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コンテナ運賃動向(2023年11月)―安値安定

 コンテナ貨物量が徐々に回復し、アジア18カ国・地域発米国向けコンテナ輸送量も増加中で、それと比例して米国港湾のコンテナ輸入貨物量も10月にはコロナ禍前の水準に戻ってきているが、運賃は僅かな上下変動を繰り返しながらも依然として低迷している。

 

 明るい兆しは、停滞していた欧州航路も日本発を含む東アジア発北欧州向けのコンテナ輸送量が増加中で、運賃も徐々に上昇傾向にあるようだ。このように物量回復も運賃低迷の中、コンテナ船社は大幅な減収減益に直面しており、航路の合理化や欠便などコストを抑えながら収益の改善を図っている最中だ。

 

 4月以降コンテナ運賃動向をノルウェーのゼネタ(Xeneta)社のコンテナ運賃情報「Xeneta Shipping Index by Compass」(XSI―C)https://xsi.xeneta.com/ で動向を追っているが、過去1ヶ月の間で一時上昇を見たものの後半では下落に転じ、11月末の時点ではほぼ前月並みの水準にあるようだ。但し、欧州航路では日本発を含む東アジア発北欧州向けのコンテナ輸送量が増加、運賃も上昇傾向にあるようだ。

 

 対象は40フィート・コンテナのスポット運賃で、各種サーチャージも含まれたもの。

 

(単位:米ドル)

 

 Xenetaとほぼ同時期のFreightos Baltic Index (FBX) の世界コンテナ運賃指標で東アジア発北米西岸ルートをみると、過去1ヶ月で100ドル以上の上昇で1,613ドル(11月24日)、Drewryでは過去1ヶ月間で一時370ドルの上昇を見たが先週末では2,000ドル(11月23日)だった。

 

日本発の運賃はどうか?

(公財)日本海事センターが公表している日本発の運賃を見てみると、太平洋横断航路で2月から7月にかけて下落傾向が続いていたが、8月に入って上昇,9月に微増,10月には一転して下落。下図参照。

 

(単位:米ドル/40ft)

 

日本・アジア/米国間コンテナ貨物の荷動き(TEU: 20フィート換算)

 同センターが11月28日発表した2023年10月のアジア(18 ヶ国・地域)から米国へのコンテナ荷動き量は、前年比 13.7% 増の20フィート換算で177.5 万個。1-10 月の累計では、前年同期比 15.9% 減の 1,532.8 万個。

   

 国別では、日本は 8.7% 増となる 5.7万個、中国は19.8% 増となる100.5 万個、韓国は 19.3% 増となる11.1 万 個、台湾は 6% 増となる 6.3 万個、ベトナムは 5.9% 増となる 20.4 万 個、インドは 3.6% 増となる 9 万個。   

 

 地域別では、ASEAN は 5.6% 増となる 41.7 万個、南アジアは 0.4% 減となる 11.6 万個。

 

 品目別では、「家具、寝具など」は 9.7% 増の 28.9 万個、「機械類」は16.5% 増の17.3 万個、「繊維類及びその製品」は18.3% 増の17万個、「電気機器、AV機器など」は19.3% 増の15.3 万個、「プラスチック及びその製品」は 17.7%増の14万個、「玩具、遊戯用具、スポーツ用品」は 23.9%増の 12.5万個、「自動車部品など」は 7.1% 増の 9.5万個だった。

 

イスラエル情勢

 イスラエル船社のZIMは11月27日、一部航路を変更し、アラビア海・紅海を迂回すると通知、イスラエル・ハマス戦争の影響でイスラエル関連の商船が拿捕されるなどの被害が発生していることを受け潜在的なリスクに対処するための措置としている。同国最大の港であるアシュドッド港ではセキュリティチェックの強化や労働力不足に伴い、港湾混雑が発生している模様。

 

 また、商船三井の社外報によると、10月中旬以降、一部船社でイスラエル向け貨物の受託停止が始まり、複数のコンテナ船社でも、政府規制に伴い危険物の受け入れが制限されている。船社によっては代替の揚げ地提案をしている。更に戦況に鑑み、保険会社が戦争リスクに対する保険料率を高めたことから、船社はイスラエル発着の全貨物に対し、20フィートコンテナ1個当たり50-100米ドルの戦争プレミアムサーチャージの課徴を開始した。

 

パナマ運河 通航制限続く

 長引くパナマ運河の水不足の影響で大手コンテナ船社による通航サーチャージ導入が広がっている。パナマ運河ででは渇水が深刻化する中で、通航する船舶の隻数、喫水の制限が続いており、パナマ運河庁(ACP)は12月から1日当たりの通航隻数を22隻に、来年1月は20隻、2月は18隻と段階的に制限するとしている。

 

 こうした中、スイス船社のMSCはパナマ運河を通航するコンテナ1本当たり297ドルのサーチャージを導入すると発表。

 

 仏船社CMA―CGMも通航制限とパナマ運河の通航料の値上げの影響を理由に、来年1月1日から20フィートコンテナ1本当たり150ドルの調整費用を適用する。

 

 COSCOシッピングラインズはパナマ運河を経由し北米東岸・メキシコ湾岸を往復する全ての貨物を対象にチャージを引き上げ、40フィートコンテナ1本当たり300ドル(現行30ドル)とするとした。

 

最後に

 上述のイスラエル情勢でもZIMのアラビア海・紅海迂回に触れたが、11月19日発生の、日本郵船運航の自動車船「GALAXY LEADER」がイエメンの親イラン武装組織フーシにより拿捕されたことにより、自動車船のみならずコンテナ船でも安全最優先から喜望峰経由にルートを変更する船社が出始めている。

 

 この動きが今後、世界海運、特に運賃にどのような影響が出るのか注視したい。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

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