リオン(6823) 25/3Q3WEB決算メモ ポジティブ
25/3期半導体向け微粒子計測機が好調で4.6%増収6.5%営利増予想も利益増額期待
株価2435円(4/1) 時価総額300億円 発行済株12336千株
PER(25/3DO予:9.9X)PBR(0.98X)配当(25/3DO予)74円 配当利回り:3.0%
要約
・補聴器、医用検査機器、音響・振動計測器、微粒子計測器の4製品群を軸に事業展開
・25/3Q3は半導体製造工場の増設、増強で微粒子計好調で16.3%増収40.5%営利増
・25/3期会社予想4.6%増収6.5%営利増に変更なく微粒子計の拡大で進捗率高く増額期待
・中計計画で27/3期売上高294億円、営利44億円目標は先端半導体増で前倒し達成期待
補聴器、医用検査機器、音響・振動計測器、微粒子計測器の4製品群を軸に事業展開
同社は理学・音響学の研究を行う小林理学研究所(現一般財団法人)の研究成果を製品化し世に役立てることを目的に1944年に設立された。社名のリオンは「理学」と「音響学」の頭文字を並べ「理音」とカナで表記したもの。現在、補聴器、医用検査機器、音響・振動計測器、微粒子計測器(パーティクルカウンタ)の4製品群を軸とした事業を展開、主要製品の全てが日本国内でトップシェアを誇る。
25/3Q3は半導体製造工場の増設、増強で微粒子計好調で16.3%増収40.5%営利増
25/3Q3は売上高74.50億円(同期比16.3%増)、営利13.09億円(40.5%増)、経常利益13.28億円(41.7%増)、税引利益9.32億円(25.3%増)と半導体向け微粒子計拡大で収益拡大が続いた。
セグメント別では微粒子計測事業が売上高27.64億円(49.9%増)、営利8.43億円(57.9%増)と伸張した。同部門は半導体を中心にエレクトロニクス分野向けが90%を占める。半導体の微細化、高精度化などに伴い微粒子計測の需要が高まり、中国、台湾、韓国、米国など海外向けが大幅な伸長となった。特に同社が得意とする液中微粒子計測機がKS20-F(粒径サイズ20nm)やKS-19F(粒径サイズ30nm)など先端半導体製造向けが台数で2倍弱の伸びで上伸、能力増強と生産効率もアップし利益率も同期比1.5ポイントアップし30.5%となった。
医療用機器事業は売上高33.51億円(3.2%増)、営業利益4.55億円(13.2%増)となった。売上面では5月に発売を開始したリオネット2(耳掛けタイプ)が寄与、一方、医用検査機器は前期にコロナの反動増の一服感から伸び悩んだ。利益面では新製品の試聴器コストが一巡し収益性がQ1ボトムに急回復した。
環境機器事業は売上高13.45億円(1.6%増)、営業利益0.10億円(0.15億円改善し黒字転換)となった。国内では騒音計、振動レベル計の新製品販売で増収も、海外は欧州、中国で販売が低調で売上横ばい。利益は開発費負担が軽減し、わずかながら黒字転換に。
25/3期会社予想4.6%増収6.5%営利増に変更なく微粒子計の拡大で進捗率高く増額期待
25/3Q3累計で25/3期会社予想に対する進捗率が売上高で76.1%、営業利益で82.9%、経常利益で84.6%ながら、25/3期予想は変更せず、売上高269億円(4.6%増)、営利37億円(6.5%増)、経常利益37億円(3.8%増)、税引利益27億円(1.8%増)を据え置いた。
事業別では微粒子計測事業が売上高81億円(7.1%増、進捗率90.9%)、営利21億円(1.8%増、進捗率111.5%)となっている。現状、先端半導体向け液中微粒子計測機が計画を上回って推移、利益では既に計画に対し上振れている。売上面でも25/3Q4が7.37億円となる計算で、25/3Q3比73.3%減、24/4Q3比67.7%減となり、しかも受注環境も良好で受注残も抱えているとのことで現実味がない。このためQ4について大幅な収益上振れが見込まれる。医療機器事業は売上高130.50億円(2.4%増、進捗率71.5%)、営利14.5億円(10.8%増、進捗率59.0%)と計画を下回っている。この要因の中では補聴器で新製品の投入遅れが影響、Q3より新製品効果が表れているものの、2024年の補聴器市場が4%減とみられるため、計画比で未達成が懸念される。環境機器事業は売上高57.5億円(6.1%増、進捗率69.9%)、営利1.5億円(累計1.29億円赤字、2.79億円未達状況)となっている。国内においては能登震災の復興優先で地震計が先送りされ、海外で欧州、中国の不振が影響、利益面では新製品開発費増が影響している。このため環境事業においても会社計画未達成が懸念される。
但し、全体を通じては収益性の高い微粒子計測事業の上振れ寄与が大きく、会社計画に対し収益の上振れが見込まれ、2期連増最高収益更新となろう。
中計計画で27/3期売上高294億円、営利44億円目標は先端半導体増で前倒し達成期待
