ヨコオ(6800) 25/3Q3決算メモ ややポジティブから再度ニュートラルに変更
25/3期CTC減額で営利減から6.6%増収、営利2.5倍予想、経常は円安で1.6%減維持
株価1482円(2/14) 時価総額353億円 発行済株23850千株
PER(25/3期DO予13.8X)PBR(0.65X) 配当(25/3予)48円 配当利回り:3.2%
要約
・25/3Q3回路コネクタ、無線通信機器回復も車載通信機器伸び悩み3.5%増収14.8%営利増
・25/3期CTC利益減額で営利減額し6.6%増収、営利2.5倍、経常は円安で1.6%減予想維持
・中期経営で27/3期売上高965.5億円、営利109.5億円目指すも環境変化でハードル高い
25/3Q3回路コネクタ、無線通信機器回復も車載通信機器伸び悩み3.5%増収14.8%営利増
25/3Q3決算が2/12にあり、同日説明資料が開示された。25/3Q3は売上高210.21億円(3.5%増)、営業利益9.95億円(14.8%増)、経常利益26.49億円(同期比25.86億円増)、税引利益19.82億円(同期比19.77億円増)となった。緩やかな収益回復も、Q2の一時的な円高からQ3にかけて円安回帰で経常利益、税引利益がいびつな形に。
セグメント別では車載通信機器(VCCS)が売上高140.79億円(同期比6.6%減)、営利7.03億円(同期比45.6%減)に。中心となるシャークフィンアンテナが日系の中国市場向け不振の影響、加えて一部顧客の生産調整を受けて減収に。地域別では日本がトヨタの不祥事からの回復もあり52.66億円(8.1%増)も、アジアが23.65億円(30.2%減)、欧米は64.47億円(5.4%減)にとどまった。利益面では減収影響に加え、現地通貨高に伴う中国、ベトナム生産拠点の労務費上昇、物流費アップなどから大幅減益に。
回路検査コネクタ(CTC)は売上高39.73億円(32.7%増)、営業利益1.72億円(同4.37億円増加し黒字転換)となった。売上面では引き続きAI半導体OSAT向けが伸長、一方でインテル向けの不振継続、車載向けの伸び悩みが見られた。利益面では24/3Q3でインテルのテストソケット不採用影響の軽減、一方でAI半導体検査用ソケット向けピンの大幅増で収益性がアップした。
無線通信機器は売上高29.14億円(35.2%増)、営利3.04億円(同3.5倍)となった。スプリングコネクタがPOS向けの在庫調整完了と需要増、ワイヤレスイヤホン向けも好調持続に。また医療用は計画通り順調な伸びを示した。利益面では増収効果、中国勢の価格競争鎮静化、ワイヤレスイヤホン向けの回復で収益性が大幅に回復した。
インキュベーション事業はほぼ大半が車載関連を占めるビジネスとなっているが、売上高0.55億円(38.2%減)、営業損失1.86億円(0.39億円改善も赤字継続)。プラットホーム事業は車載管理システムとして拡販、一方で光コネクタ量産については半導体検査事業の中の光電融合プロジェクトとしてCTC部門に発展的解消し同部門から削除した。
全体を通じ、CTC、無線機器の黒字転換が寄与も、車載用アンテナの低迷で、同期比収益は緩やかな回復にとどまった。
25/3期半導体向け利益減額し6.6%増収、営利2.5倍、経常は円安寄与1.6%減予想維持
25/3Q3の収益状況を考慮、11/8公表予想について営業利益を4.5億円引き下げ、売上高820億円(6.6%増)、営利40億円(2.5倍)、経常利益36.50億円(1.6%減)、税引利益23.5億円(55.4%増)予想とした。なお為替前提を2月以降1$=150円(前回は145円前提)とし、営利4.5億円減額予想も経常利益以下は11/8予想通りとした。
セグメント別ではVCCSを売上高554億円(11/8修正予想比2.0億円減額、前期比0.3%減)、営利27.5億円(同0.5億円減額、前期比11.3%減)予想としている。主力のシャークフィンアンテナが円安で嵩上げも、中国の不振、一部生産調整があるとして減額、利益は円安影響から原価高が影響し若干の利益減額予想に。
CTCは売上高153億円(同変更なし、21.6%増)、営利12.5億円(同4.0億円減額、同20.44億円改善し黒字転換)予想。インテル向けの低迷継続をAI半導体向けピンでカバーし後工程向けが伸長。前工程もクアルコム新モデル向けで期初計画を上回り伸び予想。利益面は一時的な技術課題対応費用が発生したことで利益減額も、円安効果に加え、AI半導体向けの拡大でMIX良化も加わり大幅黒字転換に。
FC・MDは売上高110億円(同2.0億円増額、29.0%増予想)、営利8.5億円(同1.0億円増額、同7.3倍)予想。主力のスプリングコネクタがPOS端末向けに在庫調整一巡、ワイヤレスイヤホン向けも伸び大幅増額。医療用機器も20%弱の伸び見通し。利益面では増収効果、円安、固定費削減効果で大幅改善。
