大林組とトヨタ自動車 CFRPをコンクリート材に再生利用する新技術を開発
大林組とトヨタ自動車は共同で、燃料電池車「MIRAI」の水素タンクに使用されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の端材を、コンクリート補強用短繊維*として再生利用する新技術「リカボクリート™工法」を開発、トヨタ明知工場内の部品置き場床面に初適用した。再生加工したコンクリート補強用短繊維は、同じ目的で従来使われてきたポリプロピレン製短繊維の3分の2の添加量で同等以上の圧縮強度や曲げ靭性を発揮。また、新品の炭素繊維と比べて、CO2排出量を15分の1に、通常の補強鉄筋の使用との比較でも、9分の1にそれぞれ低減できるという。
CFRPは、軽くて強度が高く、耐久性に優れ、水素を燃料とする燃料電池車の水素タンクや航空機、風力発電の風車ブレードなどに利用されている。しかし、CFRPの性能を保ったままで再利用することは難しく、端材として発生したCFRPは電炉で鉄をリサイクルする工程での原料として使用するにとどまり、現状、CFRPが持つ強度を活かした利用ができていない。
「リカボクリート™工法」では、燃料電池車の水素タンクを製造する段階で発生するCFRPの端材に独自の熱加工を施し、適切な長さに裁断。その後コンクリートに添加することで、コンクリートのひび割れ抑制や靭性の向上を実現したという。
「今後、燃料電池車の市場拡大に伴い、水素タンクの製造が増加することを見据え、両社は技術開発を継続し、さまざまなコンクリート構造物への適用を進めていく。2026年度までに製造システムを実装して、将来的に年間3万m³の繊維補強コンクリートへの適用を目標とすることで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進に貢献する」と、2社は将来展望についてコメントしている。
*コンクリートと混ぜることで、靱性(粘り強さ)を高めることができる繊維質の補強材で、繊維の種類は、炭素繊維の他に鋼繊維、有機系繊維(ポリプロピレンやビニロン繊維等)などで、土木や建築分野で多くの使用実績があるという。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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