ステンレス鋼材国内市場近況2023 #11 4月契約はNi系で25円下げ、Cr系10円上げの見通し
日鉄ステンレスからの発表は来週になるだろうが、アロイリンクサーチャージの計算でいけば4月の店売りステンレス鋼材価格はNi系でキロ当たり25円の下げ、Cr系は4-6月の高炭素フェロクロム長契価格が上昇したことでキロ当たり10円の引き上げ、となる見通し。
→ 23年4-6月高炭素フェロクロム長契は前期比23セントUP
現状、304系冷延薄板国内材の「希望販売価格」はキロ当たり670~680円だが、「実勢」は640~650円で推移している。一方で輸入材は540~550円。需要は相変わらず芳しくない。ステンレスミルの減産も続いているが、やはり4-6月は回復見込みはなく低調に推移するとの見方が支配的。コイルセンター関係者によると
「2月、3月にメーカー決算でロール材を押し込まれたが、それで倉庫が一杯一杯になってやむなく安値販売しているといった状況。しかし値下げしても動きは鈍い」という。
加えて、その2月、3月に入ってきたコイルの品質が悪く、顧客からのクレームが続出しているという。例年、この時期の納品はメーカーが焦って売り出すため研磨品がそうでなかったり、耳残しがあったりと散々。輸入材のほうがまだ良い、という製品も散見されるとのこと。店売りのSPOT品でなく、ひも付きでもクレームが出ているという。
LMEニッケル相場($/ton)と国内304系冷延薄板価格(¥/kg)の推移
LMEニッケル相場($/ton)とアジアの304冷延コイル相場($/ton)の推移
(アジアの304冷延コイルはニッケル相場に応じて下落 4月初旬現在で2,200ドル)
さりとて、まだ640~650円でも過去からみれば高水準。ステンレスメーカー側は輸入材価格に合わせるまで値下げすることは考えていないようだが、コイルセンターは実需が伸びないなかでなんとか在庫を出したいゆえ、実勢値はもう一段下がると考えられる。
「それでも600円を下回るようなことはない」(コイル製品ディストリビュータ筋)
NI系はやはり半導体製造装置の不振がブレーキになっている。半導体製造装置大手の東京エレクトロンがかねてから6月が最も落ち込みが深い、と予想していたが、この通りとするならばNi系ステンレスの回復も早くて7月、8月以降、ということになろうか?しかし秋でも回復は難しいのでは?という悲観的な見方も少なくない。
Ni系の中厚板についてもプラント関係の需要が伸び悩んでいるなか低調。ステンレスではないが、普通鋼でも動きは鈍い、というコイルセンターからの報告からすると、つまりは日本国内の実態経済として、海外からの旅行者は増えてはいるものの、製造業はいまひとつ、という姿が浮かびあがる。
Cr系は前述したようにおそらくはキロ当たり10円上げとなろう。一般の430系薄板では370~380円、業務用厨房向けは350~360円。
(追記)
4月13日に日鉄ステンレスはニッケル系についてはキロ当たり20円下げ、クロム系は2か月連続で横ばい、とした。
(IRUNIVERSE/MIRUcom YT)
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