東京精密(7729)23/3期WEB説明会メモ 24/3期半導体設備不振で大幅減益予想
23/3期12.3%増収21.8%営利増で最高益、24/3期12.1%減収30.4%営利減予想
株価5530円(5/17) 時価総額2317億円 発行済株41903千株
PER(24/3DO予:12.8X)PBR(1.55X)配当(24/3予)170円 配当利回り:3.1%
要約
・23/3期12.3%増収21.8%営利増と計画上振れして最高益更新、受注は26.7%減
・四半期で23/3Q4は9.7%増収22.8%営利増で23/3Q2を抜き過去最高収益も受注39%減
・24/3期は半導体設備投資急減影響で12.1%減収30.4%営利減予想、下期に受注回復見込む
・新中計予想を堅持、先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円目指す
23/3期12.3%増収21.8%営利増と計画上振れして最高益更新、受注は26.7%減
23/3期決算が5/12に開示され、同日WEB説明会が実施された。23/3期は売上高1468億円(11/2修正予想比18億円増額、12.3%増)、営利345億円(同45億円増額、21.8%増)、受注高1363億円(11/2予想比65億円減額、2/6修正予想比2億円減額、26.7%減)、受注残高1018億円(9.3%減)と、11/2修正予想に対し上振れて着地した。収益全てで2期連続最高額更新となった。また受注、受注残高が前期比減少しているが、一部民生中心に減速傾向が続いているため受注残高の一部20億円を取消した影響もあるが、それでも前期に次ぐ過去2番目の高水準となっている。
セグメント別では半導体製造装置事業が売上高1124億円(2/2計画比14億円増額、11%増)、営利299億円(21%増)、受注994億円(2/2予想比9億円増額、35%減)、受注残高894億円(12.7%減)となった。受注ではスマホ、PC、民生機器の需要減からメモリデバイス、ディスプレイドライバ、電子部品向け装置需要が減退、前期比減に。一方、SiCなどのパワーデバイス、ウエハ増産向け装置需要は堅調に推移した。現在受注に占めるパワー半導体向け受注は全体の20%程度となっており、その約半分がSiC等の化合物半導体となっているとのこと。売上面では従来積み上がった5G、サーバー、車載向けなどのロジックデバイス向け装置が計画通りの売上となり順調に売上増を確保した。
なお売上でのパワーデバイス向けは25%を占め、またそのうちの半分がSiC等の化合物半導向けで占められているとのこと。装置別ではプローバがメモリの不振を受けて大きく受注が減少、受注に占めるウエイトが60%半ばから50%後半に後退、一方で加工装置はエッジグラインダなどパワー半導体向けやウエハダイシングなどの好調で受注構成比が30%半ばから40%前半に高まり、ほぼ受注金額として横ばいを確保した模様。売上ではプローバ、加工装置の構成比におおよその変化がなく、プローバ60%前半、加工装置30%後半となっており、受注残高の消化が順調に進んだとのこと。但し現在でも300mm対応プローバでは平均納期が6~10ヶ月、200mm向けはパワー系なども多く10ヶ月、一方でダイサは適正納期3ヶ月で納入できているとのこと。
売上の地域別動向では最大地域のアジア向けの伸びが大きく、とりわけ中国向けはパワー半導体向けが伸長、背景にはEV生産拡大のための設備増強が続いているため。
利益面では増収効果、工場の生産効率アップなどで部材価格の上昇などがあるものの、リ利益率がアップした。
計測器事業は売上高344億円(計画比4億円増額、17%増)、営業利益46億円(28%増)、受注370億円(同10億円未達、11%増)と好調に推移、売上、受注ともに過去最高額更新となった。全体として国内設備の回復が寄与、自動車向けは半導体不足などで回復は緩やかも、新規分野として半導体製造装置等の機械用途、医療、ロボットなどの新規分野開拓も寄与している。また今回から製品別区分を汎用計測(三次元測定機等)、自動計測(センサ・ゲージ等)に加え、充放電試験システムを分離したが、同分野も受注に寄与している。
なお製品構成比は売上では汎用60%前半、自動計測30%後半前半に変化なし、受注では汎用が60%後半から60%前半へ下落、伸び率が小さかったが、自動計測が半導体素子製造プロセスで用いられる各種部材の表面粗さ、平坦度検査などで需要が拡大し30%から30%前半にシェアアップ、また充放電試験が3倍弱の受注増となった模様。ユーザー分類では全体の半分弱を占めるICE向けは回復がゆるやかも更新需要などを取込み10%程度の伸び、全体の1/3を占める機械向けは設備投資の回復で20%弱の伸びに。また半導体向けは10%弱を占めるが、非接触計測機器やソリューション展開などで20%を超える伸び、比率は2%程度と低いが、充放電・電池評価サービスなどはフル操業状況が続いている模様。利益面では増収効果に加えMIX良化もあり利益率が向上(但し過去ピーク比ではまだ7%以上低い)している。
四半期で23/3Q4は9.7%増収22.8%営利増で23/3Q2を抜き過去最高収益も受注39%減
