東京精密(7729) 24/3Q1WEB説明会メモ ポジティブからややポジティブに変更
24/3期12.1%減収30.4%営利減予想に変更無く増額期待、25/3期は収益再拡大へ
株8330円(8/4) 時価総額3497億円 発行済株41990千株
PER(24/3DO予:18X)PBR(2.36X)配当(24/3予)170円 配当利回り:2.0%
要約
・24/3Q1は4.7%減収25.3%営利減35.9%受注減も、売上が想定並みも受注は上振れ
・24/3期12.1%減収30.4%営利減予想に変更無く、受注上振れで増額期待
・新中計予想で先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円目指す
24/3Q1は4.7%減収25.3%営利減35.9%受注減も、売上が想定並みも受注は上振れ
24/3Q1決算が8/2に開示され、同日WEB説明会が実施された。24/3Q1は売上高269.18億円(4.7%減)、営利42.50億円(25.3%減)、経常利益47.10億円(27.5%減)、税引利益32.45億円(32.6%減)、受注高295.71億円(35..9%減)、受注残高104.52億円(19.7%減)となった。半導体部門の投資意欲減退から収益が低迷に。
セグメント別では半導体製造装置事業が売上高187.22億円(11.4%減)、営業利益32.08億円(36.5%減)、受注は203.45億円(43.4%減)、受注残高909.44億円(22.4%減)となった。受注ではSiCなどのパワー半導体向け、ウエハ増産向けは堅調も、スマホ、PC等民生の低迷でメモリ、電子部品向けが低調に推移した。但し会社側想定はQ1に150億円を見込んでおり、想定を53億円上回った。これはパワー半導体向け、アナログ半導体向け等が堅調で、受注に占めるパワー半導体受注が全体の20%、またその中でSiC向けが約半分を占めるなど、増加に寄与、加えてウエハ加工向けが堅調だったため。一方でプローバはメモリ需要の低迷で大幅減に。豊富な受注残高の消化が進んだものの、一部で納期調整なども有り、元々Q2に偏る見通し通りの形で、ほぼ社内計画通りの着地に。利益は売上が計画線で利益も想定内とのこと。
計測器事業は売上高78.95億円(16.4%増)、営業利益10.42億円(62.4%増)、受注92.25億円(10.0%減)、受注残137.58億円(2.9%増)となった。受注はEVの開発需要や2次電池用充放電試験装置の需要は堅調も、前Q1に計測機器値上げを控え一時的な駆け込み受注が有りその反動減が大きく減少。加えて新規に半導体製造装置分野で期待も投資手控えもあり、会社計画に対し8億円程度未達成に。売上面は受注残の生産が順調に推移、計画取りの売上に。
利益面では生産増、売上も計画通りで増収効果から利益も前期のロックダウン影響もなく大幅増に。
24/3期12.1%減収30.4%営利減予想に変更無く、受注上振れで増額期待
24/3期会社予想に変更はなく、売上高1290億(12.1%減)、営利240億円(30.4%減)、経常利益240億円(32.0%減)を据え置いた。事業別では半導体事業が売上高940億円(16%減)、上期について440億円(同期比、前期比23%減)、下期を500億円(同12%減、同14%増)予想としている。現状、メモリ生産の大幅減でプローバの不振が大きく影響する見通し。受注予想は上期のみで370億円程度(同期比33%減、前期比3%減)想定としていたが、Q1で203億円と53億円上振れ、Q2もQ1程度の受注が見込まれるとのことで、上期受注上振れが期待される。中身としてはパワー半導体などの増額が主で、プローバは計画通り悪いとのこと。下期はメモリ向けの不調が長引き、加工装置が上期同様の動きになるとみられ、下期は会社計画並みの受注が見込まれ、本格回復は25/3期の見通しに。
計測部門は売上高350億円(2%増)予想。上期が170億円(同期比8%増、前期比10%減)、下期180億円(同4%減、同6%増)予想。受注は上期190億円(同横ばい)予想でQ1が92億円で8億円未達もQ2はバッテリー試験システムなどの増堅調が続く。また自動車の内燃機関車も生産回復から、受注100億円程度が見込まれ、上期としてほぼ計画線の受注が見込まれる。
全体として上期は会社予想並みの収益が想定されるが、受注が上振れしており、為替前提が1$=130円予想で、通期として多少の収益の上振れが期待される。
