PETボトルリサイクル市場に異変!理想よりも経済性追求で暴落
サントリーはTVコマーシャルでもPETボトルのリサイクルの重要性を喧伝しているが皮肉にも現場ではリサイクル離れが生じているという。使用済みPETボトルを扱う業者などによると「使用済みPETボトルの相場が上がりすぎてバージン材のほうが安くなる親不孝相場となり、いまでは使用済みPETボトルの相場は急落の憂き目に遭っている」という。
使用済みPETボトル相場は11月より下がっており、12月にもキロ当たり10円ほど下落。そして年明け1月にも10円、2〜4月にかけても同様に下げて、現状よりも40円ほど下がっていく方向にあるという。現状は140円前後だが、来年2月には100円も割り込むと予想されている。
逆にいうと、これまでが上がり過ぎていた。
特徴的なのは容リ協の落札価格の高騰。
容リ協がまとめた22年度下期の落札単価(加重平均)は、リサイクル事業者などが費用を払って回収する「有償分」が1トン11万7358円だった。上期と比べ5万1018円(77%)高く、過去最高値を更新した。直近安値だった20年度下期の6倍超に達している。事業者が費用を受け取って回収する「逆有償分」を含めた総平均は、同5万1175円(80%)高い11万5371円だった。
上がり過ぎた要因、背景として「PETボトルリサイクル、ペレットメーカーの大手、協栄、遠東がB to B(Bottle to Bottle)でリサイクルPETを、PETボトルにするという競争がここまで引き上げた」と関係者筋。確かに、PETボトルからのリサイクルペレット(rPET)は大人気だった。またBtoBの業者、供給能力が増えすぎたことで使用済みPETボトルは過剰な取り合いが続いていた。
だが、世界的にバージンPETペレットのほうが安くなっている。リサイクルペレットは現在キロ当たり270~280円、バージンPETペレットも同値圏からさらに下落しているということで「逆ザヤ」は広がっているという。
さらに、高い日本市場を目指して、今までは無かった東南アジアなど海外からのPETフレーク(粉砕品)の輸入品も増えているという。
従ってPETの粉砕品やリサイクルPETペレットを輸出する業者は特に苦戦を強いられている。売り場は狭まるばかり。
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リサイクルPETフレークを使っていた日本のPETシートの工場(たまごのパックなど)は、すでにバージンに切り替えており、余計に向け先が狭まっているという。
そしてBtoBのほうでも高い綺麗なPET(A級品)を使わずに、安い事業系のもの(やや汚れているもの=BC級品)も使いこなす方向にも向かっているとのこと。また容器リサイクル法の入札を通さず(落札価格が高いため)自治体や企業から直接契約でPETボトルを引き取る動きも出てきている。従って、必然的に容リ法での指定PETボトルリサイクル業者の処理工場は軒並み採算が悪化しているという。また、下期で高い落札で落とした数量を容リ協に返品する、ということも考えられる。かつては返品はペナルティが存在していたそうだが、現在は特に明確なペナルティはないという。
飲料メーカー(サントリー、キリン、コカ・コーラなど)もこのまま赤字を垂れ流すのは株主に言い訳できないので、原料コストを下げざるを得ない。従って、先述したように高いA級品ペレットを避けて、バージン原料にシフトしているという。
これはかつて1990年代後半にアルミ缶の水平リサイクルである「CAN TO CAN」でも同様の現象がみられた。CAN TO CANビジネスが急拡大するなかで市場参入者が増え、UBC争奪戦がヒートアップし結果的に使用済みアルミ缶(UBC)の相場は急騰したが、飲料缶メーカー側が高いUBCを避けて新地金に走ったことでUBC相場は急落(まさに今のPETボトルリサイクルと同じ)。UBCリサイクル業者の採算が悪化し、いくつかの会社は破綻した過去がある。PETボトルリサイクルでも同様の末路をたどるのだろうか?
(IRUNIVERSE YT)
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