週刊バッテリートピックス 「トランプ効果に期待」「東芝やトヨタ再生技術開発」など
2024年11月5日~11月10日のバッテリー業界では、米大統領選でのトランプ元大統領の勝利がやはり大きな話題だった。カナダのLi^Cycleに融資が下り、韓国では早々に恩恵を期待する論説が浮上した。一方、日本では東芝やトヨタ系がリチウムイオンバッテリー(Lib)の再生技術を相次いで開発し、研究の進展を印象付けた。
<国内>
●古河電池、中期は赤字転落 電池液漏れで
古河電工傘下の古河電池(本社:横浜市)が11月8日に自社ホームページ上で発表した2024年4-9月期決算は、売上高が373億8100万円と前年同期比15%伸びだが、最終損益が7億3100万円の赤字と、前年同期の5億9400万円の黒字から赤字転落した。非常用バッテリーの一部ロットに液漏れが発生し、保証費用16億6200万円を特別損失に計上した。
プレスリリース:pdfFile.pdf
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●INFORICH、AI搭載のバッテリースタンドをシンガポールで設置へ
AI機能搭載のバッテリースタンドNaviSPOT(ナビスポット
(出所:INFORICH発表資料)
モバイルバッテリーのシェアリングサービス大手のINFORICH(本社:東京都渋谷区)は11月7日、自社ホームページ上で、「AI機能搭載のバッテリースタンドNaviSPOT(ナビスポット)を、12月以降にシンガポールで設置する」と発表した。シンガポール交通大手のSBSトランジットと覚書を交わした。日本国内でも都市圏や観光地など人流が集中するエリアを中心に順次設置を進める意向だ。
プレスリリース:AIによるコンシェルジュ機能搭載のバッテリースタンド「NaviSPOT」の開発を発表 – INFORICH
●東芝、Lib再生法開発 「ニオブチタン酸化物負極」利用
東芝は11月6日、自社ホームページ上で、「次世代リチウムイオン電池(Lib)の新しいリサイクル方法を開発した」と発表した。
簡易な熱処理のみでリサイクルできる「ダイレクトリサイクル手法を開発した。具体的には、高出力・長寿命の「ニオブチタン酸化物負極」などの簡易リサイクルを実現し、欧州などでの電池リサイクルの法整備への対応を目指す。
プレスリリース:リチウムイオン電池の酸化物負極を低コスト・低環境負荷でリサイクルする手法を開発 -高出力・長寿命なニオブチタン酸化物負極等の簡易リサイクルを実現- | 研究開発センター | 東芝
●豊田中研、解体なしでのLib再生技術を開発
豊田中央研究所は11月6日、自社ホームページ上で、「回復剤注入による試用済みリチウムイオン二次電池(LiB)の容量を回復させる技術を開発した」と発表した。
LiBを解体することなくそのままの再生が可能となり、これまではリサイクルの対象となっていた使用済みLiBのリユース促進に結びつけられるとしている。研究開発にはトヨタ自動車も協力した。
プレスリリース:使用済みリチウムイオン二次電池の簡便な容量回復技術を開発 ~溶液の注入による容量回復を確認~ | お知らせ | 株式会社 豊田中央研究所
●Honda、スウェーデンでバッテリーシェアサービスを実験へ
本田技研工業(Honda)は11月5日、自社ホームページ上で、「スウェーデンで交換式バッテリー搭載電動二輪車のレンタルおよびシェアリングサービスを展開するゴーシモ(GoCimo、 本社:ストックホルム市)と協力し、スウェーデンのマルメ市でバッテリーシェアリングサービスの実証実験を実施する」と発表した。実験期間は2025年2月から1年間。
プレスリリース:HondaとGoCimoがバッテリーシェアリングサービスの実証実験を開始 | Honda 企業情報サイト
<海外>
●加Li-Cycle、米政府から700億円超の融資取得 トランプ前で駆け込み?
カナダのリチウムイオンバッテリーリサイクル企業Li-Cycleは11月7日、自社ホームページ上で、「米ニューヨーク州に予定するリチウムイオン電池の再生処理施設の建設計画に対し、米エネルギー省(DOE)から4億7500万ドル(約725億円)の融資を獲得した」と発表した。
米国では環境対策に後ろ向きとされるトランプ元大統領が大統領選で勝利し、政権交代が迫る。同日のロイター通信は、「現政権として環境保護対策を急いだ可能性がある」と伝えた。
●1-9月の世界の車載電池販売23.4%増 韓国勢には「トランプ恩恵」期待も
韓国の調査会社SNEリサーチが11月7日に発表した2024年1-9月の世界の車載電池販売量は前年同期比23.4%増の599ギガワット時(GWH)だった。伸び率は前年同期の44.4%から半減した。寧徳時代新能源科技(CATL)やBYDといった中国勢がシェアを伸ばした一方、パナソニックやSKエナジーソリューションズといった日韓勢はシェアを減らした。
(出所:SNE Resrech)
ただ、11月7日の韓国の中央日報電子版は、「トランプ新政権で対中関税が上昇すれば、韓国の車載電池産業は恩恵を受ける可能性がある」との同国学者の意見を掲載。迂回貿易などの「反射利益」を期待する見方が出ている。
●中国・華友コバルト、インドネシアのMHP工場の建設進展か
米ブルームバーグ通信は11月7日、「中国金属採掘大手の浙江華友コバルト業が英銀に対し、インドネシアで計画中の車載団地向けニッケル工場建設をめぐる資金の融資を求めている」との消息筋の話を伝えた。
関連記事:中国の華友コバルト、インドネシアMHP工場の建設進展か フォード、ヴァ―レと協業 | MIRU
●ユミコア、車載電池のコスト削減へ
ベルギー化学大手のユミコアは11月6日、同社の最大の主力事業である車載電池材料に関する新たなコスト対策を発表した。
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●中国、蓄電池発展で国内鉱物の探査強化へ
中国工業情報化省は11月6日、ホームページ上で、蓄電池などの発展に関する新たな草案を発表した。この中で、「リチウム、コバルト、ニッケルなどの鉱物資源の国内探査を強化し、中国国内の資源確保能力を増強する」とした。
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(IR Universe Kure)
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