同社は毎年中計を見直ししており、27/3期に売上高294億円、営業利益44億円を目指す計画となっている。過去の中計推移を見ると、医療機器事業が未達成、一方で微粒子計測事業が25/3期売上高73.5億円→81億円、26/3期75億円→87.5億円、利益も増額修正と、毎期増額で推移している。この背景にはAI半導体を中心とする先端半導体の拡大に伴い、同社の中心機種となる液中微粒子計などが液体中の粒子管理において品質や歩留りの向上のため欠かせないものとなっているため。清浄度とそのレベル変化は微粒子濃度、粒径分布を計測することではじめて知ることができ、測定したデータに基づいて適切な処置と管理を行うことが可能となる。これらの計測を行う装置として最も普及しているのが、パーティクルカウンタ(気中用、液中用)である。具体的には半導体用高純度化学薬品やフォトレジストなどの液体塗布材料中に含まれる粒子管理や、超純水、洗浄用化学薬品(例:酸、アルカリ、有機溶剤、フッ化水素酸)などの洗浄工程に関わる粒子管理に用いられるほか、CMP用のスラリー中の粗大粒子の管理や、表面付着粒子の管理など、生産ライン内や受け入れ時の検査などにも用いられる。一方、気中微粒子計は空気中の微細な粒子を計測することで、クリーンルーム、エアーシャワー、ミニエンバイロンメント(FOUP:front opening unified podなど)などの微粒子管理やフィルタ性能試験等の清浄度管理に用いられている。
現在、微粒子計測器の90%はエレクトロニクス関連が占め、残りはライフサイエンス向けとなっている。この中で、先端半導体デバイス向けは23/3期32.56億円(構成比49.2%)が24/3期43.8億円(構成比57.9%)だったものが25/3期には50億円規模(構成比62%)程度に高まる計画も、さらに構成比が高まる傾向にある。現在、微粒子計測市場は世界市場として300億日本は半導体薬液で高いシェアを有することから同社の液中微粒子計測器の世界シェアも高い。現在、様々なセンサの情報を含めて統合処理を行う清浄度多点監視システム(環境モニタリングシステム)の重要性が高まっており、同社は気中測定、液中測定両機種を手掛けているだけに、先端半導体の設備投資活発化で更なる需要拡大が期待される。また同社はNEDOが開発を進めるBeyond 2nm及び短TAT半導体製造に向けた技術開発にも参画しており、先端半導体の拡大とともに中計を上回る収益拡大が見込まれる。
医療機器事業は中計予想25/3期130.5億円(前中計は135.5億円)に対し未達で推移している。同分野の中で補聴器市場は日本市場に特化、トップシェアを有する(世界補聴器市場は5グループで90%シェアを有する)。現在国内補聴器出荷台数は2023年で65万台、2024年は4%減と推定される。国内は高齢化の進展と経度難聴者層をはじめ補聴器使用者層の増加に伴い、中期的に伸びが期待される。しかも日本は補聴器装着率が低く、今後、見かけ上はワイヤレスイヤフォンと似たデザインの耳掛け型の比率が高まろう。同社は今回、デジタル信号処理技術の向上により、音の再生帯域拡大や細かな調整が可能で、自然で豊かな音を実現できる“リオネットエンジン2" を搭載した「リオネット2シリーズ クオリエンス」を発売、緩やかながら需要拡大が続こう。
環境機器も計画に対し未達で推移しているが、これは欧州、中国の不振、国内では能登震災影響で本来設置すべき震度計の予算が後ずれしていることが影響している。ただし国内については国土強靭化政策により、地震計の設置が進むとみられ、中計予想は未達ながら、大きな差にはならないとみられる。
全体として26/3期、27/3期についても微粒子計測器中心に会社予想に対し上振れし、中計の前倒し達成が期待される。
株価は4/26の本決算が最高益更新し4/30に3270円の高値を付けた後、材料出尽くし感もあり下落、その後7/30の25/3Q1で25.9%営利減となったことで急落、8/5の全体相場急落下で1882円まで下落、その後は業績持ち直しで株価も2500円近辺で推移している。現在、25/3期会社予想EPS219.22円に対しPER11.1倍はプライム電機平均22.2倍に対し割安感があり、計測機器の小野測器(6858)、エスペック(6859)、東亜DKK(6848)などと似通った水準、日置電機(6866)より多少割安な状況にある。現状、25/3期収益予想に変更はなかったもののQ3で15円増配の70円配当をアナウンス、最高益更新かつ増額修正含みである。現在の株価は同社安値平均PER10.1倍に近く、先端半導体関連銘柄であり、国内でも先端半導体工場並びに関連化学材料メーカーの設備増強も本格化しており、高値平均PERでは16.6倍まで買われており、新規にポジティブと評価したい。
*図表は会社説明会資料、HP、インベスターズガイドより掲載
(H.Mirai)
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