エンビプロ・ホールディングス(5698)23/6H1WEB説明会メモ 収益低迷も種まき進行
23/6期鉄スクラップ数量、単価下落で12.8%減収47.2%経常減予想に減額も下期ボトムに
株価712円(2/17) 時価総額214億円(2/20) 発行済株30102千株
PER(23/6会予:15.1X)PBR(1.34X) 配当14円 配当利回り:1.97%
要約
・23/6H1鉄スプラップ市況安、数量減と厳しく13.4%減収42.3%経常減益
・23/6期、環境不透明が続き期初予想を減額し12.8%減収47.2%経常減益予想に
・三菱マテリアルとのアライアンス、日東化工買収等で新規事業に積極投資
・中期経営計画で27/6期に売上高750億円、経常利益50億円目指す
23/6H1鉄スプラップ市況安、数量減と厳しく13.4%減収42.3%経常減益
リサイクル事業大手。 23/6H1決算が2/10に開示され、2/17に説明会が実施された。23/6H1は、売上高235.82億円(13.4%減)、営業利益8.70億円(41.8%減)、経常利益10.14億円(42.3%減)と低迷した。事業別で資源循環事業が売上高85.29億円(13.8%減)、経常利益7.48億円(46.8%減)に。鉄の取扱高が38億円(24%減)となったが、スクラップ価格が22年7月からの価格急落等で平均価格が16.4%下落、取扱量も廃自動車等の減少、一時的な設備故障などで3%弱減となるなどが影響した。グローバル資源循環事業も売上高168.31億円(16.8%減)、経常利益1.13億円(69.4%減)に。国内高海外安の展開で内外価格差が縮小、収益性が低下し取扱量も20%弱減少した。リチウムイオン電池リサイクル事業(LIB)は売上高7.75億円(2.1倍)、経常利益2.88億円(3.1倍)とCo、Ni、Cuの価格上昇、ブラックマスに含まれるLiの上昇、設備稼働率アップで収益大幅伸長に。
全体の経常利益増減では売買差異3.15億円、ダスト・電力費増等.052億円、為替差損0.82億円、の変動費増、人件費等増1.71億円、設備増等の固定費増などが影響している。
23/6期、環境不透明が続き期初予想を減額し12.8%減収47.2%経常減益予想に
23/6H1の状況を踏まえ、下期も環境の厳しさが継続するとして、期初予想を減額修正、売上高500億円(期初計画比50億円減額、12.8%減)、経常利益22億円(同7億円減額、47.2%減)予想とした。足元、中国の景気減速、エネルギー価格高止まり、サプライチェーン混乱継続などが影響するとした。一方で脱酸素の動きでLIBリサイクル事業は拡大する見通しに。
主力セグメント別ではLIBリサイクル事業を除き減額している。現状、資源価格が8月予想比で上昇も、廃自動車等の金属スクラップ発生量が少なく、会社予想並みの売上に止まろう。また経常利益予想では取扱量減(期初は増加想定)で6.10億円(期初比6.93億円減額)、電力料金等増1.19億円(同0.53億円増額)、為替差損4.36億円(1.20億円悪化)の減益拡大要因に対し、人件費増、その他経費等の抑制を図るも追い付かず、減益幅拡大が避けられないとしている。なお、LIBリサイクル事業は関東エリア新工場稼働などもあり増額予想に。
現状、自動車生産などの遅れが影響、廃自動車等での発生量回復、中国の景気減速などの状況などに変化がなく、会社減額修正並みの収益が見込まれる。
三菱マテリアルとのアライアンス、日東化工買収等で新規事業に積極投資
同社は「持続可能社会実現の一翼を担う」というミッションの元、「脱酸素社会」、「循環型社会」、「分散型社会」実現に向けた課題解決を事業機会として挑戦しているが、今回、三菱マテリアルとの提携、日東化工の買収などで新たな動きを見せている。
まず三菱マテリアルとは22年12月に同社、VOLTA(同社100%子会社:LIB,NiMHB等のリサイクル事業展開)と共同で、LiBのリサイクル工程で製造されるブラックマス(BM:LiBを放電・乾燥・破砕・選別したLi,Co,Niの濃縮滓)に含まれるLi.Co,Niを湿式精錬技術で回収する開発を進めることで合意した。同方式は既に韓国、中国で実用化されているが、日本ではBMの発生量が少ないこともあり、1次加工のBM製造は行っているものの、2次工程の精錬分野での事業化は初めてとのこと。湿式精錬自体はこなれた技術であるものの、BMでの分別など差別化し、湿式精錬での効率を如何に上げるかがカギとなるとのこと。計画では三菱マテリアルの精錬所の一部でプラントを建設、排水処理、銅精錬プロセスででた硫酸の安定調達が可能であり、投資効率を上げて2025年に稼働予定としている。なお日本ではEV普及が遅れていることもありBM調達に難があり、当面2030年までは赤字操業となる見通し。但しEV普及は国内でも加速する方向にあり、国内で先鞭をつけて先駆者利益を獲得し、また将来的には前駆体、カーボンなどのリサイクルも手掛け事業拡大していく方針。このような環境で同社はBM製造拠点の展開も積極的に実行、22年10月より稼働を始めた静岡BM工場に加え24年4月には関東BM工場が稼働予定の他、25年に関西、27には海外でもBM工場を稼働する意向である。LiB処理能力の目標値は2018年の2500tから2024年には7500t、2027年には12500t、海外工場完成時には14000t(2027年に発生するLiB工程廃材の30%相当)の処理能力を目標としており、LiBリサイクル事業のクローズドループの形成が2030年には出来上がることになる。
