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副社長(母)の死をのりこえて「リサイクル事業のさらなる高み」へ 三重・タカミ

 日本の田舎の原風景といえそうな景観に恵まれた三重県伊賀市で事業を展開するリサイクル企業、株式会社タカミは、世界を見据えながら(global)、地域に根差した(local)、グローカル(glocal)な事業展開を進める。舵取りをする高見尚吾社長(43)は、かけがえのない支えであった母の高見絹子副社長が2023年4月に急逝する(享年69)という不幸をのりこえて、果敢に「新たな資源をつくるリサイクル事業のさらなる高み」へと歩みを進めている。

 

 同社は昭和15(1940)年の創業。初代が三重県上野市茅町に高見操商店を創業して80年の老舗だ。ポリシーは「資源を作る仕事、資源を作る会社」。今でこそ〝常識〟になった「循環型社会・ゼロエミッション」を先取りする形で1980年ごろから資源のリサイクル事業を中心に商いを行ってきた。さらに同社の最近のパンフレットにはSDGs(持続可能な開発目標)の9項目が行動宣言として掲げられている(下図参照)。いわく「株式会社タカミでは金属や古紙、プラスチック等の資源物のリサイクルを通じて、循環型社会の形成に寄与するような3R活動(リユース・リデュース・リサイクル)を推進します。また、環境に配慮した機械、重機、車両等の積極的な導入によりCO2削減にも取組み、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた活動を続けてまいります」。これはまさに、初代から2代、3代へと受け継がれた「グローカルDNA」の証といえるであろう。

 

 

 上の宣言の「環境に配慮した機械、重機、車両等の積極的な導入」の具体例のひとつが、2023年1月から稼働したモリタ製で1250トンの「ハイブリッドニューギロ」だ。モリタの資料によると、サーボモーターの採用により切断スピードはそのままに従来機と同等のスビートで約30%の消費電力を削減できる。さらにスピードに加え、環境負荷の低減をも追及した油圧システムは、発熱量の抑制、地球環境への放熱熱量の低減、作動油の長寿命化 などを実現。アイドリングストップシステムにより、機械待機時の騒音、振動も大幅に低減しているという。

 

「ハイブリッドニューギロ」の説明をする高見社長(左)。右はIRuniverse棚町裕次社長

 

 高見社長は「ここのところ電気代の値上がりはすごいものがあるけれど、このニューギロについていえば、電気代が上がっていないんです。省エネ性能を実感しました」と話す。導入に当たっては、広い本社敷地(約1万坪=33000㎡)のメリットをいかして、メンテナンスをしやすいように機械室を広くとったり、高さを低く抑えたりするなど、「タカミモデル」とでもいえそうなほどモリタ側と設置仕様をすり合わせたそうだ。

 

 同社の扱い量は鉄、非鉄合わせて4000~5000トン/月。非鉄のなかではアルミが多い。銅線の8割は自社でむいてピカ線にしている。工業雑品系(配電盤など)も、そのまま雑品業者に売るのではなく、現場で精緻な解体を施している。引き取りが多いため、自社トラックを今は30台保有している。社員は13人だが、1人が特定の1台を受け持つということではなく重機も扱うなどの現場作業もこなして効率よく回しているという。岐阜や大阪、京都など近畿一円が行動範囲だ。

 

 そんなグローカルな会社を、先代社長の高見景三会長とともに30年にわたって副社長として切り盛りしてきた尚吾社長の母・絹子さんが4月に心不全で急逝した。社員からもお得意様からも慕われる明るい性格だった絹子さんの死去はこの上ない喪失だが、会社はそれをのりこえて「高み」を目指して日々の仕事に邁進している。

 

 20年来の付き合いがある鉄・非鉄金属スクラップのリサイクラー、Eザック株式会社(大阪市住之江区平林南2丁目)の桐野大輔社長(48)は、「癒しもエネルギーもくれるパワースポット的な人やった」と振り返る。仕事や人付き合いで落ち込んだときに訪ねると親身に話を聞いて「そんなん、大丈夫やん」と励ましてもらった。暗い気持ちで三重に行き、明るくなって大阪に帰ったという。好奇心も旺盛で北極圏にオーロラを見に行ったりアジア各地を旅したり。知見も知力もすごかったと桐野社長。「三重から戻って1ヶ月もしたらまた話を聞きに行きたくなる人でした。残念です」と、早すぎる逝去を悔やんだ。

 

 事務所の入り口には、スクラップからよみがえったフィギュアが多数飾られている。高見社長がベトナムなどから買ってきたものといい、パンフレット(下)にも1体がシンボル的に使われている。スクラップの山のてっぺんに立って右手を掲げているその姿は、「リサイクル事業の、さらなる高みへ。」と宣言しているように見えた。

 

(IRuniverse 阿部治樹)

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