四半期推移では23/3Q4で売上高437億円(同期比15%増)、営利114億円(24%増)と四半期として23/3Q2を抜いて過去最高額更新となった。但し受注額は260億円(同期比39%減、前四半期比14%減)とQ1から減速が続いている。
セグメント別では半導体製造装置半導体部門では売上で納期調整要請はあるが、前倒し案件のスロット調整で保管できており売上は計画を確保、受注は民生向け中心に不振でパワー向け等で補えきれない。計測機器は出荷、検収が計画通りに進展、利益も伸長した。受注は内需でものづくり需要を獲得も、半導体向け等停滞し一服状況に。
24/3期は半導体設備投資急減影響で12.1%減収30.4%営利減予想、下期に受注回復見込む
24/3期会社予想は売上高1290億(12.1%減)、営利240億円(30.4%減)、経常利益240億円(32.0%減)予想と、今後の半導体市場拡大を睨んだ設備投資実行継続の中で半導体設備投資急減影響を受けて大幅な収益低迷予想となった。
事業別では半導体事業が売上高940億円(16%減)、上期について440億円(同期比、前期比23%減)、下期を500億円(同12%減、同14%増)予想。現状、メモリ生産の大幅減でプローバの不振が大きく影響する見通し。受注予想は上期のみで370億円程度(同期比33%減、前期比3%減)想定に。下期もまだメモリ向けの不調が長引き、加工装置がボトムも、本格回復は25/3期の見通しに。利益予想はないが、減収効果、設備増強、人件費増などもあり、減益幅が大きくなろう。
計測部門は売上高350億円(2%増)予想。上期が170億円(同期比8%増、前期比10%減)、下期180億円(同4%減、同6%増)予想。受注は上期190億円(同横ばい)予想。自動車が内燃機関車も回復が見込まれ、加えてEV進展で関連装置の拡大が見込め、ICEの落ち込みをカバーし横ばい予想に。利益の開示はないが、ほぼ横ばい確保しよう。
全体として会社予想並みの状況が想定されるが、為替前提が1$=130円予想で、多少の上乗せが見込まれる。
新中計予想を堅持、先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円目指す
会社側では昨年開示した2022-2024年度中期経営計画は変更せず、定量目標として2024年度に売上高1700億円(半導体1320億円、計測380億円)、営業利益375億円(営業利益率22%)を維持した。
事業別戦略では半導体事業は24/3期下期からの回復を見据え、検査装置では高付加価値分野、デパート化を目指す。現状、落ち込みが大きいものの、プローバにおいてはハイエンドロジック、メモリにおいてデバイスの変革が起こっているとしている。特にデバイスが大きな発熱を生じ、従来の様なチラーコントロールでは100Wレベルしか対応できず、温度を一定に保つための吸熱機能が必要で、実際に2000Wの発熱事例などでは同社しか対応できないとのこと。同社は独自の吸熱材料であるマイクロセルウレタンフォームを開発、非常に小さな空気穴で構成され、空気穴は熱を吸収し、マイクロセルウレタンフォームを冷却する方式。
加工装置ではSiC向けの拡大、アブレーションダイサ投入、化合物半導体向けグラインダの強化拡大を見込む。アブレーションダイシングはレーザーを使用してウエハ表面を蒸発させる方法で、従来のブレードダイシングよりも高精度の切断が可能でしかも高速、さらにウエハ表面の破損がなくクリーンなため、先端デバイスでの生産において歩留まり、生産性向上が可能となる。ディスコが先行しているが、同社は精密、高剛性などで差別化を図る。次に化合物半導体についてはSiと比較して難作材であり、グラインダ加工時間が数倍かかるとのことで、台数の拡大とともに消耗品売上も急拡大が見込める。同社は難作材加工ではディスコに対し優位性を持っており、消耗品ビジネスを含め、収益性の向上も期待される。また装置内に計測を組み込む計測ビルトインモデルの投入拡大も行う計画で、製造装置、計測装置の両事業を有する唯一の半導体製造装置メーカーとしての差別化で高付加価値化を目指す。
計測事業は内燃機関向けの減退が続く中でNEVでのEVギア・モータ等の部品物理計測、充放電電池評価の拡大などで売上大幅拡大を見込むほか、半導体向けでは非接触計測機器、ソリューション展開の拡大などを目指す。ICE向けは回復が緩慢見通しも、自動化、保守点検拡大などで安定的な収益確保を目指す方針。
全体を通じ、半導体、NEV、医療など、高精度化ニーズに適応できる同社の強味が発揮できる状況にあり、24/3期下期からの半導体部門の受注回復、25/3期の急回復見通しの中でも受注減影響から中計目標達成は多少難しいと判断するが、大きな減額とはならないと見られる。株価は収益悪化を受け下落、但し現状、24/3期会社予想EPS422円に対し、PER13倍は東京エレクトロン27倍、ディスココンセンサス21倍に対し割高感はなく、悪材料を織込んだとみられ再度2021年の高値を抜いて上昇トレンドが続くと期待される。
(H.Mirai)
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