REIA&JOGMEC&MIRU 国際レアアースシンポジウム4 磁石リサイクルでパネルディスカッション
MIRU、REIA、JOGMECとのコラボレーションイベント「レアアースシンポジウム in Tokyo」が6月19-20日、 東京都港区の虎ノ門ツインビルディング・カンファレンスホールで開催された。引き続き20日の開催分から、パネルディスカッションを報告したい。
20日は3件のパネルディスカッションがあったが、このうち最後のパネルとなった「Recycling Rare Earths: Techno-Economic and Environmental issues」を紹介する。 参加者はCyclic Materials;創始者のAhmad Ghahreman,氏、HyProMag;ディレクターのWilliam Dawes氏、JGI-HYDROMETALのエンジニアであるFelipe Guerrero氏、RockLink;のマネージングパートナーであるLeonard Ansorge氏、 REEMag.創始者のPini Althaus氏の4名。司会は, Fast MarketsのCaroline Messecar氏。
タイトル通りレアアースリサイクルについての話題で、主に自動車からの磁石向けレアアースの再利用過程を巡る現況や課題について話し合われた。
■レアアース磁石のリサイクルは始まったばかり
司会のMessecar氏によれば、磁石向けレアアースのリサイクルが本格的に意識され始めたのは2021年ごろからと新しい話題だ。Ansorge氏の紹介では、特に自動車の車載電池からの磁石向けレアアースのリサイクルが発達しているのは意外にも中国と日本で、欧米は遅れているという。欧米では現在、自動車からの磁石は大部分が廃棄されているのが現状だとされた。
リサイクルが進まない理由について、パネル参加者からは大きく、
- 素材調達の不安定さ
- 自動車本体から磁石をはがす技術の未熟
- コスト
- 中国の過剰生産による悪影響
といった問題点が挙がった。
(1)の素材調達は、レアアースに限らずスクラップ業界の最大にして普遍的な問題でもある。Guerrero氏は「サプライチェーン(供給網)が確立されていなければ1社に調達元を依存することになり、入手可能な磁石がなかったり、古いバッテリーの方が高価になったりという事態が起こりやすい」と指摘。その点では「磁石産業を国家として支援している中国が、透明性の高い供給システムを構築している」と指摘した。
(2)の分離技術は、自動車は比較的容易ながらも、なかなか進まない分野。レアアースはガソリン車にも使われているが、その場合はローターにレアアースが埋め込まれているなど、ケースによって必要な技術が異なるためだ。また、再利用品に限らずレアアースは必ず分離技術が必要になるが、設備投資も含めてそのコストが意識されていない。それは(3)のコスト問題にも影響する。Ghahreman,氏は、「自動車メーカーにとってリサイクルは二の次の問題。本来ならば自動車を作る時にリサイクルコストまで織り込めれば良いが、そこまで考えて自動車を生産するメーカーはほぼない」と話した。
■リサイクル産業には政策支援が不可欠
こうした問題の解決法として、パネル参加者が一様に挙げたのが、政策支援だ。Messecar氏は「リサイクルは結局、政策支援がないと進まないところがある」と指摘。欧州議会(EU)などが計画するバッテリーパスポートや、カーボン法、重要鉱物を巡る政策などが助けになっていくとの意見が出た。さらに、廃棄後のリサイクル費用まで新車生産段階で上乗せしていくことなど、「自動車メーカーや消費者の教育向上を産業界の目標として掲げることも重要だ」(Guerrero氏)との声もあった。
実はコスト問題の背景に、(4)で挙げた中国の過剰生産の影響は大きい。レアアースの精鉱・分離・再利用を問わず、工場は一度止めると再開が大変なので中国側としては過剰でも生産を止められないでいるのだが、これに伴い、中国内外でのスクラップ品の価格格差や、海外に流出したレアアース精鉱価格の急落、それに伴う再利用製品の下落など、レアアース市場全般で混乱が起きている。足元の製品価格が下落するとリサイクル企業も分離プラントなど設備投資資金が捻出できなくなり、中長期的にリサイクル産業全体の遅れにつながってしまう。
ともあれ、参加者らからは、レアアースの再利用分野は「6-10年後には大きく成長している」(Dawes氏)との期待が多かった。欧米からのパネリストらだっただけに、「中国と並ぶレアアースリサイクル産業の先進国として、日本には一段の政策支援を期待したい(Ansorge氏)との声もあった。
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(IR Universe Kure)
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