オルタナティブ経営で脱炭素時代を駆け抜ける―― 合同会社オフィス西田の西田純氏

MIRUの連載シリーズ「脱炭素の部屋」を寄稿する合同会社オフィス西田のチーフコンサルタント西田純氏。脱炭素時代に生きる現代企業、とりわけ静脈産業の経営者に、そんな西田氏はいま「オルタナティブ経営」の必要性を説く。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と、成長のための対案の構築と実践が、その真髄だという。オルタナティブ経営とは何か、核心に迫ってみた。
改革の原動力は現場にあり。そこにこだわりを持つ徹底した実践派のコンサルタントである。静脈産業とかかわりを深めることになったきっかけは、教鞭をとる高専での学生インターンシップ活動に関連してだったという。受け入れ企業に第一に提案したのは、3人一組の学生らとの共同研究だった。チームで臨ませ尻込みしがちな学生たちから自由な発想を引き出すとともに、裸の現場を外部に見せる勇気を持つよう企業に迫った。組織に化学反応を引き起こす西田氏流の知恵だ。
力を入れている活動(ガクチカ)を詳細に書き込んだエントリーシートを提出、面接に臨み、パスすれば決められた研修コースを消化して終わる型通りの“プレ就職活動”のイメージは、そこにはない。それがきっかけになってこの件では、デジタル技術を活用した廃棄物の選別技術に関する特許出願の道が開けたという。「問題意識×現場体験=人財育成」も、オルタナティブ経営の実践ポイントの一つである。
「15年ぐらいのスパンでキャリア形成を手助けするぐらいの発想が大切」。早期退職に拍車がかかる新卒社員対策に頭を悩ます企業関係者には、そうアドバイスする。
静脈産業がもてはやされるいまの時代を見つめるその視線も、西田氏流だ。「循環経済、SDGsの源を辿れば、1972年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議にたどり着く」。2015年のパリ協定でもなく、1997年の京都議定書、1992年のリオ宣言でもなく、半世紀の時空を遡る。改めて、その時出された「人間環境宣言」を紐解いてみると、確かにそこには、いま持ち出しても全く時間の経過を感じさせない文言が並んでいる。
宣言で「原則」として掲げられた項目には、「再生可能な重要な資源を生み出す地球の能力は維持され、可能な限り、回復又は向上されなければならない」とする「再生可能な資源」をはじめ、「海洋汚染の防止」「開発の促進と援助」など、どれを見てもいまCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の場などで議論されているホットなテーマばかりである。2050年を見据えたカーボンニュートラルへの挑戦も、連綿と続くその一コマであり、自然な帰結ということか。時代に流されず、いま起きている事象の本質をつかみ取り、適切な対応をとる大切さを説いているのだろう。
推薦しているというLCA計算のアプリも見た。データを打ち込んでいくと排出するCO2量を特定でき、出来上がったデータベースを基に第三者認証への申請手続きも織り込まれているという。ここでも敢えて人手を介するメニューを揃えて、人財育成につながる実践道場を設けた。現場主義を追求する西田氏のこだわりである。「その分析結果から貴重な未利用資源があることが分かった」ケースも出ているという。
カーボンプライシング制度や、脱炭素社会に必要な技術開発への投資支援などを定めたGX推進法も施行になり、静脈産業に追い風が吹く。それをどう活用して同産業に散見される下請け的構造からの脱却や、業務の効率化、そして最大の成長原資になる人財の育成を進めていくのか。上手に成長シナリオが描ければ、「動脈産業の大手企業にも負けません」。西田氏の次の実践の場がどこになるのか、次回はその現場を見る機会を得られればと思う。
西田氏は、7月21日(金)13:30~17:00 CBRSフォーラムで『SDGsで「増客」5大戦略セミナー』と題した講演会を行う。興味のある方はぜひ!!
リンク先:https://officenishida.biz/business-seminar/
(IRuniverse G・Mochizuki)
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