バルカー(7995)25/3Q3決算メモ ニュートラル継続
25/3期フッ素樹脂タンク需要剥落で1.2%増収8.5%営利減予想、26/3期は回復期待
株価3255円(2/3) 時価総額608億円 発行済株18,689千株
PER(25/3DO予:11.4X)PBR(1.19X) 配当(25/3DO予)150円 配当利回り:4.6%
要約
・25/3Q3フッ素樹脂特殊タンク需要一服継続し1.1%減収17.5%営利減も受注16.0%増
・25/3期1.2%増収8.5%営利減予想変更せず進捗率未達もQ4先端市場向け増で達成可能
・27/3期に売上高800億円、営利120億円目指すが達成には課題残す
25/3Q3決算が1/29に発表された。25/3Q3は売上高148.97億円(同期比1.1%減)、営業利益12.98億円(17.5%減)、経常利益13.43億円(22.2%減)ながら、受注158.77億円(16.0%増)、BBレシオ1.07となった。
事業別にシール事業は売上高103.22億円(11.4%増)、営利13.33億円(2.1倍)、受注107.93億円(22.9%増)、受注残63.76億円(19.6%増)に。市場別売上では先端産業向けが41.50億円(43.1%増)と先端産業向け高機能シールの販売が回復、プラント向けも堅調に推移し26.0億円(8.3%増)に。一方で機器市場向けは36.0億円(10.0%減)と設備投資伸び悩みで減少。仕向け先では国内が72.39億円(7.5%増)と緩やかな回復も、海外が中国など好調で30.82億円(21.5%増)となった。利益面では円安、先端産業向け増加でMIX良化から営利率が6.1ポイント向上し12.9%となり大幅増益に。
機能性樹脂製品は売上高37.53億円(26.2%減)、営利0.37億円(96.2%減)、但し受注は43.72億円(4.1%増)、受注残42.38億円(32.9%減)と受注はボトムを付けた模様でBBレシオは1.16に。先端産業向けが売上高18.0億円(40.9%減)と、高機能フッ素樹脂タンクが低迷、プラント向けも10.0億円(9.1%減)と高機能フッ素樹脂タンクの特需剥落が影響した。仕向け先では国内27.21億円(26.1%減)、海外10.31億円(26.5%減)とどちらも低迷。利益面は特需剥落影響が大きく、MIX悪化で営利率が18.3ポイントも下落し1.0%に止まり大幅減益に。
再生ウエハ事業他は売上高8.23億円(16.4%増)、営業損失0.73億円(0.34億円悪化し赤字拡大)、受注7.13億円(0.4%増に。主力のウエハ再生事業が堅調もH&S事業が停滞、利益は新規事業の停滞続き赤字拡大。
全体を通じ市場別で先端産業向けが66億円(横ばい)と高機能シールなどの好調の一方で特殊タンク減から伸び悩み、プラントは36億円(2.9%増)で特殊タンクの剥落が影響、中国の好調を打ち消す格好に。機器市場は設備投資不振で46億円(8.0%減)となった。
また仕向け先では国内が103.05億円(3.9%減)と設備投資の伸び悩み、自動車の生産遅延などが影響した。海外は45.92億円(7.0%増)でアジア向けは中国などが堅調、台湾一服で34.18億円(6.5%増)、北米は11.50億円(8.6%増)と半導体向けなどが底打ちした模様。
営業利益の利益面では円安効果で売上が嵩上げされており、操業度効果、またMIX悪化、棚卸評価損2億円などで円安でも総利益率が1.4ポイント悪化し39.6%となり総利益が2.83億円減少、販管費をほぼ横ばいに抑えるも全体では営利2ケタ減益に。
25/3期1.2%増収8.5%営利減予想変更せず進捗率未達もQ4先端市場向け増で達成可能
同社は通期に対する25/3Q3累計の進捗率が売上高で72.0%、営利で65.0%と75%を下回っているが、若干Q4が多い傾向があり、売上高625億円(1.2%増)、営業利益65億円(8.5%減)、経常利益65億円(12.2%減)予想を据え置いた。
セグメント、市場別予想も25/3H1時点予想を修正していない。製品別ではシール製品が売上高417億円(12.2%増)、営利55億円(75.2%増)予想。半導体設備投資が本格拡大し、先端市場向け伸びが継続する見通し。利益も増収効果が大きく大幅増益予想。機器、プラント向けが横ばいでMIX良化から利益率が向上し大幅増益見通しに。一方、機能性樹脂製品は売上高177億円(18.0%減)、営利11億円(72.5%減)予想。特殊タンク特需が剥落、先端市場向けが大幅減少から、利益もMIX悪化で利益大幅減予想。その他事業は売上高31億円(3%増)営業損失1億円(0.66億円赤字拡大)と赤字解消が遅れる見通し。
市場別では先端市場向けが287億円(7.9%増)と特殊タンク大幅減で高機能シール製品の大幅回復も全体では緩やかな回復に止まる見通し。機器市場は178億円(3.8%減)と、自動車向け堅調も産機向けが低調継続で減少見通し。プラント市場は157億円(3.7%減)予想と特殊タンクの減収影響を見込む。
全体としてスクリーンの再増額修正や国内半導体工場の設備増強など先端産業向けさらに増額含みで、メモリ向けの回復が遅れているものの、シール製品、先端市場向けの増額から下期にMIX良化が見込まれ、円安継続もありQ3までの進捗率未達を埋めて会社計画並みの収益が期待される。
27/3期に売上高800億円、営利120億円目指すが達成には課題
同社は新中計としてNF2026を策定、27/3.期に売上高800億円、営利120億円の実現を目指す。事業別では戦略製品の拡大等で先端産業向け売上高を24/3期266億円から420億円、売上高比率で50%超を目指す。特に25/3期需要の狭間で減収となった特殊タンク分野は、半導体チップの生産プロセスに使用する高純度の薬液を貯蔵するもので、先端半導体製造において高い耐薬品性とクリーン度が求められるため、改めて高成長が見込める。このため同社は2025年1月に世界で最もクリーンな「ライニングタンク」の供給を目指した新たな生産拠点として愛知県田原市に稼働、未来を支えるフラッグシップ拠点を目指す。一方、機器分野は横ばい基調、プラント事業はソリューション事業拡大などで190億円を目指す。なお新規分野についてAI/ITソリューション事業を27/3期に30億円まで拡大する方針。
現在、先端産業向けは25/3期に回復が見込まれるが、新規事業は具体化が見えず、中計計画の未達懸念がある。
株価は25/3期減益予想としたことで4630円から急落、8/5に3000円まで下落、その後もさえない動きで終始している。現在、会社予想EPS284.43円に対しPER11.4倍と、日本ピラー工業の10.5倍、イーグル工業の13.2倍、ニチアス11.2倍と似通った水準にあり、プライム市場機械平均PER16.6倍に対し割安である。9/25に執行役員および幹部社員らによる不正行為が判明した影響は軽微も、中計達成が具体性に欠けるところがあり、26/3期は半導体関連の本格回復で収益の回復が見込まれるものの、ニュートラル継続としたい。
(H.Mirai)
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