一方、2/10に大阪ソーダ系の日東化工(5104)のTOB(提示価格490円、同日大阪ソーダが保有全株式120万株、31.2%応募契約締結)を発表、ゴムリサイクルの拡充を図ることとした。日東化工は1949年日東タイヤとして設立、1961年に東証2部上場している。ゴムシート、ゴムマット等のゴム事業、高機能樹脂コンパウンド、樹脂洗浄剤などを主要事業とし、1968年には当時の三菱化成工業が資本参加(139.9万株)したが、2018年2月に三菱ケミカルの「APTSIS20」に基づいてポートフォリオ改革の一環で大阪ソーダに持ち株の大半(120万株)を譲渡、大阪ソーダは川下展開の推進目的でこれに応じて持分対象会社としていた。同社は2015年に廃ゴムのリサイクル及びゴム製品製造販売を行う東洋ゴムチップ(創業1904年の老舗,1962年に東証上場)を2005年に100%子会社としたユー・エス・エスから買収、資源循環事業の拡大の一環としている。東洋ゴムチップは主に廃タイヤのゴムを2~3mmに破砕し、リサイクルチップに加工し、チップ販売とともに人工芝や歩行者用、踏切用、仮設用などの加工度の比較的低い製品を提供している。これに対し日東化工はコンパウンド事業、ゴム加工事業を展開。コンパウンド事業では0.1~0.2mmまで微細化した原料をもとに付加価値を高める事業を展開、自動車タイヤやチューブ、各種自動車部品向けに多種多様な要求に応じた高機能樹脂コンパウンドを供給している。またゴム加工事業では東洋ゴムチップが手掛けていないゴムシート、弾性ゴムマット、一部フォークリスト向けタイヤなどを手掛けており、加工度の高い事業が特徴となっている。現状、同社のゴム製品売上は23/6H1で6000t、金額では10億円規模であるが、日東化工が23/3HIで売上高18.94億円となっており、24/6期には年間60億円規模となる見通し。なお同社は両社事業のシナジー効果が得られること、また今後、廃タイヤにおいては従来の廃タイヤを燃料として利用するサーマルリサイクルからタイヤタイヤというマテリアルリサイクルが求められる時代となるとの認識で、年間100万トンの廃タイヤの中で繊維が使われていないトラック、バス用20万トンをタイヤtoタイヤとしてマテリアルリサイクルすることも視野に入れている。現在日本はリサイクル率こそ85.9%と高いものの熱利用が60.2%と多く、原型加工タイヤでの再生比率はわずか5%でしかなく、今後のシナジー効果に加え新たな事業展開も期待される。
中期経営計画で27/6期に売上高750億円、経常利益50億円目指す
同社は昨年8月に経営計画を策定、2050年の脱炭素社会の実現に向け、低炭素プロセスによる地上資源由来の素材メーカーに変革することを表明、サスティナビリティ戦略の目標として、27/6期に売上高750億円、経常利益50億円を目指す計画を掲げた。
事業別には資源循環事業売上280億円、経常利益38億円、グローバルトレーディング事業売上520億円、経常利益15億円、リチウムイオン電池リサイクル事業売上33億円、経常利益2億円、その他売上7億円、経常利益2億円の達成を目指す。
中心となる資源循環事業では焼却灰からの金銀滓回収と焼却灰の資源化、全国広域での解体工事確保、プラスチックのリサイクルに向け新技術開開発、新法整備への対応、自治体との関係性強化などを図る。グローバルトレーディング事業では取扱量の拡大(54万tを100万t)を目指し、電池スクラップなど取扱品目の拡大、リユース流通の拡大を実行する。リチウムイオン電池リサイクル事業は当面投資先行で2030年に向けた長期のビジョンで臨むなどが骨子となっている。
現状、経済環境の不透明感、また半導体不足による自動車生産の回復遅延、世界的な景気減速などで24/6期は上期まで収益の停滞が懸念されるものの、新規設備投資効果、また今回の日東化工の買収などもあり、24/6期は通期で収益の回復が期待される。また世界的に環境リサイクル、リユース対応などが加速する中で、同社中計目標の超過達成も期待される。
さらに同社は企業価値創造の長期的取組も行い、利益の30%を成長投資に向け、研究開発にも10%を配分、更なる企業価値拡大に期待がかかる。
(H.Mirai)
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