政府「物流革新緊急パッケージ」を決定
政府は10月6日、わが国の物流革新に関する関係閣僚会議を開催し、「物流革新緊急パッケージ」を発表した。運転手不足が本格化し、輸送能力の大幅な低下が懸念される中、具体策として以下の3本柱での取り組みを決定した。
1.物流の効率化
2. 荷主・消費者の行動変容
3.商慣行の見直し
本稿では「物流の効率化」でも取り上げられた幾つかのトピックに焦点を当ててみた。
1.「ヒトを支援するAI(人工知能)ターミナル」
世界の主要港湾では顧客、港湾利用者に対する当たり前のセールスポイントとなっている港湾物流の効率化と生産性の向上に向けた「ヒトを支援するAI(人工知能)ターミナル」、所謂、港湾の省力化・電子化を即効性のある設備投資・物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を通して目指す。
港湾利用者には荷主を始め、海運業、港運業、陸運業、倉庫業などの様々な利害関係者がおり、それらの港湾物流手続きの約半数が依然として紙、電話、メール等で行われているといわれている。これを解消すべく国土交通省はコンテナターミナルでの労働環境と世界最高水準の生産性を確保するべく、AI等を活用したターミナルオペレーションの最適化に関する実証実験等を行うとともに、遠隔操作による荷役機器の導入を促進する取り組みを行っており、事業者(ターミナルオペレーター)が導入検討する際の「導入ガイドライン」も作成している。
(出典:国土交通省)
2.新・港湾情報システム「CONPAS」
上図の中にあるCONPASとはContainer Fast Passの略で、コンテナターミナルの搬出・搬入ゲート手続きを効率化するため、国交省関東地方整備局が2017年度に開発した新・港湾情報システムのこと。コンテナターミナルのゲート前混雑の解消やコンテナトレーラーのターミナル滞在時間の短縮を図り、コンテナ輸送の効率化と⽣産性の向上を⽬的としている。東京港ではCONPASを活用したコンテナ搬出入予約制事業を行っている。
CONPASと連携して対を成しているのは、「サイバーポート」(Cyber Port)で、船社、海貨業者、荷主などの港湾利用者による港湾物流手続を電子化することで業務を効率化し、港湾物流全体の生産性向上を図ることを目的に国交省が開発したオンライン・プラットフォーム(https://www.cyber-port.net/)で10月1日現在、575社が導入している。
3.陸路から鉄路へ ― 31フィートコンテナ
国内輸送では官民一体となり、モーダルシフトと真剣に取り組んでいるが、陸上トラック輸送から鉄道・内航海運への輸送量・分担率を、今後10年程度で倍増することが「物流革新緊急パッケージ」でも強調され、今後の予算面での支援も約束された。
トラック輸送から鉄道輸送へのシフトを促すものとして注目されるのは、JR貨物が開発した、従来の12,20フィートコンテナに加えて、大型トラックと同等の積載容量を持つ31フィート・ウイングコンテナだ。JR貨物は、2023年7月に20フィート海上コンテナを受け入れられる低床貨車の開発を発表し、2025年度に実用化される予定で、40フィート海上コンテナも中長期目標としている。
以下の写真はその31フィート・コンテナ(淡青色)で従来の12フィート・コンテナ(あずき色)、通称「ゴトコン」が背後に多数並んでいる。
(出典:JR貨物)
4.フェリー・Ro/Ro船利用による海陸一貫輸送
ドライバーの運転時間短縮、燃料費や高速代などのコスト節減、効率的な大量輸送、CO2排出量削減という諸観点から、今見直されているのがフェリー・Ro/Ro船利用による海陸一貫輸送へのモーダルシフトだ。
海陸一貫輸送とは、主にセミトレーラー(荷台付きの被牽引車)を使用し、工場などの出荷先から納品先などへ海上輸送と陸上輸送の双方を組み合わせてドアツードア(door to door)で貨物を輸送する方法。
(一社)日本長距離フェリー協会は、片道の航路距離300km以上で、陸上輸送のバイパス的な役割を果たすフェリー航路を有する9社で構成されているが、 目下、全国15航路に37隻の大型カーフェリーが就航しており、 会員船社の運航する航路の所要時間は、関西~九州は半日程度、京浜~九州・北海道は約1日程度とのこと。
今後はCO2排出量を削減し、環境負荷の低い大量輸送を実現するものとして、モーダルシフトの大きな受け皿となる可能性を秘めている。
(IRuniverse H.Nagai)
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