鉄スクラップ オンラインセミナー その2 都市型電炉でコンパクトリサイクル
2023年2月28日(火)に開催された、鉄リサイクリング・リサーチ主催による第2回オンラインセミナーでは、千代田鋼鉄工業の坂田基歩社長が登壇した。
千代田鋼鉄工業は、最新の高効率電気炉で、東京都内、又近郊から出てくる老廃スクラップを最大限に活用し、AI、IoT、DXなど、最新技術を駆使し、都市型電炉ならではの、物流や製造過程においてカーボンニュートラルに挑戦している。
坂田社長は、都内に工場を有する唯一の電炉メーカーとして、 「都市型電炉でカーボンニュートラルに挑戦」~老廃鉄スクラップの積極活用で循環型社会の実現~というタイトルで講演された。
その1は下記をご参照ください。
第2回 オンラインセミナー その1 ベトナムの鉄鋼・スクラップ事情 | MIRU (iru-miru.com)
千代田鋼鉄工業では、鉄筋コンクリート用棒鋼を主に製造している。棒鋼事業では都内唯一の電気炉メーカーとして、地元地域から発生する鉄スクラップをリサイクルし、再び地元東京及び首都圏を中心に鉄筋コンクリート用棒鋼として製造販売していく資源循環型社会の構築を社会的使命とし企業活動をしている会社である。
千代田鋼鉄工業の本社及び工場を足立区綾瀬にある。
オンラインセミナーでは2番目に登壇された。
- 千代田鋼鉄工業㈱ 坂田基歩社長 日本時間 15:30-15:55 (25 分)
千代田鋼鉄工業は、都内に工場を有する唯一の電炉メーカーであり、電炉メーカーにとって都市立地は周辺環境への配慮(騒音、匂いなど)や敷地面積の制約、従業員の非定着等のデメリットがある一方、東京都はスクラップ発生源(東京都のみで年間260万トン)であり、且つ、日本最大の需要地(2021年度:関東鉄筋明細投入量256万トン)であり、輸送距離が短い(実績平均52km)ことが最大のメリットであるとした。
千代田鋼鉄工業は地域の老廃スクラップを積極的に活用し再び地域への鉄筋需要に対応することで 原料、副資材納入、製品出荷時における、CO2排出量を10%削減することを目標とした。
地産地消事例として、下記が紹介された。
-新国立競技場:新国立競技場では6万5千トンの鉄鋼が使用された。千代田鉄鋼鋼鉄には、旧国立競技場の解体スクラップを全量ではないが加工処理された後、間接的に千代田鉄鋼工業に納入され、時系列的には異なるが、再び製造された鉄筋4500トンが納入された例。東京五輪における鉄鋼使用量は、新国立競技場を除いて、5万5千トンであったとされたが、内電炉鋼の使用割合は62%であった。
-三井物産ビル:施工鹿島建設 解体スクラップ3万2000トンが解体処理された後、納入された後、鉄筋7500トンを納入。
我が国においては、鉄はリサイクルされることが当然のものであり、日本古来の製鉄である“たたら製鉄時代”には、寺社等の建造物の修復においては、用いられていた鉄釘を支給して、鍛冶屋は至急された鉄釘を再び鍛錬して、鉄釘を納め、手間賃を頂戴していた。
鉄は5回ぐらいリサイクルされているという。自分達の電炉で製造した鉄骨を再び受入れ、再生させて納品する、このようなクローズドループが大切だと思う。
千代田鋼鉄工業では、旋回式電気炉が2021年1年から稼働している。普通鋼電炉業では国内で初の導入となる。アークが飛びにくく、スクラップが溶けづらいコールドスポットに対し、電気炉を横方向に左右させアークが飛びやすいホットスポットへと入れ替えることで、溶解効率をアップさせる機能を持つ高効率電気炉である。都市型電炉にマッチした投資であったと説明された。
これにより、電力削減量 7.3%削減達成。CO2換算:約4,500トン/年削減となった。
旋回式電気炉については、下記MIRU記事で紹介しておりますが、有料サイトですので
サーモテック2022 第8回 国際工業炉・関連機器展 5年ぶりに開催 | MIRU (iru-miru.com)
