半導体の微細化の限界はいつやってくるのか?
半導体の微細化は一体いつまで可能なのだろうか?
多くの人が気になるのは恐らくこのテーマだろう。
現在、世界中で様々な企業が英知を結集して最先端半導体の開発に勤しんでいる。一方で、その微細化にも限界があると言われており、それを回避するべく量子コンピューターという新たなパラダイムに移行する動きも始まっている。
半導体性能が18か月で二倍になるというムーアの法則は既に崩壊しており、このまま半導体微細化は停滞するのだろうか?
今回、石川氏より詳細な解説と独自の分析が紹介された。
そもそも“微細化”とは?
“微細化”とは、営業用やその半導体の世代名を表すもので、その半導体が実際どの程度微細化されているのかを表しているわけではない。
本来この“微細化”にとって代わるはずの用語は「最小寸法」または「線間隔(metal pitch)」となる。「最小寸法」とは回路幅を表す「線間隔」の2分の1を意味する。ちなみに、“微細化”2nmの半導体の線間隔は18nmであり、最小寸法は9nmである。
微細化を進める上での問題点とその解決策
半導体の微細化を進める上で、主に3つの技術的課題がある。トランジスタ構造、リーク電流、露光機だ。
もし、微細化をしたいのであれば、トランジスタをはじめとする半導体素子の寸法を小さくすることが必須で、これにより集積度を向上させ、高性能化や低消費電力化を実現する。しかし、小さくなればなるほど原子間の相互作用である量子効果の影響を受けやすくなり、意図しない電流が発生する。トランジスタ構造の進化の停滞は、すなわち搭載できる半導体素子の数の現状維持を意味する。
しかし、現在多層型の素子が開発されており、imecは既に2036年までのロードマップを公開している。
リーク電流もまた技術的に致命的な問題となりえる。通常、半導体素子は特定の電圧や電流条件下で正確な動作をするように設計されているが、実際の素子では完全に絶縁された状態ではないため、微小な電流が流れることがある。
たとえば、本来オフであるのに、疑似的にオンの挙動を素子がしてしまうことになる。
これを防ぐには絶縁膜の開発が重要となる。絶縁膜の性能が上がるほど、たとえ膜が薄くなってもリーク電流は少なくなる。
最後に露光機の問題だ。露光機は、半導体製造工程においてパターンを半導体ウェハー上に転写するための装置だ。
これが無ければ量産化は程遠い。紫外線(UV)領域の光より、さらに波長が長い極端紫外線(EUV)も使用され始めている。実用レベルに達したとはいえ、EUV露光の光源出力はまだ低く、露光時間が長く生産性が低い状態だ。
このため、チップ製造の工程のうち、性能やコストの要となる工程に絞ってEUV露光が適用されている。現状では最もこの分野が微細化に向けての足かせとなっている。
総論
複数の研究所や企業の情報を基にした結果、石川講師曰く「微細化は2050年までは可能」とのことだった。
具体的には、シリコン(Si)原子間距離である0.3nmの10倍である3nmまでだ。これは、安全率、加工精度を基準としている。
しかし、これは量産までを視野にいれているのではない。微細化と比較すると露光機等の半導体製造装置の進化は遅れている。
少なくとも2020年代において半導体産業は世界で経済市場を牽引する存在となり、自動車産業を追い抜き、30年代終盤には350兆円規模になると予測される。
AIの進歩・導入による需要は市場でますます増加している。半導体産業界がそれに対してどのような答えを示していくのか注意深く見つめる必要があるだろう。
本オンラインコンテンツはベイリンクス株式会社様より石川氏を講師としてお招きして、3か月に一度程度開催されている。
Yuta.I/記者
慶應義塾大学学士課程在学中。大学では量子コンピューターと数学を専門としている。本メディアでは、先端技術を中心に取材を行っている。取材活動を重ねる中で、資源・リサイクル分野に興味を持つ。趣味はピアノと数学の勉強
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