リチウム価格、反発は本物か 3ヵ月ぶり高値、先行きの見方分かれる
リチウム価格が反発している。主要指標の炭酸リチウム(99.5%、China)は3月12日に仲値10万8,500元/mtと、2023年12月初旬以来およそ3か月ぶりの高値で推移している。ただ、先行きの上昇継続については関係者の間でも見方が分かれている。
過去6か月間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% China)(RMB/mt)
リチウムは電気自動車(EV)バッテリーの材料としての需要増期待から先行投資が進み、2022年に価格が急騰した経緯がある。2023年はそうした期待が剥落し、価格は前年比8割安と暴落した。2024年に入ってからは在庫調整が進み、ある程度の底入れ感が出てきたことが上昇の大きな背景となっている。
加えて3月に入り、中国でリチウムの主要生産拠点である南部江西省・宜春市で環境面の違反行為を巡って調査が行われているとの報道が浮上した。この騒動は既に収束したものの、中国国内の先物取引所でリチウム価格が一時大幅に跳ね上がるなどリチウムの供給が細るとの懸念を誘った。
関連記事: 24年リチウム市況④ 続伸--中国のリチウム生産拠点で環境査察の報道により一時的に先高観台頭 | MIRU (iru-miru.com)
■生産者は中長期の需要増を期待
こうした状況の中、リチウム価格の先行き見通しは二分している。
まず、特に中長期での強気派は生産者側に多い。ロイター通信は3月9日、中国リチウム大手のガンフォンリチウム(Ganfeng Lithium、贛峰鋰業)のトップが、リチウムの先行きについて「動力電池やエネルギー貯蔵などのメーカーのリチウム需要は、世界的なエネルギー転換の『不可逆的な傾向』の中で成長し続ける」と述べたと伝えた。
また、チリのリチウム生産大手ソシエダ―ド・キミカ・イ・ミネラ(SQM)の幹部らは2月末、決算報告に伴うアナリストらとの電話会見で、「今後3カ月のリチウム価格の安定と、年内の旺盛な需要を見込んでいる」と明らかにしたという。SQMはその後、オーストラリアでのリチウム事業について「積極的な投資拡大」を行うと表明した。
さらに、英豪資源大手のリオ・ティントのトップは、リチウム価格について「EVバッテリー向けなどを支えに力強い需要拡大が続くが、価格は不安定に推移する」との見通しを示したとされる。
■アナリストは短期の上昇にとどまると警戒
一方、慎重派はアナリストに多い。米ブルームバーグ通信の3月12日の報道によると、ブルームバーグNEFではアナリストのアラン・レイ・レスタウロ氏が、「リチウム価格の足元の上昇は中国の騒乱による一時的現象」とし、「供給削減やプロジェクトの減速にもかかわらず、供給が需要を上回るため、持続的な上昇を示す明確なものは何もない」と話した。
また、米ゴールドマン・サックス・グループ・インクは「弱気相場の終わりと解釈されるべきではない」との見方を示したという。UBSグループもリポートで「リチウム市場はバランスを取り戻しつつある」としつつも「急激な上昇は一過性のものになる可能性がある」と強調したとされた。
(IR Universe Kure)
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