会員でない方は、ふぇらむをご参照ください。大同特殊鋼提供の図3で説明されている。
熱効率改善、溶解電力及び CO2 発生削減などを図っているかたわら、スクラップの仕入れから製品販売までのサプライチェーンの可視化と、それによる効率の改善やAIによる検収も実施している。検収システムは中国製のものを導入したとのこと。
AI(人工知能)を活用した検収システムにおいては、「入荷された鉄スクラップのデータを記録、蓄積していくことにより、電炉操業に鉄スクラップの入荷データを反映させることで、通電パターンの検証や不良チャージの原因特定ができる。不良を造らないことが一番のCO2の削減策である。トレーサビリティーの確保は鉄スクラップ自体の品質向上にもつながる」と述べた。
さらに、ベテラン職人の操業時の勘・ひらめき。ノウハウを大阪大学が開発した脳型AIシステムに置き換えることで、電気炉操業のAI化の推進も行っている。
3番目に登壇されたのは、浅田代表であった。
- Mysteel Japan Rep 朝田晋平代表 日本時間 15:55-16:20 (25 分)
「2022/2023中国鉄鋼業界レビューと動向 」について講演された。
浅田氏は第1回(今後の中国の電炉技術の予測と、スクラップ供給の予測)も登壇されている。鉄鋼商社で勤務され、現在は、Mysteel 日本の代表を務めておられる。
<2022年の中国の鉄鋼業界のレビュー>
2022暦年の中国の粗鋼生産量は前暦年比2.1%減の10億1,300万トンであった。
上期は冬季オリンピック、北京で開催された全国人民代表大会などの大規模会議のために大気の改善を行い、中国北部多くの鉄鋼メーカーが生産をおとした。また、COVID-19の流行抑制のため、鉄鋼原料や鉄鋼製品の輸送に支障が生じ、第2四半期は一部の製鉄所での生産に影響を及ぼした。
また、下半期においては中国の製鉄所の多くが、利益率の悪化及び鉄鋼需要の減少を受け、メンテナンスや減産を決定し、粗鋼生産量は低い水準で推移した。
中国の製鉄所の利益率は、2022年に大幅に下がり、特に下期は赤字に苦しむ鉄鋼メーカーが増えた。中国鉄鋼協会のデータによると、鉄鋼協会に加盟する鉄鋼メーカーの1-11月の総利益は前年同期72.5 %減の983億元となった。
中国の鉄鋼製品価格は、第2四半期から価格が下がりはじめ、下期は低水準で推移し、国内製鉄所の利益率を圧迫した。22年の鉄筋の全国平均価格は前年比12 %下落した。
22年のほとんどの月の建材の取引数量は二けたの減少となった。全体平均では17.6%減であった。
この背景として、最大の鉄鋼消費分野である中国の不動産市場の主要指標は、2022年に前年比大幅減となり、この分野の鉄鋼需要の弱さを示した。
このような状況下であるが、2022年の中国の自動車生産台数は、下期の業績改善により、前年比3.4 %増の2,702万台となり、増加傾向を維持しており、2022年6月以降、NEV(新エネルギー車)の生産台数は過去最高を更新した。2022年のNEVの総生産台数は前年比97%増の706万台と急増した。
その他として建設関係、造船関係も減少。家電については、下期は少し改善した。
2022年の中国の鉄鋼輸出送料は前年比0.9%増の6,732万トンとなった。この微増はロシアのウクライナ侵攻による鉄鋼製品の供給量の減少を懸念し、海外から発注が急増したことによる。
鉄鋼輸入量は1,057万トンで、前年比25.9%減。
<2023年の中国の鉄鋼業界の動向>
今年に入って、購買担当者景気指数が急激に伸びた。企業活動指数においても建設分野と産業分野が改善してきている。コロナの状況が収束し、規制が緩和され、これら、ポジティブ要素が、不動産の落込みをどれだけカバーするか、皆さまとともに注視し、共有していきたいと、まとめた。
(IRUNIVERSE tetsukoFY)
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