カナダの資源開発大手ファースト・クォンタム・ミネラルズが、2023年に閉鎖の憂き目にあった中米のコブレ・パナマ銅鉱山の再開に希望をかけている。同社は5月6日に投開票が行われたパナマの大統領選挙で、中道右派のホセ・ラウル・ムリノ元外相が当選したことを巡り「新大統領との対話を楽しみにしている」と話したと伝わった。銅相場の行方にも影響しそうだ。

 

■昨年11月末から閉鎖　銅価格上昇の一因に

 

 

　5月7日のフィナンシャルポストをはじめ外電がファースト・クォンタムの発言を伝えた。ムリノ氏は7月に大統領に就任し、任期は2029年までの5年間。まずは米国を目指す移民の経由地となっている「ダリエン地峡」や、干ばつで通航制限を敷くパナマ運河に対応する見通しだが、銅鉱山への対応も課題となる。

 

　パナマ政府は2023年11月、環境汚染などの理由で住民の反対運動が続いていたコブレ・パナマ銅山を閉鎖すると表明した。コブレ・パナマ銅山は中央アメリカ最大の銅鉱山で、中国の減産もあってその後の銅供給ひっ迫と銅価格の上昇の要因になっている。

 

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過去３ヶ月間のLME銅価格の推移($/ton)

 

 

■銅生産半減、収益に大打撃

 

 

　閉鎖はファースト・クォンタムにも打撃だった。同社は1月に発表した2024年の生産銅の生産目標で、銅は37万-42万トンと、2023年の銅生産量は70万8000トンから半減させた。2025年と2026年も40-46万トンに据え置く。2023年の生産量のうちコブレ・パナマの生産量は33万1000トンと半分近くを占めていたため、この分がごっそり抜け落ちて回復のすべがない状態だ。

　コブレ・パナマでは金も生産していたため、生産目標は金も大幅に引き下げた。同社は西オ―ストラリアで生産していたニッケルも減産する計画で、まさに踏んだり蹴ったりの状態にある。

 

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■新大統領は「繰り上げ当選」、住民意識に敏感か

　では実際、ファースト・クォンタムが鉱山再開にこぎつける可能性はあるだろうか。

　今回の選挙でのムリノ氏は「繰り上がり当選」だった。立候補者には８人が乱立したが、自ら立ち上げた新党から立候補し当初リードしたマルティネリ氏がマネーロンダリング（資金洗浄）で有罪が確定。立候補資格が取り消され、もともとは副大統領候補だったムリノ氏が繰り上がった。つまり、国民の汚職や犯罪に対する拒否感が左右した選挙だった。

　ファースト・クォンタムの銅鉱山閉鎖理由は、環境汚染や労働環境に対する住民の反対運動だ。一方の新大統領は、当選の経緯から住民の意識に敏感とみられる。結局は、住民が鉱業や同社に対する感情を和らげなければ、新大統領との対話だけでは再開に結び付かないだろう。

 

　米ブルームバーグ通信は、カナダのアナリストの見方として「コブレ・パナマをめぐる不確実性は依然として残っており、鉱業に対する世論の改善や、再稼働を検討する前の新政府との交渉など、(ファースト・クォンタムには)やるべきことがある」との見方を伝えた。別のアナリストも、「政府当局者の一部が閉鎖期間中の銅の採掘を禁じると発言したように、銅採掘やファースト・クォンタムに対するパナマ住民の逆風は根強い」と考察したと伝わった。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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