コバルト市場近況2025#1 小動き、構造的な供給過剰続くも春節前で一時抑制
2025年1月のコバルト市況は小動き。構造的な供給過剰が続くとの悲観ムードが価格を押し下げる一方、中国の春節(旧正月)の接近による物流停滞で一時的な供給不足が意識され、下値を支えている。ただ、需要の弱さも相変わらずで、供給過剰の解消は遠いとの見方は共通認識となっている。
■LGは11ドル前後でもみ合い
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
ベンチマークとなるLGコバルトは1月16日に仲値$10.725/LBを付けた。2024年秋から$11を挟み小幅な値動きが続く。
中国レアメタル大手の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)が1月6日に株式を上場する香港証券取引所で発表した2024年の生産実績によると、同社のコバルトの生産量は前年比2.1倍の11万4165トンだった。競合するスイス資源大手グレンコアの3倍近くと大差をつけ、2年連続で世界トップになる見通しとなった。
関連記事: 中国CMOC、24年コバルト生産量は11万トン 2年連続で世界首位へ、グレンコアの3倍 | MIRU
CMOCによる供給拡大などにより、世界のコバルト供給量も大幅に増える見通しだ。ヤフーファイナンスは1月17日、「国際調査会社のグローバルデータが、2024年の世界のコバルト供給量は前年比30.7%増えたと推計した」と伝えた。長期的には電気自動車(EV)などの普及で需要も拡大する余地があるとされるものの、現時点では構造的な供給過剰が拡大している。
■HGと硫酸は一段安
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
製造業の低迷長期化を背景とした需要の鈍さも引き続き価格の下押し圧力となっている。航空機向けなどのハイグレード品であるHGコバルトは一段安。1月16日に$13.5と、2019年8月以来5年5か月ぶりの安値を付けた。2024年12月中旬に心理的節目の$14を割り込んでから下げ止まらない。
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
過去最安値圏に落ち込む電池向けの硫酸コバルトもさらに下落している。1月9日に仲値RMB2万6000/mtに下げた。11月下旬から1か月以上RMB2万6500で推移していたが、保てなくなった。
■LMEコバルトは中期で横ばい
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
国際価格であるLMEコバルトも小幅に下落。1月20日に高値$24.275/tonを付けた。中期的には2024年夏から$24前後で動きがない。より長期の水準としては統計が取れる20年間での過去最安値圏にある。
■Topics
1月2日
コバルト採掘を手掛けるジャーボア・グローバルは1月2日、破産手続きを開始したと発表した。融資元であるオルタナティブ投資会社ミルストリート・キャピタル・マネジメントとの間で、破産手続きの一環としての株式の非公開化に合意した。コバルト価格の低迷が経営を直撃した。
米国で、米連邦破産法11条(チャプター11)の手続きも開始する。手続き終了後は、オーストラリア証券取引所(ASX)での上場が廃止となり、資産はミルストリートに譲渡される。
プレスリリース: 02899949.pdf
(IR Universe Kure)
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