新着情報

2024/05/02   中国の三元系、LF...
2024/05/02   6月19日‐20日...
2024/05/02   東京製鐵:省エネ法...
2024/05/02   住友商事:アンバト...
2024/05/02   加パンアメリカンシ...
2024/05/02   6月19日‐20日...
2024/05/02   チタン:貿易統計と...
2024/05/02   EVバッテリーリサ...
2024/05/02   原油価格の動向(5/1)
2024/05/02   カザフスタン、金属...
2024/05/02   ゲルマニウム価格は...
2024/05/02   中国政府 再生資源...
2024/05/02   中国 自動車業界で...
2024/05/02   バナジウム電池は重...
2024/05/02   中国の原子力エネル...
2024/05/02   ローツェ(6323...
2024/05/02   MARKET TA...
2024/05/02   二次電池輸出入Re...
2024/05/02   炭酸リチウム輸入R...
2024/05/02   (速報)2024年...

ヨコオ(6800) 23/3期WEB取材メモ 悪材料出尽くしでややポジティブ

23/3期車載低迷で16.6%増収13.1%経常減、24/3期1.2%減収51.5%経常減予想は増額も

株価1762円(6/22)   時価総額420億円    発行済株23849千株

PER(DO24/3期予10.4X)PBR(0.87X) 配当(24/3予)44円  配当利回り:2.5%

要約

・23/3期16.6%増収13.1%経常減と2/9減額予想比経常利益未達、減損等で税引32.5%減益

・24/3期は車載通信黒字化も回路コネクタ減や無線通信不振で1.2%減収51.5%経常減予想

・中期経営目標で26/3期に売上高900億円、営利81億円は構造改革で前倒し達成期待

 

23/316.6%増収13.1%経常減と2/9減額予想比経常利益未達、減損等で税引32.5%減益

 

 23/3期は売上高779.62億円(2/9減額修正比9.62億円増額、16.6%増)、営業利益47.39億円(同4.61億円未達、1.2%増)、経常利益56.75億円(同6.25億円未達、13.1%減)、税引利益31.47億円(同8.53億円未達、32.5%減)と、22/3期5期連続経常最高益、6期連続税引利益更新から、一転減益に転じた。

 

 セグメント別では車載通信機器が自動車減産、物流混乱の中で為替見かけ膨らみ売上高465.2億円(2/9予想比6.2億円増額、16.1%増)も、営業損失20.94億円(同4.44億円悪化45.1%赤字拡大)と大ブレーキとなった。営業利益の増減要因では中国での労務費高騰で6億円、償却費増、経費増などその他固定費増5億円、在庫評価を低価法に変更、一部高原価在庫を不良在庫として処分損計上した事で5.5億円の減益効果に対し、コストアップ分を値上げなどで回収した影響が10億円寄与しているとのこと。同社としては一過性の損失をQ4に全て計上したとのことで、これがなければ2/9のQ4での営業利益黒字転換予想0.78億円に対し上回っていたとの判断している。なお、品目的には全体の4割弱を占める主力のシャークフィンアンテナが装着率の高いSUV向けが堅調で売上増額、売上の3割弱を占める銅価の高止まりも有り材料比率の高い中継コードも売上増額着地となった。また最大手顧客の北米トヨタ向けは売上高100.40億円(32.7%増)と、為替円安分が20%としてもこれを上回る伸びを確保している。一方これを除くと360.05億円(10.7%増)に止まり、北米トヨタ以外では半導体不足による数量減影響もあったとみられる。なお、不良在庫として評価減を計上したのは、アンテナ事業は2~3年前に入札が行われた時に単価がほぼ決定してしまい、当時の円高局面に対し、円安が直撃、中国の労務費、仕入原材料の上昇が嵩み、在庫簿価が売価を上回ったために一括処理したとのこと。既に不良在庫は前期末に払底したとのこと。

 

 回路検査コネクタは売上高223.74億円(同5.74億円増額、26.9%増)、営利61.69億円(同0.69億円増額、26.6%増)と伸長した。部門別では全体の8割弱を占める後工程テストソケットがインテルの不振がある中でも2/9の減額に対し、上振れて着地。これはインテルのウエイトが高いながらインテル以外のアナログ半導体向け、間接的にAIチップに絡んでGPU向けの拡大、加えて為替が想定よりも円安に推移した事による。なお、クアルコム向けを中心とする前工程の売上はほぼ計画線で着地、クアルコム以外の新規ユーザー向けはほとんど寄与していない模様。RF向けのYPXも計画通りで推移、こちらはフル生産で協力工場での増産が間に合わず、計画並みに止まったとのこと。利益の増減要因ではやはり労務費が7億円、償却費・経費増6億円、原材料価格上昇3.5億円の減益影響があったものの、増収効果、円安効果による29.48億円の増益効果が大きく、営業利益率を維持した。なお、四半期推移では半導体需要の急激な低迷に加え、Q4でのスマホの通常の季節要因(前期はイレギュラーでQ4も好調維持)などがあり、Q4だけを取り出すと売上高39.58億円(同期比17.8%減)、営利2.44億円(82.3%減)と急激に収益悪化となっている。

