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東京港における水素燃料電池換装型荷役機械等の導入促進事業補助金―CNPに向けて

 東京都港湾局は、本年3月に「東京港カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画」を策定し、東京港における脱炭素化に向けた取組を推進している。その一環として、東京港では、コンテナ埠頭において海上コンテナを取り扱う荷役機械の水素エネルギーへの燃料転換を促進するため、「東京港における水素燃料電池換装型荷役機械等の導入促進事業補助金」を実施している。

 

 7月4日に発表された内容によると、この補助金制度は、同港のコンテナ埠頭で使用されている全てのRTG(タイヤ式トランスファークレーン)注1)の動力源を従来のディーゼルエンジンを主としたものから水素燃料電池(FC)に転換 注2)することを目的としている。

 

注1)タイヤ式トランスファクレーン(英語: Rubber-Tired Gantry Crane: RTG)は、規模の大きなコンテナヤードにおいてコンテナの保管、払出、荷繰り等の作業に使用される。構造からは橋形クレーン(Gantry Crane)に分類され、ゴムタイヤにより無軌道路面を走行するラバータイヤ式と鋼製車輪によりレール上を走行するレールマウント式があるが、ラバータイヤ式トランスファクレーンが機動性に優れていることから、国内外において圧倒的に多く採用されている。

 

 一方、レールマウント式トランスファクレーンは、自動運転作業に有効で、自動化ターミナルに採用されている。

 

(出典: 一社)港湾荷役システム協会ホームページ)

 

注2)RTGにおける水素燃料電池(FC)への換装(イメージ)

 

(出典:東京都港湾局ホームページ)

 

 今年度は以下のように合計5社・21台の荷役機械に対して補助されることになり、補助対象の事業者はいずれも東京港内のコンテナ埠頭のオペレーターである以下の港湾荷役事業者で、カッコ内は場所と台数で全てFC換装型RTGを導入する。

 

  • ダイトーコーポレーション(大井コンテナ埠頭、4台)
  • 宇徳(同、3台)
  • ユニエツクスNCT(同、4台)
  • 青海再整備共同企業体(代表企業・山九)(青海コンテナ埠頭、8台)
  • 上組(中央防波堤外側コンテナ埠頭、2台)

 

 この事業は東京港の2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、今年度創設された。FC(水素燃料電池)に換装が可能なRTGや、水素エネルギーで稼働するRTGを導入する費用の2分の1を補助し、上限額は1億円としている。

 

 東京都港湾局は、2023年初頭に東京港のカーボンニュートラルポート(CNP)形成に向け、FC(水素燃料電池)換装型荷役機械の導入を促進するため、2023年度当初予算案に新規事業として関連費用を計上していた。また、公共埠頭での陸電導入 注3)、環境配慮型船舶の導入に関連する費用も計上。その結果、CNP形成などに向けた予算額は、前年度の6千万円から36億円へと大幅増額となった。

 

注3)港湾に停泊中の船舶が必要な電力を、船内ディーゼル発電機を稼働して得られる電力から、陸上にある電力供給設備(陸電設備)から電力を供給するもの。メリットは停泊中の船舶のエンジンを停止でき、二酸化炭素(CO2)排出抑制につながる。世界的にみても陸電設備の導入機運は高まっている。

 

「カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画」

 

「カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画」とは東京港独自のものではなく、国土交通省港湾局が主導する、脱炭素社会の実現に貢献する港湾作りの全国展開の東京版だ。東京以外にも現在、日本全国の50を超える港湾においてCNP協議会或いは港湾脱炭素化推進協議会が立ち上がっており、官民挙げて「2050年カーボンニュートラル」の政府目標の下、港湾に輸入・貯蔵される水素等を活用し、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化等を通じた「カーボンニュートラルポート(CNP)」を形成し、脱炭素社会の実現に貢献していく港湾作りの諸策の検討・実施を行っている。

 

 更に、国土交通省港湾局によると、炭素化の取組状況を客観的に評価できる「CNP認証(コンテナターミナル)」制度案も検討中で、令和5年度にその本格運用に向けた試行が予定されている。その目的は、我が国の港湾が荷主、船社等から選ばれ、ESG投資を呼び込める、競争力のある港湾とすることだ。

 

カーボンニュートラルポートの形成イメージ

 

(出典:国土交通省ホームページ)

 

今後の課題:水素サプライチェーン構築

 

 今後の水素サプライチェーン構築において日本国内で水素を製造するのではなく、海外で製造し日本に輸入することを目指した事業を紹介したい。

 

 技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)は、https://www.hystra.or.jp/ 豪州での褐炭を有効利用し水素を製造、それを川崎重工業が製造した世界初の液体水素運搬船「すいそふろんてぃあ」で日本の神戸港まで輸送・荷役・貯蔵するというCO2フリー水素サプライチェーン構築を目的とした実証実験を行っている。

 

 HySTRAは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、カワサキ、岩谷産業、シェルジャパン、Jパワー、丸紅、エネオス、川崎汽船の7社が参加している。

 

 2022年には世界初の褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で日豪間を海上輸送・荷役する実証試験に成功し、2030年頃の商用化を目指した技術確立、特に貯蔵タンクの大型化等の実証に取り組む企業団体だ。

 

水素社会の実現に向けて

 

 主に燃料電池自動車(FCV)に水素を供給する設備である「水素ステーション」は目下、日本全国で整備中のものを含め150か所以上で設置されているが、港湾における水素ステーションはほとんど設置されていないのが現状。

 

 東京港の今回の例のように、今後の港湾における荷役機器使用のためにまとまった量の水素が必要になると、水素コスト低減化もさることながら、その運搬と充填に関しては、従来の港湾ターミナル内の軽油(ディーゼル)の供給とは違った方法が求められる。水素の運搬と充填に関しては港湾での荷役機械をはじめ、船舶燃料用、鉄道用、建機・重機用においても、その取扱い方法が法規面でも夫々大きく異なるので、それも今後の大きな課題であり、実証試験が官民を挙げて行われており、水素需要拡大による稼働率向上や効率化に取り組んでいる。

 

 参考までに、水素社会の実現に向けた活動を企業横断的、官民協力の下、全国規模で行っている3つの団体を以下に列記する。

 

水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)

 

 水素社会の実現に向けて、さまざまな技術や知見を持つ企業、団体、自治体などが一丸となって課題解決のための議論を行う組織として、2020年12月に88会員で設立される。社会実装プロジェクトの創設や、需要創出、規制緩和への政策提言などを行っており、270会員を超え(2022年3月末現在)、オールジャパンでの活動を行っている。

 

日本水素ステーションネットワーク合同会社(Japan H2 Mobility: JHyM)

 

 水素を活用した社会システムを構築するため、燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle: FCV)の普及に向けた水素供給インフラの整備のため、民間企業において、水素ステーションの整備・運営を行うインフラ事業者、自動車メーカー、金融投資家等が協業して、2018年2月、日本水素ステーションネットワーク合同会社(Japan H2 Mobility: JHyM〈ジェイハイム〉)が設立された。

 

一般社団法人水素供給利用技術協会(HySUT)

 

 水素エネルギーの供給および利用に関する技術開発、調査研究および普及啓発等を総合的に行うことにより、水素の安定的かつ安全な供給の確保を図り、ユーザーの満足度を向上させ、水素エネルギー産業の健全なる発展に寄与することを目的として2016年2月に設立された。エネルギー会社、自動車会社、プラント・エンジニアリング会社、水素ステーション運営会社等が会員となっている。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

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