近づく『ISO/TC323(サーキュラーエコノミー/CE)総会』、その行方は?DPPてなに?
今年9月下旬に開催を控える『ISO/TC323(サーキュラーエコノミー/CE)総会』。国内では、やや強引に進むその「標準化」に対し、困惑の声も上がる。ある識者が語った。(スライドは全てISO/TC323日本国内委員会事務局2021年7月版より)
日本はどれほど意見を出せるか
CEは2019年9月に賛成多数で可決されたものの、3年経つ今でもまだ「企画文書」が出ていない。
ISO/TC323の議長・幹事国はフランスであり、その構成は議長諮問グループ(CAG)と5つのワーキンググループ(WG)+ JWG(Joint Working Group)14(二次原料)になっている。
WG1では、CEの定義、原理などの基本的部分を決定するものだが、日本としては廃棄物焼却からのエネルギーリカバリーがどう定義されるかが、ひとつの注目点といえる。ここの定義の部分の議論が進まないため、ISO/TC323の規格が遅れているともいわれている。
WG2は、日本主導で行われているが、ここでは我が国からのCE事業のモデルを提供する予定になっている。
WG3ではISO/TC323の指標作成を行なっており、WD(作業原案)の正式コメントを各国から募集中だ。我が国としては、WG1と歩調を合わせながら、指標中に廃棄物処理を含ませ、その中で焼却からのエネルギー回収の定義を行いたいところだろう。今現在、測定項目(インプット/アウトプット)を議論中なので、熱回収に関してはいち早く意見発信するべきであろう。
WG4では特定の論点(例えば機能経済、サービス経済、PaaS(product as a service)など)から分析を行い、ベストプラクティスを提供することを目的としている。日本からも事例をいくつか紹介しているが、採用されるかは分からない。
WG5であるが、これはCE促進のデータシートの在り方を決めるものだ。もともとスタートが遅かったが、EU内では比較的先行していたルクセンブルグがスタートさせた。これはいわゆるDXとの関連が深いが各産業で差異が大きいので、まだ進んでいない。だが、ここにはEUが進める『Digital product passport=DPP』が大きく関わってくる可能性がある。
最後に、JWG14だが、ここでは2次原料を取り扱う際の環境対応を行う。基本はサスティナビリティーとトレーサビリティーの担保だ。2次原料の特性や品質について議論するものではなく、リサイクルの範囲を超え、部品のリユースなどに範囲を広げてくる可能性がある。
Digital product passport(DPP)とは?
さて、WG5で出た『Digital product passport=DPP』とはどういったものだろう。これは、製品の移動に必要になる「(電子的)パスポート」を意味する。いわゆるパスポートは、人が国境を越えて移動した履歴などを書き込む公的な本人証明書だが、DPPは製品の持続可能性を証明する情報として、製造元、使用材料、リサイクル性、解体方法などの情報を含む、製品ライフサイクルのトレーサビリティを確保するものだ。
DPP導入の背景にはカーボンニュートラルやCEの領域でEUが先行しようとの狙いがある。採掘原料はどこから調達し、どこで加工され、どこで最終製品にされたのか、そしてそれらはどのような手段で、どんな経路を運ばれ、CO2をどれだけ排出したか。また再生材の含有率、環境負荷物質(SOC:Substances of Concern)はどれだけ使われ、修理可能性や耐久性はどうなのか、といったCEに関する情報がDPPとして記録され、この提示が求められるようになる。
これらは電子的に管理され、EUの環境基準に適合しない場合、販売許可を与えな維、また高い関税をかけるなどの措置を講じる、などとしている。リサイクルやリユース販売もその対象となると思われる。
DPP適用を優先する商品としては、電池や電子機器、IT機器、繊維製品、家具などの完成品、および鉄鋼、セメント、化学薬品などの中間製品が考えられている。
トレーサビリティに非常に有効となりそうなDXの在り方「DPP」だが、これが標準化されると、循環経済はまた大きく欧州がリードを取りそうだ。
(IRuniverse.jp)
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