豪BHP、西オーストラリアのニッケル事業を停止へ 10月から、供給過剰で採算悪化

オーストラリア資源大手BHPグループは7月11日、自社ホームページ上で、「2024年10月から西オーストラリアのニッケル事業を一時停止する」と発表した。2027年2月までに事業を再開するかを再検討する。世界の資源大手の間で供給過剰による採算悪化での事業見直しが相次ぐ中、また1つ大型の操業停止が起きた。
■精錬所や採掘などすべて停止、探査は継続
プレスリリース: Western Australia Nickel to temporarily suspend operations (bhp.com)
発表によると、中止するのはクウィナナニッケル精錬所およびカルグーリーニッケル精錬所の運営と、マウント・キース・アンド・レンスター工場の採掘・加工事業、ウエスト・マスグレイブ・プロジェクトの開発。各事業のメンテナンス作業は行い、探査事業は継続する。また、該当事業の従業員に対してはBHP内での配置転換や解雇手当の支給に応じる。さらに、地域社会の支援向けに2000万豪ドルのコミュニティ基金を設立する。解雇手当をはじめとする一時停止による費用は2025年1-6月期の決算で計上する。
BHPのオーストラリア社長であるジェラルディン・スラッテリー氏は発表資料中で、停止の理由について「2月に西オーストラリア州のニッケル事業の見直しを発表して以来、短期的に損失を食い止め、事業の実現可能な道筋を特定するための選択肢を模索してきた。しかし、オーストラリアのニッケルセクターの同業と同様に、私たちは世界的なニッケルの供給過剰によって引き起こされた大きな経済的課題を克服することができなかった」と述べた。
■相次ぐ操業停止、豪州は特殊事情も
リチウムやニッケル、コバルトなどのマイナーメタルは、供給過剰を背景に価格低迷が長引く。ニッケルはインドネシアと中国からの供給が増え続ける一方で中国の建設需要の縮小などを背景に需要は伸びず、LMEニッケルで2023年に約4割も値下がりした。2024年に入ってからも反発の機運は薄く、7月11日時点で現物$16.630/tonと4月初旬以来の安値水準にある。中長期でみると2021年上期以来、ほぼ3年ぶりの安値圏から抜け出せずにいる。
過去5年間のLMEニッケル価格の推移($/ton)
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さらに、オーストラリアでは電力などのインフラ費用や人件費が他国に比べ割高で、多くの資源大手が同国での事業をあきらめる事態に陥っている。BHPも豪事業が足を引っ張り、2023年12月期は業績が悪化。2024年に入ってからは価格が高騰する銅に注力すべく英同業のアングロアメリカンに買収を仕掛けるなど、事業の見直しを進めていた。
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(IR Universe Kure)
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