新中計予想で先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円目指す
会社側では新中計として2024年度に売上高1700億円(半導体1320億円、計測380億円)、営業利益375億円(営業利益率22%)を目指している。
事業別戦略では半導体事業は検査装置では高付加価値分野、デパート化を目指す。事業としては2024年度に1320億円を目指す。プローバにおいてはハイエンドロジック、メモリにおいてはHBM(広帯域幅メモリ)の変革に対し、特に先端デバイスでは発熱が大きな課題。温度を一定に保つために、従来のチラーコントロールでは100Wレベルしか対応できず、並列でチラーを配するか水冷式などの吸熱機能が必要となる。これに対し同社は独自の吸熱材料マイクロセルウレタンフォームを開発、微少な空気穴で構成され、空気穴で熱を吸収し、マイクロセルウレタンフォームを冷却する方式。実際に2000Wの発熱事例などでは同社しか対応できないとのことで、まずはHBMでの採用から本格拡大が期待される。またパワーデバイス向けでは同社のコンタクト技術とテセックの測定技術、幅広いアプリケーションを融合したパワーデバイス測定システムなども拡大が期待される。
加工装置ではSiC向けの拡大、アブレーションダイサ投入、化合物半導体向けグラインダの強化拡大を見込む。アブレーションダイシングはレーザーを使用してウエハ表面を蒸発させる方法で、従来のブレードダイシングよりも高精度の切断が可能でしかも高速、さらにウエハ表面の破損がなくクリーンなため、先端デバイスでの生産において歩留まり、生産性向上が可能となる。ディスコが先行しているが、同社は精密、高剛性などで差別化を図る。化合物半導体についてはSiと比較して難作材であり、グラインダ加工時間が数倍かかり、台数の拡大とともに消耗品売上も急拡大が見込める。同社は300mmSiウエハエッジグラインダ装置ではトップシェアも、シリコンバックグラインダでは18%程度のシェアに止まっているが、難作材加工では機械の剛性でディスコに対し優位性を持っており、この分野では先行、消耗品ビジネスを含め収益性の向上も期待される。また装置内に計測を組み込む計測ビルトインモデルの投入拡大も投入、製造装置、計測装置の両事業を有する唯一の半導体製造装置メーカーとして差別化し高付加価値化を目指す。
計測事業はNEV向けに2次セル電池、150Vまでの高電圧電池モジュールの充放電電池評価の拡大などでトータルサポートシステムを含め、売上大幅拡大を見込む。またEVモーター分野では、キーユニットとなるヘアピンステータなどのスタック工程で3次元測定器での管理が必要なほか、シャフトの真円度、同軸度、同芯度評価でも0.01μクラスの精度を測る3次元測定器や真円度・円筒形状測定器が必要で、同社の超精密測定器の需要拡大が期待される。半導体向けではナノレベルの表面形状を測定する3D白色干渉顕微鏡などが、ウエハ表面形状や静電チャックの外形寸法、表面粗さ計測など、ソリューション展開の拡大などを目指す。ICE向けは回復が緩慢見通しも、自動化、保守点検拡大などで安定的な収益確保を目指すとしている。
全体を通じ、25/3期は半導体事業については24/3Q4からの半導体部門のパワー半導体を中心とする検査装置の拡大加速、300mmウエハグリーンフィールド投資向けの受注残高の売上寄与、加えてプローバの受注回復が見込まれる。また計測装置についてはEV向けを中心に新規分野の拡大が期待され、増収増益が続く見通し。全体として半導体設備投資の回復が遅れているために25/3期中計目標達成は多少難しいと判断するものの、大きな減額とはならないと見られる。株価は24/3期会社予想EPS422円に対し、PER19.7倍は東京エレクトロン33倍、ディスココンセンサス41倍に対し、Q1で会社計画比受注上振れを織込んで年初来高値更新となり、2006年1月の8840円以来の高値となっているものの割高感はない。但し25/3期中計予想に対しては多少未達成となる可能性があり、割安感はあるものの従来のポジティブからややポジティブに変更したい。
9月1日(金)開催 第1回 SEMICON(半導体)サミット in TOKYO
(H.Mirai)
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