岡本工作機械製作所(6125) 24/3Q1期決算メモ ポジティブ継続
24/3期9.8%増収7.2%営利増予想も膨大な受注残で新中計25/3期の前倒し達成期待
株価5530円(8/10) 時価総額360億円 発行済株4718千株
PER24/3期DO予(5.6X)PBR(1.0X)配当(24/3DO予)210円 配当利回り3.8%
要約
・24/3Q1は20.4%増収36.1%営利増も受注41.4%減、受注残高は依然500億円超と高水準
・24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と膨大な受注残で新中計25/3期目標は今期達成予想に
・25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等も加わり収益拡大期待
24/3Q1は20.4%増収36.1%営利増も受注41.4%減、受注残高は依然500億円超と高水準
8/9に24/3Q1決算が発表され、8/10に四半期報告書が開示された。24/3Q1は売上高121.22億円(20.4%増)、営業利益14.69億円(36.1%増)、経常利益15.06億円(30.5)、税引利益9.46億円(13.1%増)、受注95.23億円(41.4%減)、受注残539.82億円(6.6%減)と収益伸長も受注低迷継続となった。
事業別では工作機械事業が売上高65.33億円(5.5%減)営業損失0.07億円(同期比4.36億円悪化し赤字転落)、受注76.03億円(12.2%減)、受注残197.67億円(3.2%増)。今回、工作機械事業の内訳が四半期報告書で初めて開示となり、工作機械が33.30億円(12.9%減)、精密歯車16.46億円(13.1%減)、鋳物5.60億円(32.2%減)、サービス他50.2億円(0.8%減)となっている。また地域別では日本が34.20億円(2.7%増)、アジア15.95億円(23.2%増)、北米9.94億円(23.2%減)などとなっている。受注はEV用モーターコア金型向けが大型平面研削盤は堅調もセラミック業界向けが電子部品などの不振で減少し国内が減少、米国も金利高などで減少、一方で中国はEV向け好調が継続し増加、全体では工業会の19.2%減より健闘したものの減少を余儀なくされた。利益面では受注残の消化が進まず、検収遅れなどの影響もあったと見られ利益低迷に。
半導体関連事業は売上高55.88億円(77.0%増)、営利17.68億円(92.8%増)、受注19.19億円(74.7%減)、受注残342.15億円(11.5%減)。売上面では豊富な受注残高の消化が進み、ファイナルポリシャ(FP)やグラインダが拡大、日本向けでは18.14億円(同期比16.26億円増、9.5倍)と一部300mmウエハのグリーンフィールド投資向けFP売上が計上されたものとみられる。またアジア向けも31.23億円(8.4%増)と引き続き高水準の売上が継続、欧州も6.24億円(同期比6.18億円増)と欧州でも300mmウエハ投資の拡大が寄与した模様。受注は全体の80%を占めるFP受注でグリーンフィールドに関わる大型受注がなかった模様ながら、国内、東アジアの取引先からのFP受注は獲得したとのこと。利益面では高収益のFPの売上寄与でMIX良化から営業利益率が2.6ポイント向上し31.6%まで高まった。
24/3期9.8%増収7.2%営利増予想と膨大な受注残で新中計25/3期目標は今期達成予想に
24/3期会社予想に変更はなく、売上高500億円(9.8%増)、営利60億円(7.2%増)、経常利益59.5億円(7.2%増)、税引利益42億円(4.2%増)を据え置き、これは中期経営計画の25/3期目標値の1年前倒し達成予想となる。部門別売上予想、受注予想などの開示がないが、豊富な受注残を背景に、収益の上乗せが期待される。
工作機械事業の中の工作機械は工業会受注予想で2023年が前年比9.1%減の1兆6000億円としており、実際4~6月は前年同期比19.2%減となっている。同社は工作機械事業として受注が同期比12.2%減(鋳物が大きく減少、歯車もファナック受注が22.6%減であり減少率が大きいとみられる)に止まっており、最低でも業界並みの落ち込みに止まろう。なお岡本工機がロボット向けを中心に歯車需要に対応、新工場では能力が30%アップ、ユーザーはファナックが最大手でファナックのロボットがQ1では売上高で20%増となっており、新工場の本格稼働で受注残の消化が進み売上増の確保が見込まれる。但しファナックのQ1ロボット受注が22.6%減となっており、影響が下期に出てくる懸念から売上高100億円達成は来期以降にずれ込もう。このため同社工作機械事業全体として受注高は前期を下回ろう。なお受注残高が197.67億円あり、EVバッテリーパック製造向けやEVモーター用精密金型向けに超精密大型平面研削盤など、今後部材不足などが緩和されれば納入が順調に進むとみられ工作機械事業の売上は緩やかな増収を確保、利益は下期に回復しよう。
