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COP28 脱化石燃料で合意 ―― 化石燃料依存体質の日本に重い現実突き付ける

 ドバイで開催されていたCOP28は13日、大詰めでその表現を巡って紛糾し会期を1日延長して協議を続けた化石燃料について、「脱却を加速する」とした成果文書を採択して閉幕した。2035年までに世界の温室効果ガスの排出量を19年比で60%削減する必要性も明記した。11月30日からの会期中、改めて浮き彫りになったのは化石燃料のフェードアウトを求める国際世論の一層の高まり。産油国対欧米の対立構図が前面に出て、今回、日本がその化石燃料依存体質で批判の矢面に立たされたのは一瞬だったが、2週間の協議がわが国に突き付けた現実は重い。

 

 成果文書では焦点の化石燃料について「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするため、化石燃料からの脱却を進め、この重要な2020年代で、科学的知見に基づく公正な方法でエネルギーシステムから化石燃料の脱却を加速する」との表現をとった。「段階的削減」「段階的廃止」などの直接的な言い回しを避け、鋭く対立した欧米と産油国の利害に配慮する形で文書をとりまとめた。

 

 COP28では、このほか、2030年までに再生可能エネルギーを現状の3倍に拡大することや、気候変動で被害を受ける途上国支援の基金運用ルールなどでも合意をみた。

 

 パリ協定で掲げた地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標実現へ、今回の合意受けて、各国・地域での新たな取り組みがスタートすることになるが、その道筋は決して平たんではない。とりわけ、化石燃料依存体質の高い日本にとっては厳しいハードルが待ち構えている。

 

 下の図は2020年時点でみた主要国の電源構成である。化石燃料依存率をみると、米60%超、中国も石炭だけで64%超と、それぞれ個別のエネルギー事情が見えてくるが、日本のそれは70%超の水準にあり、突出している印象は否めない。

 

資源エネルギー庁図 1「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」(2023年2月発行)(主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較)

 

 COP28開幕直後の1日の首脳会合で、岸田文雄首相が石炭火力を巡って「対策のとられていない新規の建設は終了していく」と表明したが、今回の合意で対応が必要な分野はさらに広がった。

 

 「石炭火力の段階的削減」は2年前、英国グラスゴーで開催されたCOP26での合意事項であり、それを前提にいまの気候変動対策の枠組は動いているだけに、厳しい言い方をすれば、いまさら感もあった。

 

 過度な化石燃料依存体質に陥った起点はどこか。きっかけは2011年の東日本大震災である。その時点で電源構成の3割近くを依存していた原発が一斉に稼働停止に追い込まれ、緊急避難措置として石炭火力にその調整弁を求めたわけだ。石炭より環境負荷が少ないとして、LNGの利用も進んだ。

 

 その歩みを振り返ると、COP以外の国際会議の場などでもたびたび、化石燃料への依存体質は批判されてきた。決断すれば、エネルギー政策を転換できる場面は何度かあったはずだが、原発再稼働への模索が続く中、再生可能エネルギーへの転換も後手に回り、現実的な選択肢として、さらに化石燃料に依存するという悪循環に陥ってしまった。それが2022年半ばまでのわが国のエネルギー政策の10年史である。

 

 2022年8月。日本もようやく重い腰を上げた。脱炭素社会に向けた戦略を協議する「GX実行会議」で、岸田首相が次世代革新炉の開発・建設や設置許可済みの原発の再稼働を目指す方針を示す。それは新設や建て替えはしないという東京電力福島第1原発事故以来の方針を転換することを意味した。2023年にG7議長国を務めるスケジュールを見据えての決断だったのかもしれない。

 

 しかし、ここでも石炭火力発電をカードの1枚として残す。アンモニアとの混焼などでCO2排出量を抑えられるとして、それを選択肢にとどめたわけだが、技術が確立するのは2040年代はじめとされており、そのスケジュール感でも批判を浴びる形になった。アジアへの脱炭素支援の一環として同技術を位置づけている方針にも延命策として厳しい指摘が集まる。

 

 もうひとつ、批判を浴びている材料がある。GXをきっかけにエネルギー政策を修正した際、既存の第6次エネルギー基本計画(=参照:下図)を改定せずに臨んだため、その目標年度である2030年度でも、なお19%を石炭に依存する姿が残った。これも日本に注文がつく理由の一つになっているという。

 

図はMIRU作成

 

 COP28が開会中の5日、脱炭素に積極的に取り組む日本の企業や自治体などでつくる気候変動イニシアティブ(JCI)が「2030年GHG排出削減目標と国際競争力強化の同時達成に向けて」と題する提言を発表、政府が進めるカーボンプライシング制度の導入前倒しなどを求めた。東証プライム市場に上場する61社も賛同企業として名を連ねている。

 

 政府のちぐはぐにも映るエネルギー政策の展開に、ビジネスの現場で、その危うさを感じている企業が増えているということだろう。

 

 過去にも一度同じような場面があった。国内手続きの遅れからパリ協定の批准手続きが間に合わず、そのルール作りが始まるCOP22に締約国として参加資格が得られない事態(オブザーバー参加)が起きた2016年当時のことである。経団連が「今国会の早い時期に批准してもらいたい」と政府に求めたと報道されている。

 

 国際的な批判をしっかりうけとめ、カーボンニュートラルへの道筋をどう切り開いていくのか。改めて政府にはいま、しっかりとした政策誘導効果を発揮することが求められている。

 

(IRuniverse G・Mochizuki)

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