全体として11/8の修正予想に対しCTCでの一時的な技術課題対応費用が発生影響で営利減額も、為替前提が円安に推移し経常利益以下に変更なしとのこと。現状、トランプ政権の自動車関税の問題があるものの、25/3期への影響はないとみられ、会社修正予想並みの収益が見込まれる。
中期経営で27/3期売上高965.5億円、営利109.5億円目指すも環境変化でハードル高い
同社は中期経営計画で27/3期売上高965.5億円、営利109.5億円、29/3期に売上高1087.5億円、営利137.5億円を目指す。中身は既存製品で27/3期889.0億円、戦略製品76.5億円、29/3期既存製品920.5億円、戦略製品167.0億円、不足分はM&Aで上乗せを計画している。
事業別にVCCS事業は既存顧客へのADAS製品の拡販、海外は新市場を見込む。現在ADAS関連で開発案件を獲得、適応車種の拡大も見込む。海外向けではインドの自動車部品大手と合弁のLumax Yokowo Technologies Private Limited社(50%出資)が インドローカル向けに26/3期から持分利益増が見込める。また米中対立で中国からの米国への輸出規制強化を念頭に、中国における生産・営業を中国ローカル向けにビジネス転換を図る。なお新規分野としてADASカメラとECUをつなげる伝送系部品が加わり27/3期にはある程度の規模を期待している。足元でトランプ政権が4月に関税引き上げを実行するアナウンスもしており、少なからず影響がでるとみられ、26/3期は伸び悩みが懸念され、27/3期で挽回するのは難しいとみられる。
CTCでは新たなテストニーズ、新規顧客の拡大で事業拡大を図る。特にAI半導体向けは高シェアの台湾OSAT向けプローブピン供給拡大に加え、テストソケット投入がカギを握る。またファイナルテストでインテル向けの不振から大きなダメージを受けたことで検査ソリューション分野でも協業して事業拡大を目指す。さらに再配線ではクアルコム以外のユーザーの拡大が始まるとのこと。また再配線前ウエハテストについては超微細ウエハ対応としてMEMSプローブを利用した全く新しいテストに対応する計画にある。いずれにしても、インテル向けの縮小を埋め、AI用GPU向けの更なる拡大と前工程やシステムレベルテストなどの新規分野で拡大する計画。但し、足元はスマホやPCの低迷が長引き、AI用GPUも歩留まりが上がっておらず生産数量の本格拡大が2025年後半にずれ込む懸念などもあり、26/3期のCTC拡大がAI半導体向け続伸もスマホ、PC向けの伸び悩みが懸念され、27/3期はどれだけAI半導体が伸長するかが中計達成の鍵となろう。
無線通信機器はモバイルPOS、ワイヤレスイヤホン向けに加え、VR・ARデバイスや次世代通信向け超小型スプリングコネクタなどの拡大を見込む。またPOS向けはミドルエンド向けの低コスト製品の開発も進めシェア確保を行うとしている。但し中国勢の価格攻勢が続くとみられ、ミドルエンド向けへの製品投入は難しいとみられる。医療向けではベンチャー等と協業し、新規需要を取り込む。25/3H2よりベンチャー向けにステント関連製品売上が出始め、26/3期は通年で黒字化が見込める。さらに自社ガイドワイヤの開発を実行、27/3期に自社品売上を10億円程度期待している。このようにFC部門は十分達成の可能性が見込める。
全体を通じ、中計について、M&A要素の売上寄与は不透明で、CTCについてはスマホやPCの回復遅れで26/3H1は伸び悩み、本格拡大は下期とみられる。車載関連では主力ユーザーがトヨタグループであり、新たにインドローカルが加わるとみられるが金額的にはまだ少なく、トランプ政権の自動車関税問題が影響、こちらも26/3期は停滞が懸念される。通信機器関連は、事業環境激変の対応が順調に進んだことから、収益拡大が見込める。このため26/3期の収益の伸びが中計(26/3期予想は非開示)に達せず、27/3期に半導体の本格拡大寄与で26/3期の伸び悩みを如何に挽回し、再度成長軌道に戻せるかが中計達成のポイントとなろう。
株価は8/8の25/3Q1決算で25/3期減額修正の開示があり低迷したが、11/8のQ2発表でCTCがAI半導体向けでの利益増額から反発に転じ1412円ボトムに1/7には1812円まで戻した。しかし今回、営利減額修正から再度下落、2/14には安値1460円を付けた。現在、25/3期再修正会社予想EPS100.81円に対しPER14.7倍はプライム電機PER24.7倍に対し割安であるものの、類似企業の山一電機PER8.6倍、エンプラス10.3倍に対して割高、日本マイクロニクス18.7倍よりは割安となっている。CTC事業の主力ユーザーがインテルからAI半導体GPU向けに変化、前工程のクアルコム向けも堅調ながら、26/3期は車載用アンテナの伸び悩み懸念があり、中計27/3期見通し達成のハードルが高いとみられる。PBR0.65倍と下値不安は小さいものの、26/3期の伸び率鈍化懸念もあり改めてややポジティブからニュートラルに評価を戻したい。
(H.Mirai)
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