中国の銅産業に異変の兆し? 政府が生産抑制策を検討か、正威国際にも不穏な動き
中国の銅産業に異変の兆しが出ている。米ブルームバーグ通信が10月31日に消息筋の話として伝えたところによると、中国政府は銅生産の抑制策導入を検討しているもようだ一方、銅取引を手掛ける正威国際集団(Amer)をめぐって受注中止や従業員の離脱が伝わり、不穏さが感じられる。
■5年以内に生産抑制策を導入か
ブルームバーグによると、生産抑制策は5年以内に実施する可能性があるようだ。中国では銅生産が増えているが、製錬需要から銅輸入量が急拡大して供給過剰に陥っている。さらに、中国政府は銅を含む非鉄金属に関し、2025年までに排出量をピークアウトさせるという脱炭素目標を掲げているため、この目標実現のためにも生産を抑制する必要を感じているとされる。
ただ、この消息筋は、政府は銅生産に上限を設けるのではなく、まずは既存の製錬所の事業を終了させることから始めることも論議していると話したという。中国は既にアルミニウム、鉄鋼、石油などで生産を制限している。
■受注中止やトレーダー離脱の報道
一方、正威国際を巡ってはmining.comなどの外電が10月31日、銅取引を手掛ける同社の子会社が、既に上海先物取引所での受注を中止したとの消息筋の情報を伝えた。正威国際を巡ってはこれに先立つ10月30日にも、トップ現物トレーダーやデリバティブトレーダー、運用や財務の責任者などの複数の従業員が離職しているとも伝わっていた。
いずれも、長引く不動産市況の悪化に伴い財務状態が傷んでいることが背景にあると取りざたされている。正威は銅の採掘から冶金、取引、貿易などを手掛ける業界大手で、創業者である王文銀氏は「銅王」の異名を取る。
中国の銅業界をめぐっては10月初旬、西安邁科金属国際集団の創業者兼会長の何金碧氏に拘束観測が浮上したばかり。こちらも不動産不況のあおりを受けた邁科の業績悪化が拘束の背景にあるとの見方があった。
関連記事: 「銅のパイオニア」、中国警察当局が拘束か 消息が不明 外電報道 | MIRU (iru-miru.com)
■価格は堅調だが
もっとも、上海先物取引所の銅価格は過去1年間にわたりほぼ堅調に推移している。10月の平均価格は1トン=6万6629元と、1年前に比べ6%高い水準にある。
過去1年間のSHFE銅価格の推移(RMB/ton)
(IR Universe Kure)
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