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海底鉱山採掘なるか

 3月31付けロイター通信によると、国際海底機構(International Seabed Authority: ISA、注1)は、海底での採掘を希望する企業の申請を7月から受け付けるとの報道。この決定は、ISAが過去2週間にわたり新たな深海採掘基準について議論した結果であるが、今後物議を醸すらしい。

 

多金属団塊(Polymetallic Nodul)

 その内容は、ハワイとメキシコの間にある北太平洋のクラリオン-クリッパートン海域(CCZ)周辺の公海域の水深4〜6kmの海底にある多金属団塊(Polymetallic Noduleポリメタル・ノジュール 注2)と呼ばれるジャガイモ大の岩石から、電池の主要材料であるコバルト、銅、ニッケル、マンガンを取り出すもの。

 

 ロイターによると、ISAの理事会は3月29日にジャマイカで会合を開き、申請企業が7月9日から許可申請を行えるようにする決議案をまとめた。この期限は、島国ナウルが2021年に取った措置に従って定められた。さらなる細部については理事会が7月までにオンライン会議を開き、申請書の受領後の対応を議論する予定だという。

 

 環境保護団体のグリーンピースは、クジラやその他の海洋生物に害を及ぼす可能性があるとの懸念から、反対の立場を表明している。

 

 推進派は、スイスのグレンコア社(Glencore PLC)に金属を供給する契約を結んでいるTMCザ・メタルズ社(TMC the metals company Inc.)で、この採掘プロジェクトを擁護する最も著名な企業の1つであり、その幹部は、この深海での採掘は、従来の陸上での電池金属の採掘よりも悪影響が少ないと考えていると繰り返し述べている。

 

世界の趨勢

 世界的に見て中国は深海鉱山の探査をリードしているが、チリ、フランス、パラオ、フィジーなどの国々は、環境への懸念と十分な科学的データの欠如を理由に、深海鉱山の探査を世界的にモラトリアム(一時凍結)することを求めている。

 

 2050年カーボンニュートラルの実現に向け大きく舵を切っている世界にあって、クリーンで持続可能な未来社会を実現する主要技術に欠かせない金属鉱物、クリティカルミネラルの供給量が需要に追いついていないというジレンマを人類は抱えている。それはパリ協定で採択され、一連の国連気候変動枠組条約締約国会議(現在はCOP27)で議論されている「ネットゼロ」社会への急速な移行を支えるレベルにないと多くの科学者、専門家の指摘もある。

 

ISAと日本との関係

 ISAのサイトによると、日本はISAの理事国メンバーであり、ISAが推し進めている深海探査・採掘に関わる人員の教育訓練にもさまざまな形で貢献している。ISAの2010年の推計によると前述の「多金属団塊」の埋蔵量は約300億トンとのことで、この採掘が将来商業ベースに乗れば、日本にとってはかなりの吉報になるはず。勿論、環境保護派からの反対の意見等も予想されるが、その時は同時並行でクリティカルミネラルのリサイクル研究も進むことが期待される。

 

 ISAはこれまでに、深海底鉱物資源の概要調査・探査規則を採択している(マンガン団塊:2000年採択、海底熱水鉱床:2010年採択、コバルトリッチクラスト:2012年採択)。この規則に従い、マンガン団塊については我が国からは深海資源開発株式会社(DORD)が、コバルトリッチクラストについては独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公認コントラクターとして探査活動中。


 

注1) 国際海底機構(ISA)は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、同条約のすべての締約国を構成国として、1994年11月16日に設立された,事務局をジャマイカの首都キングストンに置く国連専門機関。その活動目的は、国連海洋法条約が「人類の共同の財産」と規定した深海底(すべての沿岸国の大陸棚の外側にあっていずれの国の管轄権も及ばない海底及びその下)の鉱物資源の管理を主たる目的とし、国連海洋法条約及び同条約第11部の実施協定の規定に従って、深海底における活動を組織及び管理すること。

 

注2) 多金属団塊 Polymetallic Nodule

マンガン団塊とも呼ばれ、水深4000~6000mの一部の海床にジャガイモ程の大きさの金属を多く含んだ塊が海床に半埋没状態で分布する。この金属塊はマンガンを多く含むが、銅、ニッケル、コバルト、そしてレアアースも僅かに含んでいる。玄武岩、石灰石や海床に沈んだサメの歯などの核となる物質が中心に存在し、そこから年輪を重ねていくように成長して塊を成すようになる。成長速度は100万年で1mm程度と言われており、海洋鉱物資源の中でも再生には極めて長い時間を要するのが特徴。もっとも多くの資源量が確認されているのはハワイ南方沖のクラリオン・クリッパートン断裂帯周辺の公海域である。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 
 

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