五酸化ニオブ価格が12年ぶり高値 11月に急伸、トランプ再選が影響か 希少性意識も
ステンレス強化材の五酸化ニオブ価格が高止まりしている。11月14日に急伸し、高値$58/kgと、2012年12月以来11年11か月ぶりの高値を付けた。12月に入っても1カ月以上同水準を維持している。生産国の不安定さや希少性が意識された可能性がある。
■トランプ不仲のブラジルでの生産が9割
過去3か月間の五酸化ニオブ価格の推移(Nb2o5 99.5% $/kg)
過去15年間の五酸化ニオブ価格の推移(Nb2o5 99.5% $/kg)
11月半ばのこの時期に、ニオブ関連で特段のニュースが出たわけではない。ただ、同時期は米大統領選挙でトランプ元大統領が再選を決めた直後に当たる。ニオブの主要主産国はブラジルで、世界の生産量の9割近くを生産する。
ニオブの主要生産国
(出所:JOGMEC)
トランプ氏はそのブラジルの現ルラ政権とは仲が悪く、ブラジルを含むBRICS諸国に100%の高関税をかけると示唆した。ルラ大統領は支持率が低迷しており、11月末に発表した所得税改革も不評で、通貨ブラジルレアルは過去最安値圏に下落している。こうしたブラジルの政情の不安定さが、ニオブの供給不安を連想させた可能性はある。
また、2024年はアンチモンなどの鉱物の希少性が注目され、価格が上昇した年でもあった。ニオブについても、政府系金属研究機関の担当者からは、「流通量が小さい鉱物だけに、まとまった買いが入れば価格が動きやすい」との指摘がかねてあった。
関連記事:五酸化ニオブ価格が10年ぶり高値 モリブデンや金属ゲルマニウム、アンチモン…高まる希少鉱物の存在感 | MIRU
鉄鋼向けのフェロニオブ価格は小動き。12月19日仲値は$45.8/kgだった。1年を通じて$46を挟む水準で推移し、全体で見れば横ばいだった。フェロニオブは2023年3月に$48.5の直近高値を付けていた。
過去10年間のフェロニオブ価格の推移(Nb66%, Si3% max $/kg)
■電池材料として注目、東芝や双日も開発
ニオブは主にステンレス鋼合金の強化に使用される。航空宇宙や自動車、建設関連で広く使われるほか、MRI装置や粒子加速器の基礎となる超伝導磁石にも使用され、医療関連にも欠かせない。
近年は電池材料としても注目されている。2024年は6月に、東芝と双日、ブラジルのニオブ生産会社であるCBMMが、ニオブチタン酸化物(Niobium Titanium Oxide、NTO)を負極に用いた電気自動車(EV)のバス向け次世代リチウムイオン電池の共同開発に成功したと発表した。
関連記事:東芝のニオブチタンLIBは新たな需要を喚起するか? | MIRU
(IR Universe Kure)
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