高度化法の認定基準検討開始、公平な測定手法の確立がカギー環境省WG
環境省は25日、今年5月に公布された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(再資源化事業等高度化法)における認定基準を検討するワーキンググループ(WG)の第1回会合を開催した。初会合では環境省が設定した基準案に対し、所属委員らが意見を述べた。何を基準にするかよりもどうやって「基準科目の測定を正確かつ公平に行うか」という視点での意見が多く上がり、今後の主な論点になると思われる。
再資源化事業等高度化法では、主な取り組み事項として、「基本方針の策定」や「再資源化の促進」のほか、「再資源化事業等の高度化の促進」が定められており、先進的な高度化の取り組みを環境大臣が認定する制度が創設される予定だ。認定事業者は予算補助や税制などの特例を受けることが可能となる。同WGでは、25年11月予定の認定開始に向け、審査基準に関する議論を複数回開催し、親会に当たる小委員会に対し取りまとめを提案する見込み。
温室効果ガス排出量の評価手法の比較イメージ(環境省提出資料より引用)
認定の類型としては、「事業形態の高度化」「分離・回収技術の高度化」「再資源化工程の高度化」の3つが公表されており、共通の基準となる温室効果ガス排出量の評価手法については、▽比較対象となる基準シナリオ(事業実施前の状況)と事業シナリオ(改善後の状況)の設定は、同機能の製品を製造することを想定▽排出量の評価範囲は類型毎に、その事業特性などを考慮して設定する――ことが環境省から提案された。
これに対し、菊池康紀委員(東京大学未来ビジョン研究センター教授)は、プライマリー材(従来品)と再生材の機能が完全に一致することが稀なことから、何を基準に同機能とするか、誰が同機能と判断するかを環境省に確認したが、環境省担当者は「客観性を高めるためにアイディアがあれば提案してほしい」と逆質問で返し、明確な回答はなかった。
資源循環の評価手法についても、資源供給率や再生成分含有率、資源回収率、再生材供給量などを指標とする案が環境省から提示されたが、「再生材製造プロセスは分離プロセスなどが複雑で公正な評価が困難」などの指摘が複数上がった。これに対しても具体的な対策の明示はなかった。
座長を務めた村上進亮委員(東京大学大学院工学系研究科教授)も、再生材の生産・利用プロセスをどこまで評価対象とするかは「真面目に考えなければいけない」と警鐘を鳴らした。特に非鉄精錬などがプロセスに含まれる場合は評価基準の算出測定が専門的になり、労力もかかると意見を述べた。
今後は、座長を含めた委員の助言に従う形で、実際の事業をサンプルとした評価測定のケーススタディ収集を進め、複雑な再生材の製造・利用プロセスを踏む場合、どのような基準であれば「公正な評価が可能か」「評価指標が収集可能か」を探っていくことになりそうだ。
また、今回の会合は、教育・研究機関に所属する委員のみで構成されていたため、今後の会合では事業者団体からのヒアリングも設けられるとみられる。認定事業者は予算補助や税制などの特例が与えられることから、議論はさらに複雑化することが想定される。
(IRuniverse K.Kuribara)
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