 

 無線通信機器は売上高90.67億円(同2.33億円未達、0.8%減)、営利6.64億円(同0.86億円未達、47.1%減)と従来高収益だったスプリングコネクタの不振が影響、期初計画比で半減と、大幅減益に。売上面では7割を占めるスプリングコネクタが主力ユーザーであるPOS端末メーカー向けでシェアダウン、計画比大きく減少、またスマホの販売不振でサムスン向けのワイヤレスイヤホン向けも失速した。一方、医療用微細部品はほぼ計画並みに推移した。営業利益の増減要因では、MIX悪化で2億円の減益効果、労務費1.9億円増、先行投資など固定費増2億円などが響き、利益半減を余儀なくされた。四半期推移ではQ4で在庫調整影響も有り売上高 16.23億円(29.7%減)、営業損失2.38億円(4.49億円悪化し赤字転落)となっている。なお医療用微細部品は先行投資を行っている事もあり利益は労務費増などで赤字拡大しているとみられ、安定的な利益源だったスプリングコネクタの高収益が崩れたことの影響は大きいとみられる。

 

 全体の利益では、営業利益の減額に加え、為替差益の減少2.44億円、持分法適用会社の投資損失6.88億円が有り、営業外収支が9.11億円悪化し、経常利益は減益を余儀なくされた。さらに税引利益は車載通信事業での減損損失8.63億円、車載、無線通信での構造改革費用など2.20億円、原田工業との和解金1.53億円など12.81億円の特別損失計上も行ったため、税引利益ではさらに減益幅が拡大する事となった。

 

 

24/3期は車載通信黒字化も回路コネクタ減や無線通信不振で1.2%減収51.5%経常減予想

 

 24/3期会社予想は売上高770億円(1.2%減)、営利32億円(32.5%減)、経常利益27.5億円(51.5%減)、税引利益47億円(0.8%増)予想。高収益の回路コネクタが半導体生産、開発投資の遅れの影響、無線通信機器の収益改善の遅れなどで、微減収ながら大幅減益予想とした。なお半期ベースでは24/3H1が10.5%減収85.7%営利減に対し、24/3H2が8.6%増収、営利2.2倍予想と下期に大幅回復する見通しとしている。

 

 事業別では車載通信機器が500億円(7.5%増)、営利11億円(31.94億円改善し黒字転換)予想。自動車生産が軌道に乗り、トヨタなどが過去最高の生産を行う等、売上が堅調に推移、利益面では23/3期に一時費用5.5億円、特損なども計上し,前Q4では一時費用を除くと営業黒字となっているとのことで、Q1から営業黒字が可能とのこと。加えて前年度実施した中国での人員削減を今期も継続して実行、一方では値上げの浸透、シェア向上指向から利益率重視への販売姿勢の転換等で損益分岐点売上高をさらに20%引下げる事で営利率2.2%まで引上げ、1$=140円(想定は1$=130円、1円の円安で0.3億円程度営業利益減の感応度)でもQ1から営業黒字が出せる体質ができているとのことであるが、年間3億円程度の営業利益減額は追加の固定費削減でカバーできるとみられる。なお、金額の開示はないが、海上コンテナ運賃が上海→ロサンゼルスで前年同月比79%減と、正常化してきており、海上運賃がピーク時10倍に跳ね上がった前期に対し、輸送費の減額が大きく寄与すると見られる。

 

 一方で回路検査は売上高185億円(17.3%減)、営利22億円(64.3%減)と厳しい見通し。特に受注推移が2022年Q1のピークと比較し、現在は40%~50%の範囲に低迷、Q1をボトムと見ているものの、Q2でピーク時の70%、年明けのQ4で漸く80%~90%まで回復する前提にしている。内容としては中心の後工程でインテルの不振が継続、GPUやインテル以外の取込みを進めるものの、効果は限定的とのことで20%以上の落ち込みを見込む。前工程でもミリ波対応の遅れが世界的にも出ており、クアルコム向けのプローブビジネスがスナップドラゴン向けのRFトランシーバユニット検査など新モデルの投入遅延などが影響する見通しで、新モデル効果があっても伸び悩むとみている。YPXについてはスカイワークス向けが順調に拡大、協力会社の増産対応も整い前期の5割増に続き3割強の伸びを見込む。半期予想では24/3H1が売上高75億円(同期比42.5%減)、営利2億円(同95.4%減)、24/3H2が売上高110億円(同18.0%増)、営利20億円(同12.3%増)予想。特に上期は後工程をインテルの不振継続で売上半減予想としており、下期は回復も23/3H1の7割水準までとしている。利益面でも1$=130円前提で(5.49円円高想定)として、操業度効果が落ち、投資負担増も有り、大幅減益予想に。但し、現状は為替が想定より10円円安に推移、おおよそ1円で年間1.6億円程度のプラス効果があるとみられ、営業利益ベーで16億円程度は増額されるとみられ、営業利益は大幅増額が見込まれる。

