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MIRUウェビナー(5/9) 欧州ELV規則(案)とバッテリー規則に関するポイント解説備忘録

 2024年5月9日(木)15:00~開催された、まる1時間のIRユニバース主催の表記ウェビナー(実質はzoomミーティング?)。MIRU. com にて「欧州からの風」をタイミングよく連載している欧州在住特派員のYukariさんによるレポートに対して、私、外川と棚町社長がその解説に対して質問したり、確認を取る形で議論は進んだ。

 

 

 1時間のウェビナーなので、議論の焦点をMIRU. com 購読者のニーズを想定して再生材の利用に焦点を当てて議論を行った。

 MIRUサイトでもおなじみのArata Abe先生の整理によると、「ELV規則案」は序文で97項目の説明の後、57の条文と11の附属書で成り立っている。これまでのELV指令の場合は、序文が31項目で、条文が13、附属書が2つ。以上から、ボリュームがかなり大きくなったことが窺える。

 また、「指令」は定められた条文に基づいて各加盟国が国内法を制定するものであるのに対して。「規則」は条文そのものを全ての加盟国が直接適用されるもので、今回の「規則」案によって、ELVの取り扱いに関しては、EU加盟国でより統一された共通のルールを作ろうとする動きと理解できる。

 

Arata Abe先生のまとめを参照し、EUレベルで取り組むべき問題分野は以下の4つにまとめられるようだ。

  • 自動車の設計・生産における循環性の結合が不十分で、一次原材料への依存度が高い。
  • 潜在的にはもっと多くの環境的・経済的価値を保持できるのに、実際の使用済自動車の処理の質は最適とはいえない。
  • ELV指令の対象となる「行方不明車」の大多数が、インフォーマルセクターで解体され、多くの(環境に不適合な)中古車が毎年EUから輸出されている問題への対応。
  • ELV 指令の対象外にある車両も規則の対象(二輪車、トラック等も規制の対象)

そして、以上の4つの問題に対応するために、以下の6つの政策オプションが挙げられている。

(1)循環型設計(Design Circular)、

(2)リサイクル素材の使用(Use Recycled Content)、

(3)より良い処理(Treat Better)、

(4)より多く回収する(Collect More)、

(5)拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility, EPR)、

(6)より多くの車両を対象とする(Cover more vehicles)

 

 

 今回のウェビナーで話題となった再生材の利用については、EUレベルで取り組むべき問題分野1)、2)への対応策である、オプションの(2)及び(4)の相当するのだろう。

 ウェビナーでは、ルノーがこの再生材使用の取り組みではかなり先駆的な動きを示しているようだった。大手解体業者INDRAを自らの傘下に置き、多くの解体業者から再生材の回収ができる見通しがあること、Garoo をはじめとする再生資源をもとにした原料加工メーカーが多々あることが原因なのか、いろいろ質問したが、「ルノーが確かに先駆的な取り組みを行っている」以外は、慎重で丁寧な取材を心がけているYukariさんはコメントを控えていた。

 またこれはまだ欧州委員会や欧州議会でも通過していないので、右傾化が進む欧州政治の中でこれが現実に規則として定まるのかも、見通しが立たないという見解で一致した。とくにウクライナ戦争以降、「脱炭素」がEU共通の見解になってはいない雰囲気を感じた。

 次の使用済バッテリー規則の方は、昨年にすでに成立した規則であるのがELVの場合とは大きく異なる。

 

 この規則に関しても再生材の利用が規定されているが、私たちが注目しているのは、やはり関心はバッテリーパスポートである。その原型がドイツの関係団体を通じてかなり中身が見えてきたというお話であった。QRコードを利用することや、二次使用の場合、拡大生産者責任の「生産者」が移行する(車載バッテリーの場合はそのトレースの責任は自動車メーカーにあるが、二次利用でその電池が別の用途で使用された場合、例えば充電器として使用された場合にはその製品である「充電器」メーカーに拡大生産者責任が移される。

 

 また、再生材に関しては、欧州で加工されるほとんどのブラックマスが中国や韓国へ輸出されることの懸念から、ブラックマスの域内処理を原則としていること、そして新しい電池を製造する場合には、いわゆるレアメタルであるリチウムやコバルト、ニッケル等の再生材をそれぞれ規定された割合以上で原材料としなければならないことなどが規定されている。ただ、これもどのように証明するのか?そもそもブラックマスを原材料としてレアメタルを製錬できるスタートアップ企業が、実際商業ベースで動いているかなどは依然として疑問だという認識を持った。

 

 わずか1時間の議論であったので 参加された方々の質問等を引き出せなかったことが、後悔であるが、Yukariさんの丁寧な説明と、棚町社長の「的を得た」質問でウェビナーは私個人としては非常に勉強になった1時間であった。

 

 

(熊本大学 外川健一)

 

 

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