Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.73最近の中古車輸出のデータから(3) 貿易統計上の単価の上昇
前回は(Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.72 最近の中古車輸出のデータから(2) 少額貨物の減少の可能性)中古車輸出台数に関する2つの統計の比較から、2022年に少額貨物が減っている可能性に言及した。一方、貿易統計で提供されるデータは、金額と台数があり、これを用いて単価を出すことができる。今回はそれにより中古車輸出の単価が上昇している様子と少額貨物の減少の可能性を確認したい。
まず、単純に貿易統計上の各月の中古車輸出の合計金額を合計台数で割った単価の推移を図1に示す。これを見ると、単価は2020年5月の42.8万円を底として上昇傾向にあり、2022年8月には102.6万円にまで上昇していたことがわかる。直近は84.4万円にまで下降したが、2019年、2020年の水準と比べるとまだ高い。
図 1 中古車輸出の平均単価の月別推移(単位:千円)
出典:財務省貿易統計より作成
バス、乗用車、貨物車の中古車輸出の合計金額を合計台数で割ったもの
十分に想定できるように、上記の単価は品目(車種、排気量)、仕向地により変わる。そのため、品目、仕向地が変わったことで単価が上昇したという見方もできなくはない。また、これは高額の自動車を含む、全ての車種、排気量、仕向地の平均単価の上昇傾向であって、少額貨物が減少した根拠としては物足りない。
そもそも少額貨物は貿易統計に載らないため、それを示すことは不可能なのだが、それに近いものを出すことはできないだろうか。
図2は2018年~2022年の各年において、「品目・仕向地」の組み合わせごとに単価を算出し、各年の中古車輸出台数を単価別(「20万円以下」「20万円超50万円以下」「50万円超100万円以下」「100万円超」)に分けて並べたものである。これを見ると、2020年を除いて合計で大きな変動はないが、構成が異なることがわかる。具体的には20万円以下の数量が2021年、2022年になって減少している。また、2022年は20万円以下の減少とともに100万円超が増えており、全体的に単価が上昇している様子が窺える。
図3は、各単価の数量(台数)のシェアについて、金額の低い順から累計したものである。これを見ても、2022年は低い金額のシェアが他の年よりも小さいことがわかる。2019年、2020年は、中古車輸出台数の28%、29%が20万円以下だったが、2021年、2022年は20万円以下の割合が17%、5%と低くなっている。
前回も言及したが、貿易統計には少額貨物、すなわち輸出申告書における1品目20万円以下の貨物は含まれない。にもかかわらず、図2、図3では20万円以下の数量が計上されており、不思議に思われるかもしれない。
少額貨物の定義をよく見ると、「1品目」20万円以下であって、「1台」20万円以下ではない。そのため、例えば同じ品目で8万円のものが3台輸出されたとすると「1品目」24万円になり、貿易統計に計上されることになる。それを単価で示すと「1台」20万円以下の数量として表れる。これが単価で1台20万円以下のものが計上される所以である。
前回のレポートでは、輸出抹消・届出台数/貿易統計台数で算出された割合が小さくなっていることを言及した。その要因の1つとして考えられるのが少額貨物の減少である。「1品目」20万円以下の少額貨物の動きは明らかにできないが、図2、図3と同じ傾向であるとすると、2021年、2022年は減少しているということができる。各種メディアで報道されたように、2022年は輸出向けのみならず、中古車全般の価格が上昇したとされる。それが貿易統計でも垣間見られるといえるだろう。
図 2 単価別中古車輸出台数の推移
出典:財務省貿易統計より作成
注:バス、乗用車、貨物車の合計
図 3 各単価における中古車輸出台数の割合の累計
出典:財務省貿易統計より作成
注:その年の中古車輸出台数のうち、該当する単価の台数の割合を算出し、単価の低い順からその割合の累計を示している。横軸は単価(千円)であり、100万円までを示す。
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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