 

 無線通信機器は売上高85億円(6.3%減)、営業損失1億円(7.64億円悪化し赤字転落)予想。世界的な景気低迷でPOS需要の低迷が続きシェアダウンも影響、中心のスプリングコネクタが20%弱減少と想定、医療用は手術の回復、新製品寄与で2割程度伸びる想定も全体を補えない見通し。利益面では操業度低下、MIX悪化で上期赤字、下期は医用関連が黒字化する見通しで全体でも黒字化も、絶対水準は23/3H2と大きく変わらない前提に。こちらも為替影響が利益に大きく影響しないと見られ、会社想定の利益が見込まれる。

 

 全体として、半導体向けの収益低迷が大きく、無線通信機器の体質改善に時間がかかり、車載通信はリストラ効果で黒字化も、半導体の収益悪化を補えない見通し。但し、為替全体では10円の円安効果が期待でき、13億円程度の営業利益上乗せが期待される。

 

中期経営目標で26/3期に売上高900億円、営利81億円は構造改革で前倒し達成期待

 

 同社は今回、中期経営計画として26/3期に売上高900億円、営利81億円を目指す経営目標を公表した。従来、25/3期に売上高880億円、営業利益106億円目標としていたものが、車載通信機器の収益改善の遅れ、安定利益を稼ぎ出していた想定外の無線通信機器の収益悪化等で、実質的には為替円安で売上は増額イメージも、利益は大幅減額の中計予想となった。車載通信機器500億円、回路コネクタ280億円、無線機器100億円、インキュベーションセンター(新規)20億円予想。前回の2025年3月期予想に対し、車載が30億円増額、回路が20億円減額、無線機器が110億円減額、新分野として20億円加えた予想に。但し、為替前提を前回は1$=140円、今回は1$=130円を前提としており、140円に置き直した場合は売上がさらに上振れ、利益も13億円程度嵩上げされると見られる。それでも営業利益想定が前中計25/3期予想営利106億円に対し94億円程度と、収益性の悪化は課題となる。

 

 会社側では車載関連について、従来のシェア重視の姿勢から収益性確保に舵を切り、収益性に勝る価格設定を受入れてくれる非日系メーカーへの拡販、中国での更なる人員削減を断行する計画。特に日本の販売台数を超えたインド市場に注力、既にローカル企業から多くの注文を獲得、日系では3~4年時間を要す量産化について、インドは2年で量産納入の計画になっており、その効果は25/3期にも寄与が期待される。利益率の予想は開示されていないものの、26/3期には営業利益率3%程度まで回復する見通しに。

 

 回路検査部門は、半導体生産の本格回復が見込まれ、しかも後工程では同社の得意とする微細、多ピン対応、FR対応などのニーズが高まろう。また低迷しているインテルも米国工場、欧州にも巨大投資を行うことを発表するなどで挽回生産も寄与が見込める。加えてAIに関連してGPU、AIチップなど、インテル以外の需要もオンされてこよう。また前工程ではクアルコムに加え、第2、第3のユーザー向け量産が見込まれ、こちらも改めて成長が加速しよう。YPXは増産効果がフル寄与し、引続き高成長を維持しよう。全体として、会社計画は控え目と見られ、円安効果も加わり、会社予想を上回る収益が見込まれる。会社側では営業利益率20%を想定していると見られるが、微細化、RF対応など、付加価値製品の構成比が高まることから、23/3期並みの営利率25%程度の確保が可能と判断、同部門は大幅な上振れ達成が期待される。

 

 無線通信機器は改めて物流投資の拡大、省人化投資でのPOS端末による自動化などでスプリングコネクタ需要の本格回復が見込まれる。加えて組立工程の無人化促進で中国での人海戦術のコスト増を抑制できる見通しで、収益力も復元しよう。会社側では同部門は10%程度の営業利益率を想定している模様であるが、医用部門の黒字化も含めて更なる利益率の回復が見込まれ、従来の営利率13%程度への復元が可能と判断、売上は顧客選別も行う見通しで会社想定並みも、利益は会社想定を上回ってこよう。

 

 全体として半導体回路検査部門の収益上乗せ、車載、無線事業での利益上乗せが期待され、中計の1年前倒し達成も視野に入ってこよう。

 

 株価は24/3期会社予想EPS85.8円に対しPER20.8倍は大幅減額のあおりでプライム電気平均PER17.4倍を上回り、割安感はない。また山一電機10.8倍、エンプラスの10.6倍に対しても割高感がある。しかし為替前提が130円であり、回路部門の収益復元力を慎重に見過ぎており、実際は山一並みのPERと判断される。また中計を実質減額しているが、今後の半導体需要の回復を考慮した場合、改めて新中計の収益1年前倒し達成が見込まれることから、24/3Q1で悪材料出尽くしとなるタイミングでややポジティブな動きに変化してくると思われる。

 

 

 

(Mirai)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る