半導体関連装置事業受注は、従来、信越化学とSUMCOの日系2社の設備動向に先行する形で受注が増えていたが、現在は海外向けが5割以上を占める。Q1現在受注残高が342億円あるが、Q1では国内向け売上が18.14億円計上され、いよいよ国内グリーンフィールド向け納入が本格化、24/3下期にはさらに拡大が見込まれ、25/3期まで納入拡大が続くとみられる。昨今の半導体生産、とりわけメモリの不振影響が300mmウエハ需要にも影響を及ぼし、SUMCOなども回復の遅れを認めているが、少なくとも国内グリーンフィールド投資は計画通り、台湾は多少完成時期を後ずれさせるものの、同社売上への影響は軽微と見られる。受注についてはグリーンフィールド投資の大型受注は見込めないものの、中国向けの拡大、パワー半導体向けのグラインダ需要の拡大などで22/3期の半減程度の落ち込みが下限とみられる。
利益面では会社計画に対し、半導体事業の比率向上によるMIX良化、工作機械の下期からの収益性回復などが見込まれ、24/3期も会社計画を上回る利益が見込まれる。
25/3期もグリーンフィールド投資、パワーデバイス向け等が加わり収益拡大期待
300mmグリーンフィールド投資は2023年~2025年にかけ毎年月産40万枚~50万枚の投資が実行されるとみられる。このため同社FPは25/3期にかけて納入が進もう。加えて今後、半導体の2D・3D化による大容量化が進み、デザインルールの微細化、シュリンクによるウエハ需要の停滞要素が薄れ、積層化によるウエハ使用枚数の拡大、貼り合せによるウエハ増加、加えてウエハ薄化ニーズの高まりで、よりFPによる極限の平坦化が求められると見られる。なお7月にSUMCOが2029年に新規供給を始める佐賀新工場に対し経済産業省が750億円の助成を行うことを表明するなど、次なるグリーンフィールド投資を後押しする新たな動きもある。今後、具体化とともに改めてグリーンフィールド投資に対する受注獲得期待も高まってこよう。
さらにパワーデバイスなどの拡大が続く中で、SiC等の化合物半導体ウエハへの投資が活発化するが、こちらもハイパワー化でウエハの薄化が求められ、グラインダ、CMP需要など、難作材加工の製品群の拡大が期待される。このため同社半導体関連装置受注はグリーンフィールド投資が狭間となっても25/3期は24/3期比で増加が見込まれる。また半導体の3D化に伴いSi貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術も実用化(2024年7月までJSTが延長支援)が見込まれる。さらに後工程での異種材料同時研削可能な装置開発平行して行っており、半導体後工程での製造装置分野でも売上拡大が期待され、26/3期には改めて受注が急拡大しよう。
工作機械事業ではEV関連でリチウムイオン電池製造装置向けの長尺超精密平面加工向けやモーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向けに大型超精密門形平面研削盤がさらに拡大見通し。23/3期工作機械だけの受注229.43億円の中でEV関連は15%を占めるが、従来は1%程度でしか無く、急激な拡大を示している。なお2次電池向けやEVモーターコア金型向けなどは納期が1年以上要するものも多く、同部門の売上拡大は25/3期以降に大きく寄与してこよう。また今後伸び率で高い成長が期待出来るのが岡本工機の歯車事業。広島県府中市の府中第2工場が7月より生産を開始、月産15万個の生産能力が加わり、25/3期には歯車生産能力が約3割増となる。このため歯車だけで売上100億円を超え、2ケタ成長が続こう。また歯車は従来、EV向けには提供していない模様で、EV化により歯車の静音化が高まっており、岡本工機の精密歯車へのニーズも本格化する見通し。EV向けが加われば更なる売上拡大もある。このように研削盤を中心に工作機械は業界平均を上回る伸びが見込まれ、加えて歯車ビジネスが急拡大する中で、工作機械事業全体も25/3期以降、収益再拡大が期待される。
全体として25/3期も収益拡大が見込まれ連続最高益更新が見込まれる。現在、株価は24/3期会社予想EPS893.89円に対しPER6.2倍であり、東証スタンダード機械平均PER12.9倍に対し割安であるばかりか、PBRも1.0倍と最高益更新企業として割安感があり、引続きポジティブ継続とする。
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9月1日に弊社主催の第1回半導体サミットinTOKYOが開催されます。
(H.Mirai)
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