2025年3月のチタン原料市場は小幅に上昇している。中国の金属チタンが供給ひっ迫懸念から堅調で、二酸化チタンなども持ち直している。ただ、世界の製造業の回復遅れが続き需要自体が大きく改善したわけではないため、勢いは鈍く、膠着ムードも強い。

 

■中国の金属チタンメーカー、一部が操業再開せず

 

過去3か月間の一般産業向けスポンジチタン価格の推移( China)($/kg)

 

　まず好調が目立つのは金属チタンだ。中国の一般産業向けスポンジチタンは3月13日に仲値$6.831/kgに上げ、2024年8月下旬以来の高値を付けた。中国のスポンジチタンメーカーの一部は2月初旬の春節(旧正月)休暇明けも本格的に操業を再開していないと言い、「短期的な供給ひっ迫懸念が生じている」(FerroAlloyNetの3月7日付レポート)。FerroAlloy.netは「生産者側が強気で高値での取引に徹する態度を取っているが、一方で取引先である川下業者は既に十分な製品在庫を保有しているとも噂され、高値での取引がどこまで成立するかを疑問視する声もある」と指摘した。

 

過去3か月間の航空機向けスポンジチタン価格の推移($/kg)

 

　航空機向けスポンジチタンは2023年1月から横ばい。

 

■二酸化チタンはじり高、フェロチタン小動き

 

過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)

　

　全体の6割を占める塗料向けの二酸化チタン価格はじり高。2月27日に仲値$2070/tonを付け、2024年12月中旬の水準に戻した。しかし、直前の価格が4年超ぶりの安値水準だったことを考えると、なお微調整の域にとどまる。

 

過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)

 

　他の形状も微調整ムードが強い。フェロチタンは2月27日に$6.15/kgを付けた。2月半ばに小幅に上げたがまた小幅に下落して2月初旬の水準に戻した。1月に一時急落して節目の$6台を割り込む場面があった。その水準からは戻したものの、急落前の$6.9に向けて上げる気配もやはりない。

 

過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)

　

　四塩化チタンは2月13日に仲値RMB6000/mtの節目を回復した。しかし、その後は1か月間にわたり横ばいが続く。

 

　チタンスラグも硬直気味。FerroAlloyNetによると電気代などのコスト上昇に苦しむメーカーが多く、生産が鈍りがちという。

 

■鉱石価格はやや持ち直す

チタン精鉱

 

過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)

 

　チタン鉱石は3月13日に仲値$372.5/tonを付けた。小幅な変動があったものの、2月下旬の水準でほぼ横ばい。1月初旬以来の高値圏になるが、1月下旬からの1か月間は2021年2月以来ほぼ4年ぶりの安値圏で推移しただけに、力強さは感じられない。

 

過去3か月間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)($/ton)

 

　ルチルは2月1日に付けた仲値$1135/toから横ばい。中長期では2019年5月以来の安値圏にある。

 

<Topics>

3月13日

　

　オーストラリアの40代の男性が、ドナーからの臓器移植を待つ間、チタン製の人工心臓を装着して100日間生存した。この人工心臓を装着し生存した期間としては最長記録。米CNNニュースが3月13日に伝えた。

　装置は米豪人工心臓メーカーのBiVACORが開発した。リニアモーターカーにも用いられる、磁石で固定された浮上ローターを用い、チタン製で、摩耗しやすい弁や機械式軸受はない。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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