バナジウム市場近況2024#1 方向感乏しい 中国需要見極め、鉄鋼向けは半年ぶり高値
2024年3月上旬までのバナジウム価格は方向感に乏しい展開が続いている。バナジウムは生産・消費ともに中国が主で、その中国の景気の先行きに不透明感が根強いためだ。2月上旬の春節(旧正月連休中は動きがなく、再開後も取引は鈍い。
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは3月に入り仲値$5.58/lbで推移している。2023年3月の平均価格($8.98)に比べ4割程度安い水準だ。1月の平均価格は$5.58、2月は$5.69で、2か月の平均価格は$5.78だった。2023年秋から節目の$6を下回る推移が続き、本格反発に至っていない。
中国筋の情報によると、春節連休後も中国ではバナジウム合金の取引量がまだ明確ではなく、合金工場は緊急の注文を除いて五酸化バナジウムを購入していない。既に低価格であるためこれ以上価格を引き下げる動きは見られないものの、需要増も期待しにくく、様子見気分が強い。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
一方、鉄鋼向けのフェロパナジウムは強含んでいる。2月29日に仲値$29.025/kgと、2023年9月下旬以来ほぼ半年ぶりの高値に戻した。
2023年は中国の不動産不況に伴う建築用棒鋼の需要低迷を背景に、フェロバナジウム価格は下落してきた。2024年に入りその動きも一巡感が出ている。ただ、2023年3月の平均価格($40.15)に比べると、なお3割弱安い水準にある。
蓄電池の一種で電気自動車(EV)向けに需要があるバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)や、航空機機体向けのチタンバナジウム合金(Ti-6Al-4V)は堅調が見込まれるが、バナジウム市況全体への影響は限られている。
バナジウム価格は過去2年間にわたり低迷が続いている。理由は最大の生産国であり消費国でもある中国の経済停滞で、中でも最大の需要セクターである建築市場が冷え込んでいることだ。また、ロシアのフェロバナジウムの供給が続いていることも遠因にある。ロシア製品に関しては、2023年末に欧州がロシア産フェロチタンの輸入規制を行ったことでフェロチタン相場が上昇しているように、ロシア産フェロバナジウム(といっても原料の鉄鋼スラグがロシア産で合金工場はチェコスロバキアだが・・・)の輸入規制が敷かれれば、マーケットの雰囲気は変わってくる可能性がある。
しかし、中国もロシアも現時点では鉄鋼の減産は全く考えていないようなので、結果的にバナジウム原料である鉄鋼スラグの供給も減ることはなく、やはりバナジウム相場は低位安定が続くと当面は考えるべきだろう。
(IR Universe Kure)
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