オーストラリアのマドレーヌ・キング資源相は8月1日、政府ホームページ上で、重要鉱物産業に対する超党派での支援を呼びかけた。前日7月31日に米アルベマール・コーポレーションが西豪でのリチウム事業の縮小を発表したことを受けた。同国では資源大手BHPがニッケル生産の停止を発表したばかり。政府レベルで危機感が強まっている。

 

■豪政府、27年実施の重要鉱物向け生産税優遇措置の前倒し検討

 

 

資源省プレスリリース Statement on decision by Albemarle | Ministers for the Department of Industry, Science and Resources

ABCラジオインタビュー(資源省発表): Interview with Nadia Mitsopoulos, ABC Radio Perth | Ministers for the Department of Industry, Science and Resources

 

　プレスリリースによると、キング氏はアルベマールの生産縮小による失業増と地域社会への影響を懸念。超党派での重要鉱物とレアアース産業に対する支援を呼びかけたほか、野党に対し、地元産業と地元の雇用を支援するために生産税額控除を支持するよう呼びかけた。

　豪政府は5月発表の予算案で重要鉱物に対する生産税の優遇措置を発表したが、実施は2027年-28年会計年度としている。これについてキング氏は同日のABCラジオでのインタビューで「前倒しでの実施を検討している」とし、「アルベマールの助けにはならなかったかもしれないが、西オーストラリア州に投資する他の資源企業にとって中長期の助けにはなるかもしれない」と示唆した。

 

■アルベマール、水酸化リチウムの生産縮小

 

 

　アルベマールは7月31日、自社ホームページ上で、「西オーストラリア州のケマートンリチウム処理施設での生産を縮小する」と発表した。建設中の2設備は建設を停止し、既存施設のうち１つはメンテナンスのみとする。

 

アルベマールのプレスリリース: Albemarle Announces Asset and Cost Actions to Enhance

 

　同工場では、リチウム鉱石を電気自動車(EV)向け車載電池用の水酸化リチウムに加工する作業を行っていた。ただ、足元のリチウム価格に回復の兆しが見えず、コスト削減を余儀なくされた。前出のABCラジオでキング資源相がアルベマール側からの報告として明かしたところでは、事業縮小に伴う失業者数は300人ほどと予想される。

　水酸化リチウム価格は8月2日にRMB7万6000/mtと、2021年春以来の安値水準にある。2022年秋にはRMB55万を超える場面もあったが、１年半ほどで8分の1程度の価格に下げた。

 

過去5年間の水酸化リチウム価格の推移(56.5%mn delivered China)(RMB/mt)

 

■BHPはニッケルから銅へ

　金属価格の低迷が続く中、豪州では資源大手による投資縮小が相次ぐ。電気料金や人件費といったコストが他国に比べ割高で、採算悪化に耐えられなくなったケースが目立つ。BHPなどはニッケルから銅へと注力する動きを見せており、事業再編の流れも速い。レアアースやレアメタルで投資を集めてきた豪州は、変化への対応を迫られている。

 

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(IR Universe Kure)

 

 

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