込み受付開始!BatterySummit2023 at Hilton TOKYO 1/30-31開催

https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=54289

 

 

 

リチウムイオン電池の普及とそれに伴う課題

 

 昨今小型のモバイル機器から大型のモビリティに至るまで、様々な環境で活躍している電池ががリチウムイオン電池である。

これはある程度の出力、耐久性、くり返し使える充電能力、現在では比較的安価で調達が効くコスト面のお手軽さと色々な点で融通が効く製品となっている。

古くは携帯電話等の小型の機器を中心に使われている同製品は、今では電気自動車というモビリティの変革にも携わる所にまで種類を増やしている。

そんなリチウムイオン電池ではあるが、幾つかの問題点を抱えている。

 

 一つは電池としての危険性も持っている所だ。

リチウムイオン電池に使用されているセパレータは、ポリエチレンという材料が用いられており、安全のために高温になったときにイオンを通さないようになる「シャットダウン」機能を有している。従って、何らかの衝撃や変形で損傷が発生した場合、通常は安全に電池が使えなくなるが、何らかの理由で、更に温度が上昇した場合には、セパレータが破損し、火災が発生する。

これは極端な衝撃を加えなくとも、ポケットに入れて座ってしまったり冬場では携帯カイロと同じポケットに入れてしまったり、あるいは熱が籠もった布団やタオルの側に置くだけでも発生するリスクが存在する。

また発生する火災も火花が発生したり高温になったりする為に搭載機器を焦がしたり、ゴミ収集車の中での発火では収集設備を焼損させる程の規模になる。

 

 もう一つは環境に対する適応力の不足である。

リチウムイオン電池は様々な環境で動作するが、その動作に適切な温度の幅は意外と狭く理想的な範囲は16度~25度とされている。

推奨範囲は0~35度の範囲内であり、それを下回ったり上回ったりする環境ではその性能が目に見えて劣化する事になる。

 

 更に本体の寿命の短さが3つ目の問題となっている。

普段から充電を行いやすい環境で使用されているリチウムイオン電池搭載デバイスではあまり縁のない話ではあるものの、高温になる工業プラント等のセンサーや山岳地に設置されている観測機器等アクセスが困難な所にもリチウムイオン電池は使用されている。

そしてそういった所に設営された機器に対して、定期的に電池を交換しなくてはならないデバイスを設置するのは交換の際のリスクやコストを含めて長期的な目線で見れば現実的ではない。

 

 こういったリチウムイオン電池の問題点を解消するソリューションの全固体電池について、マクセル株式会社所属の工学博士である片山 秀昭氏に解説を頂いた。

 

 

全固体電池の可能性と今後の展開

 

 マクセル株式会社は東京都港区と京都府乙訓郡に本社を構える企業である。

乾電池や磁気テープ、光学部品に健康・医療分野といった様々な製品に事業展開を行ってきた実績をもつ日本の電機メーカーとしてその名が知られている。

そんな同社が今技術力を結集させているのが「全固体電池」である。

 

 

 この全固体電池はリチウムイオン電池の様な電解液を含む電池とは違い、その名の通り中身も全て固体の物質で構成されている。

正極と負極の集電体の間の活物質としてこれまで電解液を用いていた所を固体の電解質としている事がその大きな特徴となっている。

アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を使用している小型の全固体電池は、リチウムイオン電池では困難とされる問題点の解決に大きく貢献する可能性が見出されているのだ。

 

 まずその耐久性の高さである。

これまで電解液の液漏れ等が原因で生じる発火が問題とされたリチウムイオン電池と比べ、固体の電解質を用いる全固体電池ではそもそも液漏れが発生せず材料も難燃性の為火災を起こしにくい性質となっている。

次に様々な局面での運用を可能としている高い耐久性能が挙げられる。

現在想定されている充電温度の幅は-20度から105度、放電環境で想定されている温度は-50度から125度とされ、その上で200度の加熱試験に対しても発火や破裂を起こす事が無い。

なお釘刺し試験や80mΩの外部短絡試験でも発火や破裂が発生しないとの事であり、これによりこれまでリチウムイオン電池では耐えきれない低温や高温の環境下においても機器への搭載が可能な製品となっている。

 

 極めつけはその長寿命性だ。

通常のリチウムイオン電池では充電回数にも寄るが、常温での使用を前提としても4年~5年でその耐用限界を迎える。

それに比べ全固体電池は環境に応じた劣化が少ないというメリットを備えた上で最低20年、ほぼ変わらない性能を維持したまま稼働する事が可能となっている。

リチウムイオン電池を搭載した機器はリチウムイオン電池そのものが温度変化に弱く、それ故に性能の劣化が想定寿命より早い事を考えればその電池寿命の差は雲泥と言えるだろう。

 

 

 この全固体電池の開発を実現するのが、マクセル株式会社の誇る「アナログコア技術」と呼ばれるものである。

これは混合分散(まぜる)、精密塗布(ぬる)、高精度成形(かためる)というこれまで培ってきた乾電池製造等に携わる技術を指し、そしてそれが総じて非常に高いレベルで実現できている事の証左となる。

全固体電池はその電池全体が「各部が均一な割合で混ざり、かつ固まっていなければ機能しない」という点で実現が非常に困難なソリューションであった。

ほんの少しでも不良な箇所が存在するだけで用を果たさない状態となるため、文字通り混ぜて固める高い技術が前提として必要となってくる。

 

 

 そして、マクセルは 外装にセラミックパッケージを採用することで、コイン形全固体電池の容量や出力特性を維持したまま、さらなる耐熱性と高密閉性を実現したセラミックパッケージ型の全固体電池も開発しており、リフロー実装にも対応している。2023年度には量産を控えているということである。

 

 全固体電池は現在各社が開発している段階であり、マクセル株式会社としては大型の全固体電池の開発ではなくまずは小型の全固体電池の開発を行っていきたいとの事である。

極地の様な環境で用いられるデバイスにおいて現在注目されているソリューションである以上、そこから裾野を広げていく事で様々な製品開発への足がかりを作りたいと語っていた。

 

 

 これから必ず求められるであろう次世代の電池である全固体電池の開発に全力で取り組むマクセル株式会社。同社の今後の技術開発の行方に世界が息を呑んで見守っている事は言うまでもないだろう。

 

 

IRuniverse Ryuji Ichimura

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